* 恋の盲目 *












「クラスで誰一番可愛いと思う?」



放課後忘れ物を取りに教室に戻った私に聞こえたのは、そんな声だった。


そいえば、男子は体育祭に向けて組み体操の練習を
居残ってやってたんだっけ?


「俺成田かな〜」

「俺も成田」

「いや羽田だろ」

「俺も羽田だな」

「俺は成田派」


結局意見は二分化されたようで、
どっちだどっちだと論争が繰り広げられてる。


ちょっとー。
中に入るに入れないんですけど…。

今日は諦めるか、と踵を返しかけたとき。



「おい、黙ってんじゃねぇよ、お前もなんか言えよ大石!」



と、いう声で、私は足を留める決意をした…
どころか、廊下と教室を区切るその壁に耳を当てた。

何を隠そう、私は大石が好きだ。


大石は、なんて答えるんだろう…。



「俺は別に…」

「いい子ぶんなよ!」

「他は全員言ってんだよ!ずりーぞ!」

「そうだよお前はどっち派だよ」


周りにぎゃんぎゃん言われて、
でも大石のことだしそれでも答えなかったりしそうだよなー…

と思ってたら。






さんかな」







え。




「「えっ?」」





私の脳内と、男子たちの声がハモった。


「何でだよ!?もっといいのイッパイいんだろ!?」


コンノヤロウ、と思いながらも、私は同意してしまった。


私は別に、全然可愛くない、
人並み程度の外見しかしてない。

わざわざこんなところで名前を挙げるほどの逸材ではない。のに。



「素直で良い子じゃないか」

「それと可愛いかは別だろ。俺たちは外見の話をしてるんだよ」



聞いてないと思って好き勝手言ってくれるじゃん…。

まあ結構同意してしまう私もなんだけど。
だって私、別に可愛くないよねー…。

素直、うん。確かに素直であるのは自負してるけど。



しかし、さっきの大石の発言、言い換えると…。




「もしかして大石、のこと好きなんじゃね?」




一人の男子の声と


私の脳内がハモった。




「お、俺は別に…」

「照れんなって!協力すっから」



教室がなお騒がしくなる。

その場から逃げ出したいような、
ずっとそこにいて聞いていたいような。



考えた結果、ここにいるのがバレる前にいなくなった方がいいな、
と思って動きかけた瞬間、とある言葉が耳に入った。



「しかし大石も物好きだなー」



コノヤロウ、と思いながらも、私は同意して笑ってしまった。






















可愛いわけではないけど良い子と思う、とか
外見はそんなでもないけど可愛いと思う、とか。
そんなラブコメ。青春ラブ。
あーもう早くくっ付いちめえ!(笑)

成田と羽田は、飛行場で思いついた作品だからですw


2013/02/26