* Winter Melting Kiss *












駅の裏

人通りの少ない

高架下。


私は、まだ付き合いたての彼氏と、さっきから、キスをしている。

この前初めてキスをしたばかり。
そのときは唇同士を押し当てるだけのものだったけれど、
今日は、お互いの口と口の間に隙間がなくなるくらい、
顔も傾けて、深く交わるような、キス。


十数秒くらい続いたキスが終わって、久しぶりに息をつくと
白いもやが空中に漏れた。

唇の、唾液で濡れたあたりが異様に冷たくって、
口寂しい気もする、
なんて言えないし言わないけど。


「秀一郎、そろそろ帰らないと…」

「あと一回」


その“あと一回”が、何回目を迎えたことか。
嬉しいけど、恥ずかしいし、
誰かが来たらどうしようってドキドキしちゃう。


「今度こそ本当にあと一回だからね!」


そう言って目を伏せながら顔を近付け始めたとき…

チリンチリン、と遠くで自転車のベルの音がした。


あ、こっちくる!
そう思って顔と体を離そうとした、のに。


「んっ…!」


今までで

一番深くて

熱い。


腰を抱き寄せられて
頭をもう片手で固定されて
逃げようとしたのに顔を離せなくって
これ以上はないほど深く重なる私たち。


動けない……。



ガタンガタン と チリンチリン。


タイヤが段差を超える音と、その振動でベルが鳴る音、
二つの音が同時に通り過ぎた。

シャーーー…と遠ざかっていく音がして…

また、沈黙。



………。


手が緩められて、
ぷはっ、とようやく口を離す。


「しゅ、いちろ……ちょっと!」

「顔も見られなかったら恥ずかしくないだろ」

「は、はずかしいよ…!」


顔が熱い。
きっと今、真っ赤だと思う。
薄暗くって、吐く息が白く邪魔してくる今じゃあ
バレていないとは思うけれど。


「でも、嫌じゃなかっただろ?」

「〜〜〜」


うまく反論できずに、手を引かれるがまま、
駅に向けての暗がりを歩き始めた。


ズルイ。けど、大スキ。






















現実は私がチャリ漕ぎモブおばさんである(笑)
初版はベッターにアップ。


2018/02/07