* こんな静電気が伝わるくらいの距離に居るのに。 *












私には、片想いしている人がいる。

3年2組の大石秀一郎先輩。
テニスをしているところを見て心を掴まれた。

だけどあくまで片想い。
私だけが一方的に見つめて、
向こうは私のことも知らない。

大石先輩と関われるのなんて廊下ですれ違うときくらい。


クラスメイトらしき人と歩いていたり
それがたまに女性のこともあったり
分厚い辞書を持ち歩いていたり
放課後はテニスバッグを背負ってたり


人間関係も

授業の内容も

学校が終わったあとのことも

大石先輩は私とは違う世界にいて、だから、
遠くから一方的に見つめてる私はさながら芸能人のファンみたい。


そういう風に考えると、
こんな近くで見つめられることだけでも感謝しないと、と思ったり。



そんなことを考えていた移動教室。



「(あ、大石先輩…)」



階段、上から急ぎ足で大石先輩が降りてきた。
ドキドキ。


私は手すりにつかまりながら右側を上ってて、
反対側には別の人たちが広がり気味にゆっくり下っていた。
よほど急いでるようで、大石先輩は上から間をすり抜けるように通過していこうとして。

肘が、ぶつかった。瞬間。



ぱちっ

と、乾いた電流が流れた。



「あっ、ごめんな!」



まさか、声を掛けられることがあるなんて。


「いえ、こちらこそ」

そうやって返事をすることが私の精一杯で、
大石先輩はすぐに前を向いて小走りで去っていった。



何も、届かない。


こんな、静電気でさえ伝わるような距離に居るのに。



芸能人のようでそこは違って、

だから諦められない、まま、片想いが続く。






















まともに会話できないような関係の人と
静電気が走ったので思いつきました。(笑)
恋に落ちることを電気が走るとか言ったりするしね。
肘で静電気って珍しいなーと思ったので。

タメ語で声を掛けてくるあたり、
後輩と認識しているーとかそんな裏は特にありません(←)


2018/04/09