* 恋風*

 〜rather easily fall in love〜












春。

今日から新学期。


コートを着なくても寒くないし、
日差しは眩しくっても暑くならない、
一番過ごしやすい季節。


新学期初日だというのに、
友達と駄弁ってたらすっかり最終下校時間。

私だけ方向が違って、門の前で手を振ってバイバイをしての帰り道。


足下に長く影が伸びる。

そうか、前方の空はもう紺色だけど、
背中側にはまだ太陽があるんだ。
日、延びたな。


10メートルくらい先に、
手を繋ぎながら歩いているカップルが見えた。
青春ですなぁ…。


しかし手を離した、かと思うと、
影絵でハートを作って見たり、
本当は前後でずれてるのにキスに見える風に立ってみたり、
イチャイチャが止まらない。

男の方が女の子の肩を抱き、
女の子は上目遣いで見上げ、
恋に焦がれた目で、ものすんごい至近距離で、
お互いを見つめ合いながら喋るその二人の会話が嫌でも耳に入る。


…世界に二人しかいないみたいだね」

「ほんとだね」


語尾にはご丁寧にハートまで飛ばしちゃってるのがわかる感じ。
甘ったるすぎて直視できない…。


二人きりじゃないですよーいますよー。

と思いながら、足下に視線を落として
自分の影がその二人に重ならないようにペースを落として距離感を保った。


理解できないなー。
誰かをそこまで好きになれる気持ちも、
二人きりの世界に入り込める気持ちも。
それよりも周り見て空気読んでさっさと早く歩いてくださいっていうか。

…この冷めた性格なんとかしない限り私には恋なんて無理かな。



ともかく、あんなのはまっぴらだわ、
と手を返した瞬間、風が一筋。

桜が舞う。

綺麗だな…と思って、足を止めて手をかざして花びらたちを受け止めた。


すると、

トンッ……トン…トン…

と後ろで何かが弾む音。


テニスボール…。


青春学園テニス部、やってるんだ。
さすが、新学期初日なのにすごいな。


しかし、拾っちゃったけどこのボールどうしよう…。


と。


遠くから焦った顔で駆けてきたその人は、

真後ろにオレンジ色の太陽を背負って、

目が合うと、途端に爽やかな笑顔で。




恋、なんて。

バカにしてたのに。




桜色した花びらたちは、

それを連れてきた風は、

どこへ行ってしまったのだろう。



ダメだ…



胸が

鼓動が

止まらない…


心臓が耳まで響いて

音も聞こえない。




世界一面、セピア色。


その世界の中に、


彼しかいない。




『世界に二人しかいないみたいだね』

『ほんとだね』



さっき、目の前で交わされていた会話を思い出す。



そんなロマンチックな感情、
私には無縁だと思ってたのに。



…こんな簡単に落ちれてしまうんだ。

恋に。


春風に吹かれて舞い落ちる桜の花びらたちみたいに。






















『恋風』 近藤孝行(大石秀一郎)





 

恋風キャラソン個人部門1位記念でがっつり歌詞創作!
インスパイア系はいっぱいあったけどついにやっちゃいました。
イメージ固めちゃうのイヤで避けてきたんだけど、
いくつかあるイメージのうちの一つってことで。

補足:
恋風1番で女の子側視点のイメージ。
AメロのLOVEはmy?loveの意味で人名かなと。
私のイメージだともっと爽やかカッポーなんだけどゲロ甘になってしもた笑
それまで全然違う世界に居たのが、
振り返った瞬間セピア色でフォーリンラブして胸が止まらない感じを出したかった。
“彼しかいない”って三人称呼びするくらい遠くにいるのに(物理的にも精神的にも)、
もうその時点で割と簡単にfall in loveしてるのがポイント。
ううう恋風のやつめ歌詞の中に好きな言葉やフレーズが多すぎるんよカバーしきれんよww

2016/10/17