* 恋風 *

 〜long time since your lasting love〜















ではもうなくなっちゃいました、私、


本日結婚しました。



、めっちゃ綺麗だよ」

「本当におめでとう〜!」

「ありがとう」


高砂席にやってきてくれた人たちと笑顔を交わす。
日々お世話になってる会社の同僚、
人生で一番濃い時間を共有した大学の友人、
今でも仲良しな高校の友人、
出たり入ったりを繰り返す。

今は、久しぶりに会った中学の友人たちが来てくれていたところ。

席に戻っていくみんなの背中を見送って、こんなときに、
初恋をしたその頃のことを思い出す。


そうそれは中学生のときのこと。
その人も私も部活に精を出していたお陰でテスト期間しかデートする暇がなかった。
デートといっても図書館やファストフードで一緒にお勉強してるようなカップルだった。
コート外に飛び出してきたテニスボール拾ってあげるだけで嬉しかった。
校門の前で待ち合わせするときのそわそわした感じと会えたときの気恥ずかしさ、今でも憶えてる。

時間もあんまりなかったし、子どもだったから色んな制限もあって、
たまにカラオケ行ったりプリクラ撮ったりくらいしか憶えてない。

それくらいしかできなかったけど、そんなことが幸せだった。
想像以上に歌が上手くて驚いて、せびって何回も聴かせてもらったあの歌はなんだったっけ。
懐かしいなぁ。


そんなことを越えてきて、今の私があるわけだ。


初恋は実らないって?
そりゃそうだ。
一人しか付き合わない人と複数名付き合う人って、絶対後者の方が多い。
となるとほとんどの初恋は実を結んでいないのだ。

もちろん例外はあるけれど。



そんな感慨に耽って友達と喋って写真撮って、楽しい時間はあっという間に過ぎて、
そろそろお手紙読まなきゃなぁ緊張するなぁなんて思い始めたときのこと、司会の方の声が会場に響く。


「それではここで、ギターの弾き語りのご披露がございます」



あれ?

こんな演目、打ち合わせのときには一つも。

サプライズ?


え?



こんなの聞いてないよね、

って同意を求めようと横を見たら、そこは空席で、
代わりに少し遠く、真っ白のタキシードに身を包んだその姿で
スポットライトを浴びるアナタがいた。



え?




。こんな俺と一緒に居ることを選んでくれてありがとう。
 もう憶えていないかもしれないけど…
 ずっと前にが好きだと言ってくれたものをプレゼントしたいと思って、
 古い記憶を呼び起こしながら練習しました。
 つたない部分もあると思うけど聴いてください、『恋風』」





10年ぶりに耳にする、タイトルも思い出せなかったその曲の、
聞き慣れないギターの音色と、
少し大人になったアナタの口から生まれる何一つ変わらない優しい響きに、
私は涙が止まらなくて、会場は温かい拍手に包まれた。

初恋は実らないけど、
実る初恋もある。
それを教えてくれた、春の風だった。



“あららなんて簡単にフォーリンラブ

 二人出逢えた奇跡大事にしたい

 恋の舟は止まらない今は頼りない

 ゆらり風に吹かれたらふわり二人流れたい

 あの風と… ああ一緒に”





『恋風』大石秀一郎(近藤孝行)






















恋風2017verを始めて聴いたときに一番に閃いた妄想はこれでした。
大石熟成(敢えて成熟とは言わない)しすぎじゃね?
と思ってたけど月の起動の発売から10年経ってると考えたら、なるほどね、と。

大石と結婚したい以外の感情が生まれないわ(笑)


2018/10/13