ナイモノネダリ?






今のままが幸せなのにどうして人は変わりたがるんだろうね。



「このスカート可愛い〜」

「この前も買っただろ、ほら」


そう言って、彼は私の腰下に目を向ける。
ダークブラウンのセミロングスカートだ。

それでも、私の視線はウィンドウケースに釘付け。


「これとそれとは別!全然柄が違うじゃん」

「まぁ、確かに違うけど」

「ほら!」


窓の中には、オフホワイトのスカート。
軽くレースであしらわれていて、
少しの風邪で舞い上がるようになびきそう。


「いいなー…」

「でも、前はこのスカートが一番良いと思って買ったんだろ?」

「う、まぁ…」

「じゃあ良いじゃないか」

「んー…」


私は言葉に詰まった。
だって、あまりに図星で的を射ていたから。

それでも欲って止まらないものだと思う。


「いくらあっても足りない物なの!服っていうのは」

「そうか」


それ以上は何も言われなかった。

促すわけでも止めるわけでも。


「今穿いてるスカートは確かに好きだよ。
 でも、今目の前に見えるのも大好き!どうしよう!!」


一人で喚く私。
すると、横からデコピン。


「痛っ!!」

「浮気者」


ぴしゃりと一言。


嫌味で言われてるのは分かった。
だけど…。

だから、かな?


何も言い返せなかったよ。


茶髪にメッシュ。
美白にエステ。

なんでだろうね。
今のままが一番なはずなのに。


自分に一番合った形で。

自分で。

産まれてきたのに。


なんでだろうね。


「ないものねだりかな…」

「明らかにそうだろ」

「そこまで言う!?」


腕を振り上げながら、私、
なんだかとっても寂しくなった。

なんでだろう、
なんでだろうって考えながら。


より良くなりたいから。

憧れるから。

次を知ってしまうから。


だから人は変わりたいと思うんだろうね。



空を見上げた。

雲が低いと思った。
太陽が小さく見えた。
もう戻れないのだろうか。


「行こっか」

「うん」


足並み揃えて歩き出す。

手を繋いで口を噤んで。


私は人だから、変わりたがるんだろうね、って。










 ->「人も国も、今までに住んできた地とココは違いすぎるから。」
  文化と環境に違いと、人間の我侭さに。タンザニアにて。(2005/06/21)