* がたんごとん がたん *












中学3年。
彼氏と初めて同じクラスになった。


きっと、今まで知らなかったことにいっぱい出会えるんだろな。


授業中居眠りする秀なんて見れたりして!
普段秀はなかなか隙見せないもんな。
クラスメイトの特権よねー!


と、思ってたのに。



国語。

数学。

理科。

社会。

そして英語。



居眠りどころか、手を上げて発言なんかしてやがる…。
(そうだったコイツはそういうやつだった)


あんなに早起きで練習して、
夜も家帰ってから勉強して、
授業中もうとうとすらしないとかあなた超人ですか…。



一緒のクラスは楽しい。けど、いつの間に芽生えた
「居眠りしている秀を見たい」
という目標はなかなか果たせずにいる。



そんな中の、週末デート。


「映画面白かったね!」

「そうだな」


帰りの電車の中、この時間帯ならではの空いた上り電車で肩を寄せて話す。


「…実は途中一瞬うとうとしちゃったんだけどさ」

「そうなのか」


秀は柔らかく笑ってる。
怒ったり、しないんだね。
…しないか。秀だし。

……ふむ。



「秀はさ、授業中眠くなったりしないの?」



聞いてみた。
流れで、のような、強引なような。

秀はこっちを見ながら答える。


「予習で気になったところを理解しようと思ってたら、自然とな。
 もしも眠くなっても、発言するようにすれば目覚めるし」

「そうなんだ〜」


秀が授業中に発言してるのは、そんな理由もあったのか。



そう思うと、見方変わるよなぁ。

全く眠くないわけでは、ないんだ。
そうだよなあ早起きでスポーツして育ち盛りだなんて…。


は?」

「え?」

「日中眠くなるとかあるのか」


そこまで言って、一瞬あくびを噛み殺したような、
口を手で覆ってたからわからなかった。


「ゆったり座っちゃうとねー。だから授業中とか映画とか」


てへ、と頭に手を当てて舌を出した。

すると秀は、笑いながらもアドバイスをくれた。


「もっと緊張感を持てばいいんじゃないか?」

「緊張感かぁ…」

「授業中も、当てられたらどうしようとか思わないのか?」

「うむぅ…」


考えてたら、なんとなく沈黙になった。
秀との沈黙は苦しくないからいいんだけどさ。
私は、携帯に視線を落としてカコカコと無意味に弄った。

秀も何も言ってこなくって、会話がないまま、2駅3駅が過ぎた。
さあて、次の駅で降りなきゃだな、
と携帯を鞄にしまって横を見た、ら。




え。




ガタンゴトン。



ガタンゴトン。





電車が走る音に合わせるかのように、秀の頭が揺れている。
頭が重そうに落ちては起き直り、を、何度も何度も繰り返す。



何これレアすぎる。
どんなにつまらない授業でさえ、凛と背筋を伸ばしてるのに。


普通だったら、怒るのかな、デート中に居眠りされるなんて。
だけど私は、嬉しくって、笑っちゃった。

数少ない、安らげる場所だって思っていいのかな?



駅に着くまであと少し、
起こすのは簡単だけど、このまま、
気付かなかったふりして揺られていくのもいいかもね。






















電車に乗っててふと思いついたネタ。
私は電車乗るとすぐ眠くなっちゃうんだけど。
大石って昼間眠くなったりしないのかなーって。

後日思いついたやつだけどぴったりな詩があるので。
『帰り道/隣りの寝顔に/かたおもい/しびれも切らさず/揺れて駅まで』
おそまつ。(2013/08/31作)


2012/07/14