* 初めてでイッパイ *












人生で初めて彼氏が出来た。


同じクラスの大石くん。
ずっと、いいなって思ってたから
向こうから告白してもらえたときは本当に嬉しかった。
なんとなくよく目が合う気がするなっていうのも
気のせいじゃなかったんだ、って。


でも、付き合うってなんだろ。
どんなことするんだろ。


やっぱり、デートとかするんだよね?どこ行くんだろ?


ネズミーランドとか?
始めから気合い入りすぎ?

無難にファミレスとか?
ミスドでもいいな!

中学生らしく公園デートとかでもいいのかな…。


そんなことを考えてたある日。


「今日、良かったら一緒に帰らないかい?!」


大石くんにしては珍しい、
いつもみたいな爽やかな声じゃなくて気合い入った感じでそう聞かれた。
もちろん私は大歓迎だから「うん!」って答えたら、
大石くんガッツポーズしてた。
そんなに喜んでくれるなんて…なんか私も嬉しいな。


というわけで、宿題やりながらテニス部が終わるのを待って、
時間になったら約束通り学校を出て
1本となりの道に入ったところで大石くんを待つ。

もうすぐ6時半だけど、外は明るい。
日が延びたなー…もう5月も半ばだもんね。


「お待たせ!ごめん遅くなっちゃって!」


待つこと数分、息を切らしながら大石くんがやってきた。


「これでも急いで来たんだけど…」

「大丈夫だよ、テニス部おつかれさま!」


ゼエゼエと肩で息をしてる。
本当に急いで来てくれたんだろな!


「じゃあ…行こうか」

「う、うん」


男子と二人で帰るのなんか初めてで、緊張する!
男子と、ていうか、彼氏と……で、いいんだよね??照れる!


「………」

「………」


いざ二人になってみると、何を話して良いかわからない。
あれ、今日も教室で話したのにな。
なんの話したっけ。
あ、そうそう次の授業の宿題をやったかどうかとか…。
じゃあ今は何の話をしよう、うーん、
あ、テニス部の話でもふればいいのかそうしよう!


「「あのさ!」」


あ。

まさかの被るってゆー!


「あ、先いいよ!」

「いや、俺は大した話じゃないから!」

「でも私も大した話じゃないから!」


いやいや!
とかお互いゆずり合ってるうちに、
あれ、そういえば何の話したかったんだっけ、とかよくわかんなくなって、
ゆずり合いが落ち着いてまたなんとなく黙ってしまった。
う〜〜ん…。


「………」

「………」


また無言。
どうしてこんなことに…。


結局ほとんど喋れないまま、
私たちの分かれ道に来てしまった。


「あ…それじゃあ、私こっち」

「そ、そうだな…」


あー、これでバイバイしちゃうんだ、
なんかあっという間だったなー…と思ったら。


「…ッやっぱり、ここに座らないか?!」

「ここ!?えっ、いいけど…」


ちょっとおどろいたけど、
大石くんが言う通りに交差点の脇の花壇に腰掛けた。

しかし。

無言。


………。


チラッと横を見ると、大石くんは思い詰めたように地面の一点を凝視してる。
え…なんだこの、楽しくなさそうな表情は。

もしかして…何か悪い話…?

え、それでさっきから話しづらくてずっと無言なの?
ど…どうしよう本当にそうだったら…。
言われてみたらなんかずっと様子がおかしい気もするし…。

と、思ってたら。


「…いい天気だな!」

「そ、そうだね?!」


ど、どうしたんだ大石くん?!
確かに今日は良い天気ではあるけど
そろそろ夕日が沈むこの時間帯に話す話題ではないような??

これは本格的に様子がおかしい?
どうしよう、本当に悪い話が…?

と、思ってたら大石くんはきょろきょろし出して。
目線がさだまらなくて、なんだか顔が赤い。
んんん???


疑問に思ってたら、大石くんは口を開いた。



「あの、ごめん!俺、デートってどんな感じにしたら良いかわからなくて!」



デート…。

デート?!

これデートだったの!?!?


初デートは遊園地かなお食事かな公園とかかな、
なんてさっきまで考えてのに。

そっか、これ、デートだったんだ!!!


「あはは!」

「!?」

「あ、ごめん!思わず!」


ついつい声に出して笑ってしまって、
大石くんはおどいた顔をしていた。
まさかこれがデートにカウントされるだなんて思ってなかった、
なんて言ったら怒られちゃうよね!



「楽しいね、デート」



つい、笑っちゃったけど、
楽しいと思ってるのは本当なんだ。

私がそう言ったら、大石くんからも「ああ」ってとびきりの笑顔が返ってきた。
なんか、いいなこう言うの。
カレシとカノジョっぽい!気がする!


そこから、なんとなく自然と会話が始まって、
今日の授業がどうこうとか、
さっき話題を振りそびれた部活がどうだったとか、
明日の授業はーとか、
普段は何時に寝て何時に起きる、とか。
話してるうちにどんどん話題があふれて止まらなくなった。

私もよくわかってなかったけど、
デートって、きっとこんな感じでいいんだろな。
二人一緒にいて、話してるだけで楽しいもんね!


ちょっとずつ暗くなってきて、
なんとなく人通りも減ってきた気がする。
私たちの会話もそれとなく落ち着いて、
自転車が一台通り過ぎたら、完全に静かになった。

ら。


え?


「あ、ごめん!」

「え?あ、いや!大丈夫だよ!」


今、手をにぎられた。
一瞬だけ。

すぐに離されちゃって、残念!って思ってるだなんて、恥ずかしく言えない…。
だけど、嬉しかった。

一瞬だけのことだったのに、今もドキドキしてる!


「そ、そろそろ帰ろうか!」

「う、うん!そだね!」


大石くんがすごい勢いで立ち上がったから、私も慌てて立ち上がる。
30分前の続きみたいに別の道を行こうと思って「じゃあ」って言ったんだけど。


「暗くなってきたな。やっぱり、家まで送るよ!」


そう言って、私と一緒の方向に歩き出してくれた。
うれしいなー…。


また少しずつ話をしながら歩いたけど、
「もう一回手をつないでよ」、
って言いたかったけど勇気が出なかった。
結局最後まで手をつなげなかったけど、次の機会かなー
なんて考えながらいろんな他愛のない話をした。

時間はあっという間に過ぎて、私の家に着いた。


「今日はありがとう。またデートしてね」

そう言ったら


「そうだな。今度は…休日に誘っていいかな」

だって!


もちろん!て答えると、
それじゃあまた明日って大石くんは手を振った。
私もそれに振り返して背中を見送った。


空には一番星が見えてる。

なんだか、明日も、次のデートも、今から楽しみだ。






















中学生らしい初々しさを一番重視した。なので描写は敢えてクソw
青春ラブしたいぜ!!!(笑)

会社帰りに体操着姿で腰掛けて喋ってる中学生カップルが可愛かったので書いた。
私の現実でのポジションはモブのチャリおばさんである(笑)(そればっか)


2018/05/17