* 一回り年下の彼は別の人生があるから *












―――体が宙に浮いた。



12歳も年下の彼は

年は下なのに

頼り甲斐があって


体はしっかりと男の人で

立派な彼氏でいてくれた。

年上なのに抜けてて甘えん坊な私をずっと支えてくれた。


でもそんな彼と、もう別れるんだ。



ゆっくりと私を下ろすと、
秀は私の手を引いて歩きだす。


「行こう」

「どこ?」

「もう、今日は帰らない」


つまり、うちに来ると。



「大丈夫?おうち」

「連絡する」



ずっと前、付き合い始めの頃、
久しぶりに門限なんて言葉を聞いてびっくりした覚えがある。


確か特別な用事がないと9時までに帰らないといけないって言ってた。
だから私もその時間はずっと意識してバイバイしてた。
でも、今日は守る気ないみたい。
帰らないって。


そりゃそうか。

だって、今日は特別な用事があるんだから。



一緒に電車に乗る。
一つだけ空いた席があって、秀は私に座らせてくれた。

出会ったときもこんな状況だったっけなあ、
あの時は、まさかこんなことになるなんて想像できなかったなあ…。



途中で席が空いて秀は隣りに座ってきたけど
電車に乗っている間、会話はなくて、
帰り道もほとんど無言のまま、
ただ、手だけは繋いで、うちまでやってきた。


昼間に来たことしかない。
遅くとも8時には帰ってた。

それが、今日、9時を回って秀がうちにやってきた。


私が鍵を開けたドアを秀は先にくぐると、
電気を点けて、靴を脱いで上がって、
私が一歩遅れて靴を脱ぎ終わると、
手を掴んでずんずんと腕を引く。


そのまま、押し倒されてベッドにダイブ。



「もう、今日は寝かさない」

「…初めて直に聞いたそんなセリフ」



ウルサイ。

それだけ言って、口を塞がれる。
もう、何も言えない。


何回も何回も、強引なキス。

いつも、秀は優しくって。
たまに強気に攻めてくるときはあるけど、
こんな、力任せみたいなキス、初めてで。


だけど、一回一回伝わってくる。

熱が。

溢れ出てくる感情が。



服を脱がされて、全身をキスされる。

もうキスされてない隙間がないんじゃないかってくらい
くまなく、何回も、何回も…。



どんだけ、私のこと好きなの…。

バカなんじゃないの、ホントに。



じわっと 涙が滲んだ。


秀は私の膝下に唇を這わせていた。
その間に、瞬きで涙をかき消す。



ついにキスは、足の先まで下りていった。

全身にもらったよ。
アナタに愛された証。



私も秀の服を脱がす。
たくましい体。
大好きな体。

私も、秀に、いっぱいキスしたい。


口。

鼻。

頬。

目元。

髪の生え際。

耳。

首。

喉仏。

鎖骨。

肩。


そこまで来たところで、
下半身がぐいぐいと押し付けられてきた。

もどかしくなってきたかな?

ズボン越しに手でさすりながら、キスをどんどん降ろしていく。



腕。

肘。

手首。

手。

指…。


秀の手、指、私はすごく大好きで。

丹念に舐めてたら、下がどんどん硬くなってきた。


ズボンも下ろす。

だけどまだ、そこにはいかない。


胸。

お腹。

脇腹。

腰。

足の付け根…。



そのまま足に移ろうとしたら、
頭をぐいっと押さえられる。

はいはい。



下着に染みがつくくらい、先端からは溢れていて
完全に充血して膨大した肉棒がそこにあった。

これ以上焦らすのは、いいか。

ぱくっと咥え込んで、喉の奥まで差し込んでやった。
思いっきり吸い込みながら、
頬の内側に舌に上顎に
毎回触れる場所が変わるようにしながら顔を前後させる。


、ヤバイッ……」

「一回出しちゃいなよ」

「ホント、キツ……やめ…」


頭を押されたけど、ギリギリ届いていた先端部分、
唇に力を込めて刺激を与えてやりながら舌先を高速に動かしてやったら、
「んっ!」という声と共に、どろりとした液が口に流れ込んできた。

うえーモロに舌で受けちゃった。
にっがぁ…。


「出ちゃったじゃん…」

「気持ち良かった?」

「あーもう…」


秀は額に手を当てたけど、
私は全く反省なんてしない。


「大丈夫、また起こしてあげるから」

「ちょっと、まだイッたばっか…あっ!」


腰をビクンと引かせる姿を面白がりながら
指でゆっくり刺激を与えたり、
色んな角度でキスをしたりしていると、
5分と待たずにそこは硬さを取り戻してきた。


「若いねー」


そういう言い方すると、秀はいつも怒った。
だけど今日、私の目に涙が溜まっていることに気付いたかな、
目線は悲しいくらいに優しくて、
背中に手を添えてそっと私をベッドに寝かしてきた。



