* 僕の噂話 *
新学期初日。
始業式のみのその日でも、テニス部は活動がある。
最中に教室に忘れ物をしたことに気付いて、休憩時間に取りに戻った。
すると…女子たちの話し声が。
数名教室に残ってなにか噂話に花を咲かせているよう。
「じゃー次!は?」
「私はやっぱりねー…」
なんの話だろう、か。
足を踏み入れていいのか廊下でためらっていると…。
「大石くん!」
えっ。
まさかの自分の名前に、心臓がドキっと高鳴る。
なんの、話だろうか。
放課後に、女子が教室に残ってする噂話。
なんていったら…限られてくるのではないだろうか。
もしかして、誰かが、俺のこと…!
これはとても、中に割って入れる感じではない。
出直すか…と思いつつも、
どうしてもその声の主が気になってしまって。
そっと息を潜めてその続きに耳を澄ませる。
「去年同じクラスだったんだけどしっかりもので…」
「授業中とかもよく発言してるし、先生からも信頼されてるしー」
「あと、なんか、姿勢が良いっていうか!見てて清々しいっていうか!」
へーそうなんだー、とか、なんかそれわかるかもー、と聞こえてくる。
有り難い…けれど、気恥ずかしい。
誰、だろう。
そういう風に思ってくれているのは。
俺のことを…そういう目で見てくれているのは。
去年同じクラスだったというと、あの子だろうか…と目測をつけつつも。
そっと。
そーっと…引き戸を開けていく。
ガタン。
あ。
わずかに開けた隙間から、くるっと女子3名がこっちを向くのが見えた。
こうなっては、逃げる方が不自然だ。
何も聞こえてなかったかのように振る舞ってがらっと扉を全開にした。
「いやあ、ちょっと忘れ物をしちゃって…」
と言いながらしれっと自分のロッカーに向かっていたら、
女子たちはわいわいと騒ぎ立てる。
「何これ噂をすればなんとやらー!」
「うそっ!もしかして聞こえてた?!恥ずかしー!!」
聞こえていなかった体を貫こうと思っていたのに、
露骨にほっぺを赤らめると、両手を当てた状態でこっちを見上げてくる人がいた。
やはり、さんだった。
さんが、俺を、俺のことを……!
「大石くん、私さ…」
少し頬を赤らめたまま、さんは俺の目を見て話し始める。
そんなさんみんなの前で大胆な…!
ドキンドキンドキン。
心臓が最高に高鳴り、その瞬間にさんが発した言葉とは!
「明日の学級委員決めで大石くん推薦するから!」
だった。
………え。
「絶対適任だと思うんだよね!」
「うん、私たちも納得。ねー?」
「ねー!」
「あ、ありがとう…」
女子3人の同意を得られて。
これは明日の学級委員決めに向けて、好調なスタート…?
横を見たけれど、さんの赤い頬はもう普通の色をしていて、
ただ一人、勘違いをしていた自分が恥ずかしくて
赤くなっているであろう自分の顔を隠すことに必死になった。
勘違い大石うぇーいww
でもこの事件をきっかけに大石が主人公ちゃんを意識するようになって
結果的に大石が告って付き合うようになったら万々歳じゃね?
と思うので勘違いも捨てたもんじゃないよねって思う(←何これ)
2015/09/23