* もうあの頃の二人には戻れない *
「…別れて欲しい」
言われてまず、日付を思い返した。
だけど今日は4月1日なんかじゃないし、
もしそうだとしても、秀はこんな表情で嘘をつける人間じゃない。
別れるんだ、私たちは。
そう思った。
別に、だだをこねて「別れたくない」ってすがりつけば、
どうして別れたくなったか理由を聞いて改善の努力をすれば、
付き合いは続けられるかもしれない。
でも、どんなにわがままを言っても
ほころびを必死に取り繕っても
秀がさっきの発言をする前には二度と戻れない。
「わかった」
私があまりにあっさり答えるものだから、
ぎゅっと閉じていた目を開けた秀は困惑した顔をしていた。
「別に…好きじゃなくなったとかじゃないんだ。ただ…」
「いいよ、言い訳は」
理由すら聞いてこない私に逆に戸惑ったのか、秀は自ら説明を始めた。
だけどそれを遮る私。
“言い訳”じゃなくて“理由”を話そうとしていたのはわかってる。
だけど、言い訳と理由の境目って実に曖昧で、
唯一の違いは相手に対して誠意があるか自分を守りたいだけかだと思うし、
それだけの違いだから、受け取り手側からしたら異なる解釈になるのだって仕方が無いと思う。
きっと秀もそれは理解してる。
だから、何かを言いかけて口を開けたけど、
目線を逸らすと同時に口をつぐんでそれきりだった。
代わりに私が口を開く。
なんでだろうなぁ。
大好きだったんだけど。
「私も、別れたいって思ってるし」
それは、今の私の、偽りない率直な感情。
書いたのこんな昔だったのかー(あとがき書いてる2019年大石誕現在)
まさか予言してたわけじゃないけど、
一旦別れ話出ちゃったらもう無理なんだろううなあ、
という思想がこの頃の私にはもうあったのだな。
2017/08/16