* あげたら返ってくる…3倍返しだ! *












―――それまでは、いつも通りのホワイトデー。



「はい、にも」

「どーもー。私からもこれ」

「ありがとー!」


そんなやりとりがなされている教室。
その光景は、一ヶ月前のこの日とまったく変わらない。

バレンタインデーは、友チョコを交換する日、
ホワイトデーは、友チョコを交換した人たちとまた交換する日。
つまり2日とも、女の子同士で交換する日みたいになってる。

でもやっぱり大量生産するから、
余ったものはそのへんに適当にばら撒く。
友チョコが、義理チョコとして形を変えて。

誰のが可愛いとかどれがおいしそうとか
そんなで盛り上がっていたら、
こっちに歩み寄ってくるやつがいて。
なんだ文句でもあんのか?と食って掛かる準備をしてたら…。


さん、ハイ」


小包を差し出された。
相手は、クラスメイトの大石秀一郎。


「え、私!?」

「え?だって…バレンタインくれただろ?」


違ったっけ、とか首を傾げる。
いや、あげたけど。あげたけどさ!

も、もしかして本命と思われてたらどどどどうしよ!
(まったくタイプじゃない!勘違いされちゃ困る!)

なんだか申し訳ない気持ちになって、ちょっと小声になる。


「私あげたの…ただの義理だよ?」

「うん、だからお返し」


ハイ。と、再度差し出される。



「……ども」



半信半疑で受け取る。

えー…?


大量生産の義理チョコに、ちゃんとお返しくれる男子がいるとは。
しかもなんかちゃんとした包みだし。
これが噂の3倍返しってやつ?



、大石にあげてたんだ」

「うん。余ってたからハイって。それがこんなに立派なのもらっちった」

「マメだね〜」



私も来年大石くんにあげようかな、なんて
現金なことをいってきゃっきゃと盛り上がる仲間たち。

その中、その包みを掴んだまま、私は一人。


キョトン。



初めてだった。
交換ではない、本当の意味で“お返し”をもらったのが。
今まで量産したチョコを何個もばら撒いてきたけど、
初めての、たった一個目の、3倍返しだった。

もしかして、アイツ私のこと好きだったりして?
いやいやそんなまさか。
の言う通り、ただマメなだけだと思う。
……だよね?

義理の、それもお返しだってわかってるのに、
なんだかその包みが、とても嬉しくって――。



予想外が、こんなにドキドキするだなんてね。

男の子たちがバレンタインデーを楽しみにする理由がわかっちゃった気がした。






















初めてお返しをもらったのでw
しかも本当に3倍になって返ってくる!社会人すげー!w

本命渡した場合、ホワイトデーまで待たなくても
バレンタインデーの段階で大体結果わかっちゃうよね、
っていう話をしたんだけど。
バレンタインデーの段階ではなんもなかったのに
ホワイトデーで突然始まる恋があってもいいかなと思って!


2014/03/15