* 恋人だからの片想い *












好きな人と付き合えることになった。

そして明日は初デートだ。



でもどうしよ、そう思ってるのは私だけだったら。



付き合い始めたのは、先月のこと。
だけど大石は部活で忙しいし、
私だって習い事は色々やってる。
平日も休みの日もなかなか予定は合わなくて、
テスト明けの土曜日、初めて「その日なら空いてる」ってお互い一致して、
じゃあ遊びに行こうよ!ってなったんだ。


本当は…テスト期間もずっと不安だった。

遊びに行こうよ、とは言ったけど、
場所とか時間とか決めたわけじゃなかったし、
ちゃんと約束として認識されてたかな、って。
でもテスト期間中、いつも真面目にお勉強する大石の邪魔はしたくなくて、
テストが終わってからやっと
すごくドキドキしながら「土曜日、空いてるよね?何時集合にしよう?」って連絡できた。

あっごめん他の予定入れちゃった、とか、
あれって一緒に遊ぼうって意味だったのかい、とか
返されるんじゃないかって不安を抱えたままドキドキして返事を待った。
夜7時過ぎ、部活が終わった頃かな、
「青春台の駅に10時くらいでいいかな」って返事が来たときは、
一人でベッドでトランポリンしちゃうくらい浮かれてたんだよ私は。


なんかね、まだね、
片想いみたいな気持ちがしているんだよ。


告白したのは私だし。
大石はOKしてくれたけど、
一度も私のことは好きだなんて言ってないし。
ただ「付き合ってくれませんか」って言って、
それも、私が告白したからこそ応えてくれた返事なだけだし。


今までも、私が一方的に見てただけだし。でも、
付き合うことになって…二人で会えるようになったら、
少しでも距離が近付いて、
私のこと好きになってくれるかな、って、
期待してはいるんだけど…。



とにかく、明日が楽しみだな。
テスト期間も。
その後の憂鬱な授業も。
土曜日に大石とデートだ!って思うだけで乗り越えられたんだから。



やっと、当日。




朝起きて、朝ご飯も食べて、
さてそろそろ出かける準備をしよっかなー
張りきりすぎかなー…っていうタイミングで。


携帯に電話。

大石の番号。


……まさか。



「はい…もしもし、大石くん?」



電話で話すのは、初めて。
ちょっとだけ緊張した。

そして突然聞こえて来た声は、謝罪を繰り返す一方で…。


さん、ごめん、本当にごめん……」

「ん、どうしたの?」



どうしたの、なんて言いながら、
本当はちょっと察してた。
今の段階で来るってことは遅刻の連絡じゃない。

もしかして、体調悪いとか急用が入ったとか、それ系??

イヤだ。
そんなのイヤだけど、まさか。



「もしかして…都合悪くなった?」



まさか。

まさか。


自己防衛。
早く否定してほしくて、その言葉を発したけれど、
残念ながら……いくら待っても否定はされなかった。



「実は、体調が悪くて…吐き気が治まらないんだ」



頭がぐるっと一周する。


えー?!って泣きつきたい気持ち。
やだ!ってわがまま言いたい気持ち。
大丈夫?って心配する気持ち。
頭の中で、戦って、戦って……。


「うそ、大変!え、じゃあ今日やめた方がいいね」


平常心が勝った。
悲しいけども、これが現実、

せめて、それに対して、大石が否定してくれればー……。



「申し訳ないけど、そうしてくれるかい…」



…んなわけ、ないよね。
仕方がない、体調が悪いんじゃ仕方がない。


押し付けちゃ、ダメ。

だって、大石は別に私のことが好きなわけじゃない。



私が好きって言ったから、応えてくれただけで。
嫌いではないから、断る理由が思いつかなかっただけで。
別に私が特別なわけではなくて、
私が大石のことを特別扱いするから、
私も大石の特別な存在みたいに思いたいだけで。

私はまだきっと大石の特別じゃない。



「そ、っかぁー…」



次は、いつだろう?

きっとまた部活で忙しいんだろうな。
今週はテスト明けだからお休みだって言ってたけど、
つまり逆を返すと次のテストまでないのかな。

学校で毎日みたいに会えるのに。
それ以上を望む時点で贅沢だって思うけど。
でも裏を返すと、毎日知らんぷりみたいにしてるのも本当は辛いよ。


今日会ったら、少しは近づける気がしてたんだけど、な。

だけどそんなこと押し付けたってあなたは困るだけだし。



「残念だけど」



思い返そう。
そして感謝しよう。

これが終わったら、って思ってテスト勉強頑張れたこと。
嫌いな授業も「でも今週末は…」って思ったら乗り越えられたこと。
本心では好きではないかもしれない私の約束を
ちゃんと覚えて予定を空けておいてくれたこと。



「お陰で今週はずっと楽しみな気持ちで乗り越えられたから、良かったかなー」



本当は、淋しいけど。

淋しくて淋しくて、今もちょっと泣きそうだけど。


泣きだすのは電話を切った直後でいい。



「ごめん、さん…本当にごめん」

「えっなんで!?あ、嫌味で言ったんじゃないよ!」



しまった!

大石真面目だから!
せっかくポジティブな言葉で受け流そうと思ったのに、
相手が裏の裏を読んで申し訳なくなっちゃってる!

裏の裏は真実かもしれないけど…とかそういうことは今は置いといて。



「本当にお陰様で今週は、ポジティブに過ごせたから!」



そう、伝えた。

あなたは申し訳なくなる必要ないんだよって。
本当に、本当に今週は楽しかったんだよ、って。



ああ泣きそう。

持て。もう少し、電話を切るまで。



「体調良くなったら、埋め合わせしてね」

「も、もちろん!」

「それじゃあ、しっかり休んでね」

「ああ…………ありがとう」

「ん。それじゃあまたね」



向こうがどのタイミングで切るか、切ったか、
わからないまま、私は目を閉じて通話終了ボタンを押した。



……大石。


今日は、何をして過ごそう。

着る予定だった服は、初デートでもないのに勿体ない気もする。



ああ……。


泣いて、泣いて、涙が乾いたら、考えようと思う。






















青春ラブっていうけど微悲恋じゃねぇのwww
主人公目線で見るとそうなる。
明らか片想いの気持ちでしかないからね。
っていうかそれが真実なのかもしれないね(←自虐)

後半酔っ払ないながら書いた割りに結構良く書けてるな(←)
しかしお陰様で自分のリアルな心境が
恥ずかしげもなく露呈されてて恥ずかしいわw

『答えたい、応えたい。』のアザーサイドです。


2015/06/28