* 目たちが出会えば言葉はいらない *












大石と付き合い始めて、1ヶ月。
今日は2回目のデート。

彼氏が出来たのが初めてな私は、
早速高校生活が充実しているようでご満悦。

待ち合わせ場所に行けば、大石は必ずいる。


「お待たせ!」

「いや、全然待ってないよ、行こうか」


そうは言うけど、いつから居たんだろうなー。
学校で見てても、大石って時間に遅れることとかなさそうだしな。
今度はもっと早くきて先回りしていみよう…。


そんなことを考えながら歩き始めて数歩、大石は足を止めると振り返った。


「ん」

「?」


…なんだ?
大石は少し腕を広げたけれど。

理解できない私にため息をついて、大石は自分から言ってきた。


「…手だよ」

「ああ!」


そんな、ムードもへったくれもない感じで私は手を取った。
でも、改めて考え直して、嬉しいなあ、なんて。


手を繋いで歩く。
まだ手を繋いだことは数回しかない。
なんだか当然のごとく手を取られたのが、嬉しくって…。


あれ?

ふと、気付いてしまった。


もしかして、前の彼女とはこれが当たり前だったんじゃない?



ん、なんて手を出したら、
はいって握り返すのが普通で。
だから、対応できなかった私を見て
少し呆れたような声を出して。



「…大石ってさぁ」

「うん」

「前に付き合ったこと、あるでしょ」



質問というよりは、断定するように問いただした。
その言い方のお陰かはわからないけど、
大石は否定も言い訳もせずに「ああ」とだけ言い放った。

やっぱり、か。


そっかぁ。
私がマヌケだから気付けなかったのかなって思ったけど、
大石が当たり前と思ってたことが実は
彼女との約束事のようなものだったってことなんだよ。


心の中に、黒いものが渦巻くのを感じた。

別に他の人と付き合ったことがあるのが許せないとか、
その人に嫉妬するとか、
そういうわけではないんだけど。

そういうわけじゃないんだけど、
、、、なんか嫌だ。


あれ?
私、勝手に大石は誰とも付き合ったことないつもりでいたのか。
それ、かなり失礼だな。うん。

んーー…なんだろ。
なんでかわからないけど、すごくショック。



だけど、それはもう変えられないこと。
そして、それを知ったところで私の大石への気持ちは変わらない。

だとすると…受け止めるしかない。
そして、乗り越えていかなきゃ。


「…大石、手離して」

「え?」

「いいから」


言われた通り大石は手を離してきて、
一瞬目配せをして、思いっきり腕に巻きついてやった。


少し驚いた風にこっちを見てきたのが分かったけど、
私は敢えて顔を見ないで、進むほうをまっすぐ見てた。

顔が少し熱いのが分かる。
ファンデーションで隠せてるかな?
だけど、そのうちこれも普通になる。
ドキドキできるのもきっと今のうち。


向こうの反応を察するに、
きっと手を繋ぐことはあっても腕を組むことはあんまりなかったのかな?
奇襲作戦は成功だ。
次は、「ん」なんて言われたら、こっちから腕に絡み付いてやる!


これからはさ、私たちの常識を、新しく作っていこうよ。
いつの間にか、何の合図もなくっても、
歩き始めたら手を繋ぐのが当たり前ってなってるみたいにさ。























「元カレがいる主人公」ネタは多いけれど
「元カノがいる大石」ネタは少ないなと思いまして!

だけど、実は大石付き合うの初めてなのに、強がってカッコつけてて、
「いたんでしょ」と断定的に言われて後に引けずに
見栄を張っちゃったんじゃ、と書いてて最後の方思った。(笑)
ああこれだから小説って面白いw
意図して書いてたのと違う方向にキャラが生きていくw

タイトル、目たち=Eyes=合図、ねw


2012/05/08