近付けるだけで嬉しいし、
見ているだけでも幸せになれる。
そうして片想いも楽しんでいたから、
このままの状態が続くのも悪くはないかなって思ってた。

だけど…それも今日までなんだね。



クラスメイトに小突かれて照れくさそうに微笑む二人を見て、
私の恋は静かに終焉を迎えた。











  * やっと片想いに別れを告げる *












盛り上がる教室の一角。
輪の中には入れなかったけど、
自分の机でノートを読むフリをしながらこっそりと話に耳を傾けた。


大石とちゃんは、学級委員同士。
二人ともしっかりもので真面目で、周りへの気配りも絶やさないタイプで、
ああ…お似合いだな、なんて不本意ながら納得してしまった。

そして私はその大石くんが好きだった…と。


失恋。
完膚なきまでに恋は崩れ去った。

まだ、ちゃんからの告白だったら可能性は残ってるかもしれない…
でも聞こえてる話から予測するに、
告白したのは大石くんからっぽい。
で、ちゃんも元々大石くんのことが気になっていて、
お付き合いに至った…と。

でもまあ、すっきりしていいかもなー。
大石くんからの告白じゃあ手も足も出ない。
というか、相手がちゃんな時点でどちらにせよ私の敗北は決まってるかもしれないけど。
いろんな意味で、諦めついたわ。


はあ。
ため息。



そうこうしてるうちにチャイムが鳴って、
クラスメイトたちがガタガタと動き出す。
そして横から声が掛けられる。



「どうしたんだい、さん。あからさまに不機嫌な顔して」


…あらほんと。
顔に出ちゃってたか。

しかし、今アナタに言われたくないわな。



「そういう大石くんは幸せ一杯って感じだけど」



そう、壁際の席の私の唯一のお隣さんは、大石くんだ。
この席になったときは、今年一年分の運を使い果たしたかと思ったもんだったけどなぁ…
……そうか。使い果たしてたのか。


皮肉が混じっていたことにも気付かずに、
「いやあ…そんな……確かに幸せではあるけど…」とかのろけてる。

ああもう、イヤになっちゃうなあ。



「良かったね。おめでとう」



自然と言葉が口から漏れた。
大石くんも笑って「ありがとう」と返してきた。幸せそうに。


笑顔で言えた自分に感服。

でもね、本当はね、
話題を終わらすにはそれが一番だって思ったからなんだ。






















片想いが終わるのは、成就したときか失恋したとき。
と、この主人公は思っています。
でもね、失恋しても終わらない片想いはある。
そのことには気付いていない。

本当に諦めがつくか次の好きな人ができるまで
心に秘めたままずっと隠し通すんだと思う。人にも、自分にも。
だけど、次の恋が始まったときに初めて
「今までずっと大石のこと好きだったな」って認めるの。


2012/09/16