* うっかりドッキリ大成功 *












「俺、お前のこと嫌いなんだよね」。




すごい形相で向かってきて、
「ちょっと話あんだけど」と呼び出され、
もしかして愛の告白?でも何よその顔?
と思ってたらやっぱり愛の告白なわけないよねコレ。

てか、愛の告白どころか、その真逆の言葉。



はー……。

そうですか、嫌われてんのかー…。



だけどそれをわざわざ伝えてくるって何。
ちょっとイラっときたりもする。
ほっといてくれればいいのに。

嫌いだからなに?
話しかけんなってか?
視界に入るなってか?
そっちが嫌いならそっちでなんとかしてくんない??


はぁ。

ため息。



「あ、っそ。じゃあ、どうしてほしいわけ?」

「べ、別にどうかしてくれってわけじゃねーけど…」



そう言ってやったら、
ちょっとたじろいだように表情が崩れた。


なんだよもー…。



しかし、ムカつくと同時に悲しくもあるね?
だって、桜井とはそこそこ話す関係にあったから。

そういやすれ違い様に
「どけブス」言われて
「誰がブスですってー!?」なんてやりとり日常茶飯事だけど
あれはじゃれ合いじゃなくて本気で私がイヤだったんスかー…。

ふぅ。


「わかったよ」


嫌われているのは心外ではあるけども。
そのようなことなら仕方がない。



「じゃあさ、アンタが私のことを嫌いで構わないからさ」



だからって別に私が桜井を嫌いになる理由にはならないし、と思って。




「私は別に好きなままだけど、いいかな?」




そう言った。

ら。




は?


桜井の顔がみるみる赤く……?!




えちょっと待…





「「イエーイ!!!」」





って……。


はぁ!?




大声を出して飛び出してきたのは
大勢のクラスメイトの男子たち。
倉庫の裏、草むらの陰、木の上、
どこからともなくムラムラと出てきた。

ちょっと待ていつからそんなとこに潜んでた!?




「何これどういうこと!?」

「はいせーの、ドッキリ〜!?」

「「大ー成ー功ーー!!」」




戸惑う私をよそに、
クラスメイトたちは楽しそう。
桜井のことを囲む男子は全部で10人近い。


「やったじゃん桜井」

「だから言ったろ悪いようにはしないって」


そういってみんなで桜井を肘で小突いたり頭を叩いたり。
何何何何何…!?


まさかの男子たちは、こんなことを言いだす。


「やーっぱりはお前のこと好きだと思ってたんだよ」

「おい桜井、俺らに感謝しろよー!!」


「いやちょっと待てちょっと待てぇい!!!」


全力のストップ。
待て、誰が誰を好きだって!?



「恥ずかしがんなって。両想いおめでとう!」

「結婚式は呼んでくれ!」

「だから、待て!」


騒がしくって声が通らない。
思いっきり、叫んだ。



「私は別に桜井のこと好きなんて言ってない!!」



え? と。

一気に場がしらける。


「でも、さっき…」

「嫌いの反対の好きって意味で言っただけで
 そーゆー好きとは違うから!」


照れ隠しとかでなく、本心だった。



「でも、だったら……」



みんなの視線が、桜井に向かう。
桜井は一人、いたたまれない感じでそこに立っていた。

あれ、これって、もしかして、マジで…。



すると、群れの中で騒がずにずっと端に立ってた伊武が
私の近くでぼそぼそと喋り始めた。



「実はー…これ罰ゲームでさ…好きな女子に
 「お前のこと嫌いだ」って言えってやつだったんだよね…
 俺はやめろって言ったんだけどさー…みんな無茶するよねー…あーあ」



何その悪趣味な罰ゲーム!
とツッコミたい気持ちもあったけど。

それよりも前に。

え。

マジで。

となると


桜井が、私のこと……?



「じゃあ俺ら、お邪魔っぽいし、退散すっかー…」

「そうだな、んじゃ、お邪魔しましたー……」



気まずそうに、男子約10名はぞろぞろといなくなった。
無責任な…。

残された、私と桜井。


………。


目が合った。

桜井の顔が、赤い。



本気で、桜井は、私のこと……?



ボッ!

と私まで顔が真っ赤になるのを感じた。



「あの……わりぃな」

「あ、いや…」



目が、見れない。
えええどうしよマジでどうしよ…。

一瞬、シンとして。

どうしよう、何か言わなきゃ。
なんの罰ゲームだったのー、とか、
そんなくだらないどうでもいい話題で話を逸らすしかないか…。


と思ったら。




「その…こんな形になっちまったけど」




えちょっと待って。




「本当は俺、お前のこと好きなんだよね」




顔がどんどん熱くなって

耳まで熱い。




「これは、ドッキリじゃねーから。……じゃっ」




そう言って、桜井は背中を向ける。
そしてその場を後にする。


数秒間放心状態だった…けど。

だんだん落ち着いてきた。




「いや…ちょっと待てちょっと待てぇい!!!」




走って背中を追いかける。


よくわかんない。
まさか嫌われてるとは思ってなかったけど
だからってそういう意味で好かれてるとも思ってなかった。

急展開過ぎて頭がついていけないけど、
ただわかるのは、心臓がドキドキしているということ。


やっと追いついて、
肩に手を掛けたら思いっきり振り払われて、
本当に好きなんかい!って突っ込もうと思ったら、
無理やり覗き込んだ顔が、これでもかってくらい真っ赤で。




もしさ、アンタが私のことを本当に好きなんだったらさ。


私もこれから好きになっちゃっても、いいかな?






















ふと閃いたネタなんだけどもこれはどうにも
大石を当てはめた場合は浮かばなくて。
ちょっと遅れたけど桜井君誕生日祝いってことでいいですかw

桜井君はどうにも幼馴染設定が好きなようでそれが多いんだけど
こういうクラスメイト設定も良いね。苗字呼び捨ても良いね。
はー青春ラブいいなーww

タイトル初めは『反逆の仕掛け人』にしかけたけど、
それもかなり気に入ってたけど、何それwと思って変えたw


2015/07/04