* 一回り十二年後の未来 *













大石秀一郎28歳。医者。独身。


なんとなく、幼い頃の自分は
20代も後半になるころには結婚して、なんて想像していたが
28歳現在、それどころか今は彼女すら居ない自分がそこに居た。
無理に求めていない面もあるが…。

仕事の方は順調で、なりたかった医者にもなり、
最近は研修医という立場もなくなって
少しずつ自立に向かっていることを感じる。



「次の方、どうぞー」


助手に呼ばれて次の患者さんが入ってきた。

16歳の女の子。
名前は……。


「大石」。


カルテを見て、目の玉が飛び出す思いだった。


ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
まさか、そんなはずない。
16歳だし。
この広い世の中、同姓同名がいたっておかしくない。



「先生も大石って言うんだ。同じだな」

「はい」


あまりに間が延びてしまったので、
ごまかすように言うと、
少女は少しだけ、笑った。



大石
出会うことのできなかった未来予想図。

本当は、そんな名前になった君と一緒に寄り添っていたかった。



12歳という年の差は、こんなに大きなものか。
当時も自覚していたけれど、上からの感じ方は、また違う。

男女逆だからなおさらかもしれないが、16歳のその少女は、
俺から見たらあまりにも弱々しく、頼りない存在だった。

俺も、こんな風に見えていたのだろうか…。


精一杯背伸びしていたし、強がっていた。
それで少しでも近づけた気になっていたけれど、
それも全部君にはお見通しだったかもしれない…と。



「…はい終わりました。お大事に」

「ありがとうございました」



大石ちゃん、は、部屋から出て行って、
助手に次のカルテを渡される。


またさん…。
今度は、40歳の女性。



「お願いします」

「はい、どうぞー……!」



答えながら顔を上げて、目がまん丸になるのを感じた。



「本当にお医者さんになったんだね」



部屋に入ってきた、知らない名字のその女性は、
俺のよく知ってる笑顔でそこに立っていた。






















こわいこわいw

一回りシリーズ、離れるパターンで再開したとき妄想。
くっつくエンドもありかなと思ってたりするけど。

お医者さん事情よくわからないけど28歳くらいになれば
自分で患者さんとか診てるよね?わからん。
私の中で大石は勝手に内科のイメージ。

20160721発案ですがだいぶかかってもた。


2017/04/23