「今度こそ、に入れていい?」

「ダメって言っても入れるでしょ?」

「ダメって言われたら、さすがに…」

「ジョーダンだよホント真面目だなぁ秀は!」


ケラケラと笑ってると、
さっとゴムを装着して、
私の入り口部分にその先端を押し当ててきた。

まだ入れてこない。



「入れていい?」

「いいよ」


「本当に入れていい?」

「だからいいって」


「本当に?さっきダメって言ってたけど」

「………逆襲かー…」



入り口でぐりぐりと腰を回してみたり、
クリの方側を棒全体で擦ってみたり、
ほんの先っちょだけ差し込もうとして、すぐ腰を引いたり。
そんなことをして、私が耐えられなくなるのを待ってる。

たぶん、このままでいたら
私が耐えられなくなるより
秀が耐えられなくなるのが先だろなぁ、
って思う気持ちもあるけど

実際私もぐちょぐちょだし。
入れてほしい欲すごくなってきたし。
秀は可愛いしカッコイイしよくわかんないし。
最後だし。



「ごめん秀、私の負け」


私の顔の横にある秀の両腕にしがみついて、

「お願い、入れて」

って一言。


じゃあ行くよ、とも何もなく、
ズンッ、とそれは一気に奥まで入ってきた。



「ッンああ!」

「ぬっるぬるだよ、なんの抵抗もなく奥まで入った」

「秀…すごい、イイ」


焦らされたかいあって、めちゃくちゃキモチイ。


もう覚えた。秀の形、硬さ、温度。


これを初めて知ったのは、私。
今知ってるのは、私だけ。

だけど秀は、これから先、色んな人と出会って、
色んな人が、秀を知っていくんだ。

ヤだなぁ。
離したくないなぁ。


眉間に皺を寄せた秀が、苦しそうに言葉を漏らす。


…しまり、すごい…」


ゆっくりと腰を前後させながら、
「ヤバイ、もうイキそう」
だなんて言う。


ダメ、そんなの。

入れたばっかなのに。

最後なのに。



「イヤだ。まだ終わらないで」

「そう思うんだったら…あんまり締め付けないで」



腰の周りに絡みついた私の足を後ろ手で解きながら、
秀は呆れ気味にそういう。


ふぅー…と、肺の中の空気を全部押し出すみたいなため息をつくと、
ゆっくり、ゆっくり、体を動かしてくる。

ああ。

ああ……。



キモチイ。

シアワセ。

ダイスキ。

アイシテル……。



「秀…好き」

「…俺も好きだよ、


チュッチュッと大きく音を立ててキス。
そして秀はまた大きく深呼吸。

「ちょっと治まってきた。動くよ」というと
少し腰を動かす頻度を上げた。
ゆっくり目だけど、その分一回一回が大きい。

体がゆさゆさと突き動かされて、
脳みそまで揺さぶられたみたい。
思考が正常に動かなくなる。

建前の後ろから本音が押し出されてくる。


「別れたく、ない。別れたくないよ…」


言っちゃいけない、言わないつもりだった言葉を、発してしまった。

秀は、困惑と…恐らく半分は快感によって、顔をしかめながら
「なら、別れなきゃいいじゃないか…」なんて言う。


別れなきゃいいじゃないか?

いいじゃない?


結果的に別れて行き遅れで生涯結婚できなくても。
もしくは結婚する頃に子供は産めないような年になってても。

今はとにかくこの人と一緒に居たい。そればっかり。


それでもいいんじゃない?


お父さんお母さんごめんなさい。
私は自分の目の前の欲に動かされてしまいそうです。

いずれ後悔するかもしれない。
それでも、今はどうしても、この人から離れたくない。


許して……。




と、その瞬間。



『お前だけじゃない、彼の人生も犠牲にしていることがわからないのか』



お父さんの顔と声が浮かんでしまった。




はっ。

…とした。



目を見開くと、目の前には汗だくの秀。
目が合う。

全身の力が抜ける。
だけど安堵によるものじゃない。
どちらかというと、恐怖で身動き取れなくなったときのような。


…今、余計なこと考えた?」

「……考えてない」


危ない。
変な思考の方向に動きそうだった、私。


私、さっき「はい」って返事しなかったよね?
別れなきゃいいじゃないかに、「はい」って。言ってないよね?

