* 一回り年下の彼の意外な一面 *
都合5回目のデート。
待ち合わせ場所に行くと秀くんは数学の教科書とにらめっこをしていた。
そういえば、来週は試験って言ってたな。
そのタイミングくらいでしか部活の休みが取れないっていうから会ってくれてるけど。
申し訳なかったり、嬉しかったり。
目の前に立っても反応しなくて、
気付くまで待ってみようと思ったけど、
いくら上半身をゆらゆらさせても一切気付く気配がないので声を出した。
「…おまたせ」
「あ、ごめん!集中しちゃって」
やっと私の存在を認識した秀くんは焦って教科書を閉じた。
「偉いね、こんなときまで。てか、忙しいのにごめんね?」
「いや、俺も会えて嬉しいから!…ただ、どうしてもわからないところがあって」
ぱらぱらと教科書をめくると、申し訳なさそうに聞いてくる。
「さん、積分って覚えてる?」
お!
ここでまさかの年上力発揮!!
「それ私に聞いちゃうー?」
「ごめん、苦手だった?」
「寧ろその逆!こう見えて私高校までは理系だったんだから!任せなさい!」
大学受験でドロップアウトしてんじゃん…というツッコミはさておき。
中学生レベルでしょ、それくらい余裕ヨユー。
ヨユー……?
「………」
「途中まではなんとかなったんだけど、ここから先がどうにもならなくて」
応用問題の最後の問題、
教科書の余白に几帳面な文字で途中まで計算された式を見て、
私は額に人差し指を当てる。
こ、これは……。
「…秀くんさ」
「うん」
「……めっちゃ成績いいでしょ」
「えっどうしたの突然」
待って待って!座ってちゃんと考えよ!
と私は手を引いて、ぐいぐいと歩き出す。
また君の一面を一つ知って、
距離感が縮まっていくのが嬉しい、今日この頃。
ちなみにこの後、二人でカフェであーでもないこーでもないって四苦八苦して
あ、解けそう!て主人公が一個切り口見つけて
あれでもいけないなー…てなったところを、なるほど!て大石が最後まで仕上げます。
「自分で解けんじゃん…」「いや、切り口見つけてくれたから」
とかやってればいいよ。
端から見たら家庭教師と生徒にでも見えそうね。
先生もっとがんばってー(笑)
一回りネタめっちゃ書いてる頃に発案したけど仕上げに半年食った。
2016/03/30