* ただ一番の秘密だけは *












私は彼氏と、とっても仲良し。
昨日見たテレビ、今朝見た夢も、
今日先生がしたくだらない発言も
どんな些細なこともなんだって話す。

ただ、一つの話題を除いては。


だから私は、一番身近な相談相手にそれ話す。


「はぁ!?好きな人ができた??」

「……」


普段こそ穏やかに話を聞いてくれるその人が
「え?」じゃなくて「はぁ!?」と言ったあたり、
この事の重大さを物語ってる。


「正確には好きじゃなくて気になる人なんだけど」

「それでも…どうして?仲良しじゃないか」

「一緒にいたら落ち着くし、楽しいよ?」


ならどうして…って、大石が顔を顰める。
どう、こんな私、嫌いになる?

心が落ち着かない。



「でも…その気になる相手、は」



大石がこっちを見てきているのは分かる。
でもそちらは向けない。目は合わせられない。



「一緒にいると…ザワザワする」



そう言った後、しばらく無言の時が過ぎる。

きっと大石は、何を言うのか迷ってる。
私は大石が何かを言うのを待っている。


「…どうするんだ」

「どうもしないよ」


迷いに迷ったであろう大石の一言目は、
質問を投げかけてくる形だった。
私はそれをすんなりと返す。


「今の彼氏とは別れる気はないから、ってことか?」

「それもそうなんだけどー…それだけじゃなくて」



心の中の霧みたいのが、
どんどんおっきくなって、濃くなって、
前も見えないくらいになって…

真っ白になって

弾ける。




「だって…その人が彼氏になっちゃったら、
 私には恋バナ相談する相手がいなくなっちゃう」




私は笑顔。
清々しいまでの。

大石はこっちを見て固まってる。
「正気か?」とでも言いたいかのように。



私は彼氏ととっても仲良しで、
何だって話す関係。


ただ一つ、一番の秘密を除いては。






















裏を返せば、一番の秘密を話せる相手は
彼氏にはなれないという皮肉ですよ。

心が動いてるうちは恋なんだよね、
それをわかってるから主人公は
相談して伝えることでそれを昇華させようとしたのかと。


2014/04/22