* 人は見た目によるものか *












「君のことが好きなんだ」



ある日の帰り道、それを言ってきたのは、
学年一の真面目な秀才くん。



「……冗談だろ」

「本気だよ!」



どうやらこれは、マジだ、
というのは向こうのド真っ赤な顔で察した。

こっちは青ざめてるっつーのに。

……マジで?


「他を当たんな」

「他とかじゃなくて、君が好きなんだ!
 話だけでも聞いてくれないか」


あまりにも必死なもんだから、
「まあ、話くらいなら…」つって帰り道の方向へ動かし始めた足をまた止めた。

確か保健委員長なんてやっててたまに朝礼で喋ってるから覚えてる。
その姿を見て、
「大石くん、テストの合計点学年トップだったんだって。すごいね」
って、後ろのクラスメイトに声を掛けられたこともある。

そうそう、大石だ。

へー、真面目なんだな、自分とは大違いだ。
って思った覚えがある。


その大石が次に発した言葉はなんと。



「俺、その……メガネが似合う子が、大好きなんだ!!」



は?



「…キッモ」

「そう言わないでくれよ」


大石はそう言って、情けない顔で笑った。



「ていうか、つまり外見で惚れたってこと?」

「まあ…そういうことになるか」


へー。
こういうタイプは「何より内面が大事」とか言い出すタイプかと思ってた。
意外と違うんだ。

…最低じゃねーか。



「人のこと顔で選んでんじゃねーよ」

「悪く思ったかい?ごめん、そんなつもりじゃ…」


一度止めた足を、また帰り道の方向に動かし始めた。
でも大石は、私の前に回り込んできた。
意外としつこいな、コイツ。


「角膜弱くてコンタクトにできねんだよ」

「でも、メガネ似合ってるぞ?」

「うっせ」


無視して横を通り抜けようとしたけど邪魔してくる。
いやいやいやいや。


「君は、一目惚れってしたことない?」

「は?ねーよ」


あからさま不機嫌な顔をしてやったのに、大石は気にせず話し続ける。
見た目に寄らず、図太いんだな…。


「なんだろう…見た目そのものが好きなのももちろんあると思うんだけど。
 外見ってさ、結局内面が滲み出ていると思わないかい」


何語ってんだ。
コイツキモイ。


「メガネ越しに見える君の眼、とても綺麗だったから。
 心も綺麗なんじゃないかって、直感で思ったんだ」



そういって笑う顔を見たら、悪いやつではねーな…ってさ。

…キモイけど。


「メガネ好きすぎてキモイっしょ。
 そういう大石は?目悪くなんねーの?」

「え?ああ、なんとか。親が二人とも目良いからな」

「ふーん、がり勉君のくせに卑怯かよ」


がり勉君って…と、大石はまた情けない笑顔を見せてきた。

でも何故だか、その顔は嫌いではなくて。


そういう意味では、私こそ決めつけているかもしれない。
真面目、秀才、がり勉君…表に見えているそんな面で決めつけて、
さっきからの大石は、自分の期待を裏切った行動ばかりとってくる。
大石の本当の姿は、わかっていない。

意外と、とか、思ってるよりは、とか、見た目によらず、とか、
そんなこと言ってる時点で、私も外見で判断してんだ。


そういうこと?
それとも騙されてる??

…上等じゃん。



「とりあえず、一緒に帰る?」

「え、いいのかい?」

「…早くしないと置いてくけど」

「あ、待ってくれよ!」



コイツと付き合うとか、そんなんまったく想像できねーけど、
悪いやつではなさそう、とか、結構面白いやつ?とか、
そんな自分の直感を信じてみるのも悪くないのかな、なんつってな。






















メガネが好きすぎてキモイ大石を書いてみた(笑)
そして、敢えてメガネっ子らしくない主人公ちゃんを当ててみた。

何度でも聞くけど、大石のタイプ「メガネが似合う女の子」ってなんなん?
特定の人物のこと差してるの?メガネフェチなの?なん???


2018/02/02