* What day is today? *
月曜日。
今日は黄色の日。
…当たり!
「大石先生、おはようございます!」
「おはよう、さん」
アレ?と思ってから一ヶ月強、ずっと観察を続けてきた。
いよいよ確信に変わった私は、その話題を投げかける。
「大石先生って、曜日のシャツ変えてるんですか?」
問うと、少し眉を下げて笑った。
「気付かれちゃったか。俺、ずぼらなんだよ。
毎日服を考えるのが億劫だから、曜日で固定してしまっているんだ」
「ずぼらだったらそんな几帳面なことできないですよ!」
まさか面倒くさがってそうしているだなんて思いもしなかったけど、
解答がまた先生らしいなと思った。
私だったら、毎週きっちり同じ曜日に同じ服を着続けるなんてこと、
それこそ面倒くさくてできない。
「逆にさんは、毎日どういう風に服を選んでいるんだい?」
「私ですか?正直なところタンスの一番上にあるやつ取りがちなんですけど、
まあその日の天気とか気分とか、あとは誰と会うか、とかですかね!」
「そうか。色々気遣ってるんだな」
気遣ってる、なんてほどじゃないけど…
と否定しようかとも思ったけど、
良い方向に捉えてもらってるみたいだし、いっか!
と思って大石先生の笑顔に私も笑顔を返して、この会話は終わった。
大石先生は、優しい。
激務だとわかりつつ入ったこの業界、
続けられているのは大石先生のお陰かもしれない。
それからまた一週間ほど経ったある日。
「(今日はオフホワイトー…アレ?)」
予想に反して、先生は青に白いストライプの入ったシャツを着ていた。
淡いピンクのネクタイとの対比はステキだけれど。
初めて見た、な。
前のが古くなってきたから新調したとか、そういうことかな…?
「お疲れ様ですー」
「ご苦労さま」
廊下ですれ違って挨拶しても、大石先生はいつも通り。
日ごとに服を変えてるのに私が気付いてること、大石先生は知ってる。
だけど何も言ってこない。
忙しいだろうし、わざわざ話すほどのことじゃないと
思ってるのかもしれないけど。
なんだろう、なんだか、もやもや。
**
「お疲れ様でしたー」
夜9時も回って、ようやく退社。
今日もまた遅くなってしまったなーまあマシな方かな、
なんて考えながら職場を後にする。
帰ったらご飯食べてシャワー浴びて即寝!
よし、ショートカットだ。
ちょっと薄暗いし居てもカップルが多いその裏路地、
あんまり好きじゃないけど気まぐれに通ってみることにした。
その界隈はいい雰囲気のバーなんかが多くてチカチカ眩しくない。
ここの隠れ家的なダイニングバーも、いつか来てみたいんだよねー…。
と、窓の中を覗いてみると。
おや?
そこには、大石先生と、知らない女性。
そういえば、いつも誰よりも遅くなりがちな大石先生が、
今日は珍しく先に帰ってたっけ。
……そういう、ことかー。
考えてみると、そういえば今日は珍しく見たことのない
パリっとした新しいシャツを着ていたことも、
ここに繋がってくるんじゃないかと合点がいった。
楽しそうに笑う大石先生は、赤ワインのグラスを口に運んで、
いつも通り、いつも以上に、優しい目線をしていた。
なんだか、胸がぽっかり。
………。
別に、いいんだ。
私は大石先生のこと、好きだけど、
付き合いたいとか結婚したいとかそういう意味で考えているわけない。
ただ、曜日ごとに洋服を決めて着ているような先生が
居なくなってしまったら淋しいな、とはぽつりと思った。
ランニングしてたら、メインの通りから少し外れた居酒屋で
楽しそうにお酒を飲み交わしている男女が窓から見えたので、
走ってる間暇だから大石夢変換して思いついた話。
男女一組見ただけで夢一本書けるとかチープな脳だな(笑)
タイトル、直訳『今日は何の日?』っぽいけど、
一般的に曜日を聞くときに使うフレーズですよい。
久々に微悲恋になった!
2019/03/02