* またね=また偶然会えたらいいね *












電車が急ブレーキ。
ドドドッと人が雪崩れ、
「すみません」って声があちこちから聞こえる。


私も


「すみません」


って言ったら、何故か


「あっ」


て聞こえるから、思わず


「えっ?」


て言っちゃった。



どうしたんだろうと思って横を見たら、
そこにいたのは小学校の同級生。


「もしかして、大石?」

「やっぱりだ!」


そう確かこいつ、中学受験したんだよね、
会うのはかれこれ3年ぶりか。


「久しぶりー元気?」

「ああ、そっちは?」

「見ての通り」


ジャージの裾を腕捲りしてみせた。
健康そのもの。これから部活の練習試合なんです。

そしたら、「相変わらずだな」なんて言って、ハハッと笑った。



ああ。
大石だ。

と、その笑い顔を見たら改めて思った。


なんか、さっきまでは、大石なのはわかってるけどなんかしっくりきてなくて。


「随分…」

「え?」

「……オトナになったね」


そう言ったら、大石は微かに頬を染めた。
おや、照れたかな?


「そりゃあ、あれから3年も経ってるしな」

「そうだよねー、まだ成長期前の少年だったもんねー」


背も高いし(前は同じくらいだったのに!たぶん今15cmくらい違う)、
声も低いし(もう少し高いというか、細い声だった気がする)、
なんか全体的に…落ち着いた、かな。


……ふむ。



「もしかして、彼女とかいるの?」

「いやいや、そんな滅相もない!!」


手をブンブンと振ると否定してきた。
そうかー。もしかしたらと思ったんだけどな。


「…は?」

「私?」


ためらいながらも聞いてきたから、
見栄張ってやろうかなーとも思ったけど。



「いないよ」

「そうか」

「募集中だけどね」

「そうなんだ」



あれ、今の私なんか大石そそのかしてる風だった?
そんなんじゃないよ?
……まいいか気にしてなさそうだし。


「あ、私降りるの次だ」

「そうか、またな」

「うん、またねー」


プシューと電車を降りてから、
しまった連絡先くらい聞いとけば良かったかな、
と思ったけどまあいいか。
また偶然会えたらお話しするくらいの、そんな関係で。






















髪型には突っ込まない優しさ。(笑)

私が、私立中受験したやつと久々再会してもこんな感じだったろな。
つまり、本当に何もないんだと思います。
この二人は、あと2回くらい偶然あっちゃったら、わからないけどね(笑)

会うたびに成長してるんだろうなぁ。


2013/04/30