* 今日だけは泣かせてほしい。 *












思い返してみれば

付き合おうと思ったきっかけは

“笑顔にしてくれるから”だった。



基本的にマイナス思考、後ろ向きな私。
少しのことですぐ泣くし、
悲しいだけじゃなくて嬉しくっても泣くし、
といっても嬉しいことより悲しいことの方が日常には多いし。

そんな私だったのに。


いつからだろう。


「アナタといるときは ワラってるコト オオイナ」


なんて。
思うようになったの。


もしかして?
いやいや。
私は恋なんてする器じゃない。

そう思っているうちに、
“その相手”に告白された。


同じクラスの大石くんだった。



告白されたのは、修了式の日。

突然のことに驚いて
「考えさせて」って言ったけど、
自分の気持ちはわかっていた。

あとは、私の覚悟次第。


付き合っていいのかな。

私なんかが。

好きになっていいのかな?って。



わからなかったけど。

向こうから言ってくれたんだし、
ちょっとくらい自分勝手でも、いいよね?って。


いつも笑顔にしてくれてありがとう。



春休み中に呼び出して。


「好きだよ」なんて言えなかったけど、


「よろしくおねがいします」って言った。





ああ



毎日




毎日





毎日が……





楽しかったなぁ。


今になったら、そればかりがよみがえる。




だけど、楽しいだけじゃなかった。



なんだか最近は、会うたびにケンカになって。
といっても怒鳴り合うわけではないけれど、
なんとなく向こうが声を荒げて、
私は反発しようとして、結局涙が出て。

泣いて許してもらおうと思っているわけではないけれど、
悲しくて、悲しくて。
向こうがそれに苛立ちを感じているのもどこかで分かっていても
止めることは出来なくて。


それがまた悲しくて。

悲しくって。


でも嫌いにはなれなくて。



どこにいったのだろう。
毎日会うだけで楽しくって、笑っていた私たちは?




もう、無理なんだ。





「秀一郎」





「話したいことが、あるよ」





ある日、私が出した勇気。



結果的に、それが、結末…終焉に繋がった。




…………。




いつの間にか噛み合わなくなってたんだね、私たち。
小さなズレも、何回も繰り返しているうちに
大きなズレに変わっていく。
私たちは、そんなほんの些細な“ズレ”から始まっていたと思う。


そっちが少し考え方を変えれば
なんとかなったんじゃないの?って恨めど

ああ
それは向こうにしてみても同じ気持ちなのかな
って思ってみたり。

人の悩みって、どうしてこうも多種多様で、本人以外には意味を為さないのだろう。





別れてから数日したある日、ポストに手紙が入っていた。
打ち出したような、几帳面すぎるほどの文字。

差出人を見なくたって誰からかなんてすぐに分かった。



深呼吸してから、開けた。


内容……。







 いざこうして筆を取ってみると何から書いていいのかわからないけれど
 きっと最初で最後の機会だと思うので、
 俺の気持ちを素直に書こうと思います。

 まず、このようなことになってしまって、本当にごめん。

 俺と一緒にいるときに
 笑顔になってくれるのが嬉しかったはずなのに
 いつの間にこうなってしまったのだろう。

 ケンカしたり
 不安にさせてしまったり
 ここのところ、どれだけを泣かせてきたのだろう。

 だけど、これだけは信じてほしい。
 俺は、ずっとのことが、誰よりも大好きで、大切でした。
 

 これからは、笑顔になってくれますように。
 その時、隣にいるのが俺ではないのが残念だけれど…

 今までありがとう。

                 秀一郎より』




涙  が。



溢れて溢れて
こんなに涙って出るんだなってくらい。

ああ。
この涙は。

なんだろう?

悲しいのかな?
嬉しいのかな?
愛しいのかな?

私はいつも泣いてばかりで
最早判別はつかないけれど。



次にもしも会う頃には
私が泣いていて
「らしくないな」
なんて言われるような。

笑っていたら
「それでなくっちゃ」
って言ってもらえるような。


そんな人になれるまで
アナタに会うことはできないな。


だったら永遠にさよならかな、なんて自虐して、
どうしたらそうならずに済むだろう、って考えて。




ただ




ただ








今日だけは心ゆくまで泣かせてほしい。






















いつも、フラれると
「お前らしく笑顔でいてよ」と言われていたので
笑顔でいることが私らしさなのか、そうか、
私がもし笑顔でいることがらしくないような子だったら
どんな反応が来るのだろうか、っていうのを
大石相手にしてみたら想像以上の破壊力だったって話ww

てわけで、相手にフラれた設定で考え始めたはずだったけど
手紙の文章書いてたら、違うなこれフったの主人公側だな、と思って、
なるほどよろしいならば戦争だ、じゃなくて、
現実に近付けたろって思って話し合いの末にした次第だよww自虐ww

意図的に後ろ向きな考えとか発想差し込んでみた、つもりw


2014/09/24