良かった。
無責任な言葉で相手に期待を持たせちゃいけない。


「何も、考えないで」


そういうと顎に手を添えて、
うまい角度に傾けられて、深く、キス。


「俺のことだけ考えてて」


何回も、何回も。
少しずつ角度を変えながら。
舌を吸う加減にも強弱をつけて。



「ごめんね、秀。大好きだよ」



ふにゃ、っとした笑顔になった。

そんな私に対して、秀は、笑い返してこない。


「謝るくらいなら……別れるなよ」

「え?」

「別れるのに…大好きとか言うな!!」

「しゅ、う……」


絞り出したような細い声に続いて、
怒鳴るような大きな声。

だけど、わかる。

気持ちがわかってしまうから、ツライ。


突然口火を切ったように、
緩やかだった動きが激しくなる。

より速く。
より深く。
それだけを目指しているかのように。


………っ!」

「ちょっ、秀、激し…!」


ギシギシとベッドが今にも壊れそうに軋む。
全身の肉という肉が揺れてる感じがする。
頭もぐらぐらする。
心も。
ぐらぐらグラグラ…。

快感が、蓄積していくのがわかる。


「あ…ア…だめ、イク……!」

「いいよ、イって」

「ぁー……ア…っ!」


イ…っちゃった……。

もうすっかり私の感じやすいポイントを覚えた秀。
硬い取っ掛かりの部分で重点的に擦られてしまっては、ひとたまりもない。

きもちい…。



「…イった?」

「ん……」

「そう、良かった」

「え?あっ、アン!ふぁっ!んっ!」


また激しく腰を押しつけられる。
奥の奥まで。
私の体の、一番深い部分…。



「しゅう、ま、待って…!」

「待てない、し、いいよどんどんイって」


さっきイった余波が治まらないのに、
また次の快感が与えられてくる。

どうしよう。
キモチイ、キモチイイ……!


「いっぱい俺を感じて。俺でイって。俺で気持ち良くなって、

「秀、しゅう……っ!」


また、イ、ク…!

きもちいくなりすぎてうまく考えらんない。


「もっと、もっとぉ…!」

「ん?もっと欲しいの?どこ?ココ?」

「あ!そこ、だめ、ダメェ…ッ!あああ!!」


擦るだけじゃなくて、ぐいっと押し付けるようにされる。
もう、知られちゃってる。
感じるポイントは全部。


容赦なくイかされて。

もう、キモチイイしかない。

秀しかいない。

秀でイッパイ。


、かわいいよ」

「だって、秀が…!」

「いいよ言い訳は、褒めてるんだから」


額にキス。


「こんな誰にも見せたくない…渡したくない」



私も……イヤだ。


だけどそれはエゴなんだよね。


私は、君以外を知っている。
君も、これから、私以外を知っていくだろう。
それを止める権利はない。


イヤだ。

本当はイヤだイヤだ。

ずっと、私だけの秀でいいのに。


こんな形をしてて、
こういう表情して、
ここで感じて、
こうして攻めてきて……。

あああ。


「しゅう、きもちよすぎるよぉ…っ!」


もう、むり…っ
またイキそう………!

そう思って体が強張り始めたとき、
ぬぽん、とソレは抜けた。


「イヤッ、抜かないで…!」

「ごめん、ちょっと待って…」


また差し込むと、
ゆっくりと前後させて、また抜いて、
また差し込んで…。



「限界、イキそう…」



吐息のような声で、そう言われた。


「ごめん、…イっていい…」

「イっちゃうの…?」


そういうと、眉をしかめた秀は
「あとちょっとは…だいじょうぶだけど…」とか言う。

いつの間にかこんなに、
甘えるようになってたなぁ。



「ジョウダンだよ」



こんなに頼りになる君に成長してくれたのに。

ごめんねえ。



「イクとき言って…?私も、いつでもイケそう」

「わかった…」



そう言ってゆっくりだった腰を
少し速めに動かし出したら…。



「ッ、ああイク…っ!」



相当堪えていたのか、三往復くらいでそう言い放ちながら
切なげな表情で秀は私の体の中で全てを放った。

私もそれを受け止め、イった。

二つの別のものが、同じテンポで痙攣するのを感じながら、
止まるときをそっと夢見心地で待った。



そうこうしているうちに意識はまどろんで


今日は寝かさないの言葉がまさかホントなんて思ってなかったけど


その後何回も眠って

数時間おきに目を覚まして

体を合わせて

眠って

を繰り返して


最後に覚えてるのはそろそろ外が明るくなり始める時間で


次に目を覚ましたら日が昇っていた。




寝顔…あんまり見たことなかったな。

そう思って、そっと髪を撫でた。


実は起きてたのか、目を覚まさせてしまったか、
秀は目を開けると、微笑んで、
チュッと軽いキスをして、
全身を痛くない程度に強く、ぎゅうと抱き締めてきた。



この時間が無限に続けばいいのにと思った。























童貞だった大石がいつの間にかうまくなってた(笑)(言い方)
この作品は、年下ゆえの危なっかしさとか初々しさと、
彼氏がゆえの男らしさを共存させてるのがポイントだでね。

『一回り年下の彼にサヨナラをする』の中に入る作品。
その順番にタイトルは二つ繋がるようになってて
『一回り年下の彼に/は別の人生があるから/サヨナラをする』になる。
これも当時書いてたけど完成遅くなってもた。


2017/12/08