* Special coNtact With yOu *












こんなに辺りは寒いのに、
アナタに会えるとね、
一気に世界が明るくて温かくなるみたい。
色に例えるなら、黄色かな。


「秀ちゃん!」


待ち合わせ場所、いつも笑顔で居てくれる。
それだけで私は幸せな気持ちになれる。


「ほら、いこいこ!」

「こら、引っ張るなって」


手を掴んで走り出す。

アナタと一緒にいるとね、
自然と心も足取りも弾んじゃう。


心地好いリズムのステップ。

鼻歌交じりのスキップ。


いつも通りこの道も、
聞き慣れたあの歌も、
全部特別なものに感じられる。


本当は、ずっと、ずーーっと一緒に居たいくらい大好きだけど、
いつも忙しいアナタにはなかなか会えないから、
一緒に居られる時間を大切にしたい。
今は、特別な時間。


「あ、ごめんちょっと本屋さん寄っていい?」


一緒に歩いている最中、欲しい本があったことを思い出す。
秀ちゃんは笑顔で頷いてくれて、
私たちは歩く足を止めて店内に入る。


欲しかった本はー…っと。
これかな?
あ、違うか。
でもこれも気になってたやつだ。
買う気はないけど、ぱらぱら中身見てもいいかな。
ちょっとだけ、ちょっとだけね。



………。


………。


はっ。



思わず集中してのめり込んでしまった!
結局、ほぼ立ち読みしてしまった。ごめんなさーい!
でも私が欲しかったのはこれじゃなくて、
そうそう別のが欲しくてお店に入ったんだったじゃん!

周りを見渡して欲しかった本を見つけて、
そういえば今何時だ、って、チラッと時計を見ると。



げっ!

お店に入ってから30分以上経ってる!


てか私…デート中だったじゃん!!!



目的の物をようやく見つけたことも忘れて、
焦ってスマートフォンを覗き込む。連絡はない。
小走りで店内を駆け回る。
でも、どこにもいない。

結局何も買わずにお店を飛び出す。
周りを見渡すけど、見える範囲にはいない。


秀ちゃん…!


まさか連絡もなしに帰ってしまうはずがない。
だけどちょっと寄り道するだけのつもりが
30分以上放置してしまったのは紛れもない事実だ。
うんざりさせてしまうのも仕方がない。


どこに行ってしまったんだろう!


気付いたら体が勝手に動き出していて、
当てなくその場を走り出す。
眺める余裕もなく景色が流れていく。


アナタが居ないと
さっきまで楽しかったはずのステップも
いつの間にか飛び出してきたスキップも
生まれてくるようなことなんてなくて
世界はなんだか色褪せてしまったみたい。


ねえ秀ちゃん、私はまたアナタと走りたいよ。
いつでも並んで歩いていたいよ。

ごめん……!


だけど足を止めるわけにはいかない。
一人になってしまっても、
足取りが重く感じられても、
息が苦しくっても。

何人も通り過ぎて、
その中から一人、
また、
アナタに出会えるまでは。


……あっ!



「秀ちゃん!!」



ようやくその姿を見つけて急いで駆け寄る。
秀ちゃんも気付いて小走りで近付いてきてくれた。


「こんなところに居たのか」

「それはこっちのセリフだよぉ!」

「他の用事済ませて本屋に戻ったらお前がいなくなってたから…」


あ、私がその場を離れちゃったから…。

でも、そもそも私があんなに時間掛けたから
秀ちゃんがあの場から居なくなっちゃったんだよね。

どちらにせよ、完全に私が悪い。


「ごめんね…」


私がしょげた顔を見せると、
秀ちゃんも眉をハの字にした。

視線を下に向けていると、
足が一歩近付いてくるのが見えて、
手が、取られた。


「でも、ちゃんと再会できて良かった」


その表情が、笑顔に変わった。


ああ。

再び世界は一面黄色くて、
一気に明るくて温かいみたい。


また一緒に居られる。

それだけで幸せだ。


「ねえ秀ちゃん」

「ん?」


握る手に力をきゅっと込めて。



「これからも私と走り続けてね」



歩くんじゃなくて走るのか?
秀ちゃんはそう言って笑った。

だってね、アナタと一緒に居ると、急く足を止められないんだ。



心地好いリズムのステップ。

鼻歌交じりのスキップ。


もうこの手を離さないからね。ずっと一緒に走っていこう。






















初めてテニラビさんをテーマにした夢を書いてみたよ!
SNOWイベにて、大石とSPECIAL CONTACTしてるのにうっかり放置して
流してしまったときのショックのあまりに閃いた(笑)


2018/12/18