* 声が聴きたかっただけ、なんて。 *












私は電話が苦手だ。

懸賞の応募だって商品のお問い合わせだって
どうしてみんなはああも簡単にできるのかわからない。
お店の休業日がいつだったか確認したいのに勇気が出なくて
結局CLOSEDの札を掲げるお店の前で肩を落としたことも、何度か。



そんな私が、今日は電話をする。

とある一つの理由のために。



携帯の画面を開く。

アドレス帳の中から相手の名前を見つけて、
電話番号を表示させる。

大きく深呼吸。

ダイアル。


プルルルル…


プルルルル…




出るかな出るかな、って、
この時間が一番苦手。

早く出て欲しい、と思う一方で
どうせならこのまま出ないでくれてもいいような気持ちになる。




プルルルル…




プルルル・プツッ




…着信音が、止まった。その代わりに、
少しくぐもった、でもいつもと同じ秀一郎の声が聞こえた。


「もしもし」


その声が聞こえただけで胸がほっとして、
私は相変わらず電話が苦手だなと思う。


「もしもし、です!」


私の声も、同じように向こうに届いているだろうか。
でもなんだか緊張して、いつもみたいに声を出せなかった気もする。
掠れたようないつもより高いような、っていうかちょっと裏返った??

考えていると、ぷっ、と聞こえた。
あれ、秀一郎、今笑った?


「え、笑ってる…?」

「あ、ごめんごめん」


謝りながら、声が笑ってる…やっぱり笑われたみたい。


って、いつも電話で『です』って名乗るよな」


言われてから、気付いた。
確かにって言ったかも。
いつも、ってことは、もしかして今までもそうだった?


「あ、ごめん!」

「いや謝ることないんだけど」


そう言って、相変わらずの笑った声が聞こえてくる。

秀一郎が嬉しそうだから、いいか。
なんか私も嬉しいし。



こんなにも。

こんなにも。


電話を掛けることはストレスなのに。



あなたの声を聴けただけで


こんなにも。

こんなにも。


幸せになれるだなんて。




「で、何の用だ?」




呑気な質問がやってきて、
さあ、なんて答えようか。



あなただけなんだから。

この世の中で『声が聴きたかった』なんかが
私が電話を掛ける理由になれるのなんか。






















こんだけ電話が苦手なのは私です(←)
昔は居酒屋の予約ですら電話できなくて
全部お店まで足を運んだものだなぁ…。

私が「話したいから」を理由に電話できる人って限られるんだけど、
そのうちの一人といざ電話で会話するかって事態になったけど
無理だ、と思って、ああ心が離れたのだなぁと判断した。という話。
私だけわかればいいよwww

うーん大石電話番号教えてくれないかな〜〜(←)


2015/01/11