* 鳥ハ自由ヲ求メテ空ヲ飛ブ *
一昨日。
オレは宙を舞った。
「英二!」
「――」
ドタバタと足音が聞こえた後、突然開く扉。
大石だ。
「あ、やっほ、大石」
「やっほ、って……大丈夫なのか?」
予想以上にオレの容態が良かったのか何なのか、
大石は間の抜けた顔をした。
見当違い、というところ。
残念でした。
無理してるといえば、その通りなんだけど。
「全然元気。菊丸花丸五重丸〜」
表情もほとんど変えないまま言った。
まだ落ち着いた様子を見せない大石。
「怪我の方は…どうなんだ?」
「骨折全治3ヶ月だって」
昨日は一日中寝たままだったんだって、
と笑いながら説明するオレ。
大石は笑わなかった。
「…心配したんだぞ」
その場にしゃがみ込んでいた。
オレはベッドの上で笑う。
「大石は心配性だから」
大石は表情を整えると、立ち上がった。
それで、「これは心配性とかそういう問題じゃないと思うぞ」と言った。
「ま、とりあえず生きてるから」
「そんなに軽く言うなよ」
ありゃ、怒ってるかな?
と思ったけど、大石は微笑を浮かべてた。
とりあえずお怒りではない模様。
「とにかく…元気そうな顔を見れて安心したよ」
「うん。心配掛けてゴメン」
部屋の時計を見て、自分の腕時計を確かめて。
大石は体をドアの方向へ向けた。
「また、来るから」
「うん。待ってる」
笑顔で返事したオレ。
扉が開いて、通り抜けて、閉まって、
冷笑した。
待ってる?
何さ。
離れたくてあんな事したくせに。
離れたい。
放れたい。
遠クヘ行ッテシマイタインダ。
―――これはきっと逃げじゃない。
→
2003/10/15