* 私が知らない初めてに君が挑む *
「、俺今度の休み家族で海外に行ってくるから」
……ほぅ。
「海外って、どこ?」
「台湾」
「えーいいな私ヨーロッパ色々行ったけどアジアって経験乏しいんだよね」
充分だろ、と頭をポンポンと叩かれた。
まあ確かに、少ないってだけで行ったことあるし…
てかヨーロッパ数々回ってきたってだけで贅沢よね…。
「えーでも台湾かー。いいないいなー!私も連れてってー!」
「無茶いうなよ」
そう言ってシュウは笑った。
まあ、さすがに私も本気でついてこうなんて思ってないけど。
「そっかぁ。ま、いいや。シュウがいない間の日本は任せてね!」
「任せるって何をだよ」
あはは、なんて笑い合ったけど、
そう発言してから、ふと考えて気付いたことがあった。
もしかして、私はシュウがいない日本にいるのは初めてなんじゃないだろうか。
前に海外旅行に行った話を聞かせてもらったことはあったけど、
それは私がドイツにいる期間の話だったし。
その前は?私たちが出会う前はどうだろう?
「シュウって、初めて海外行ったのいつ」
「えーっと、高3の頃だったかな、家族とロサンゼルスに行ったよ」
…ああ。そのときのだ。
それ以降は海外行った話なんて聞かないから、
つまり、私がシュウのいない日本にいることになるのは…初めてだ。
「なんかなー…」
「どうした?」
「淋しいなー」
「何言ってんだ、たった数日だろ」
私たちが離れていた期間に比べたら、どんだけ些細よと。
そう言いたいように、シュウは笑う。
そっか。シュウは、こんな思いだったんだ。
送り出す側って、意外と送り出される側より淋しかったりする。
そう気付いたのは毎年の卒業式。
先輩がいなくなっちゃうのは悲しいのに、
自分が出て行くときは、泣いてる後輩見て笑ったりして。
淋しい切ない気持ちもあるけれど、それも素敵な思い出だから。
それを抱えて次の世界に向かっていけるから。
相手が行くときは、自分はそのままに、
向こうだけが遠くなってしまうようで……。
「シュウ、遠距離淋しかった?」
「え?ああ、うん」
予想していなかった質問だったのか、
シュウは一瞬戸惑った風な表情を見せたけど、頷いた。
誘導した感もあるけど、嘘じゃないと信じる。
「なんか、今ならわかるなー……」
首を傾げながらシュウを見上げる。
シュウは困った風にして、
「お土産一杯買ってくるな」
といって私の頭を撫でた。
たぶん、シュウはわかってないんだろなって思った。
でも私はさっき気付いてしまった。
遠距離恋愛の間、私たちは同じように淋しいと思ってたけど、
きっと、私は色々なものから離れたから淋しかったけど、
お互いが、お互いがいないことに対して感じた淋しさを比べたら、
日本に残ったシュウの方が淋しい思いをしてたはずだよ。
あと、もう一個。
「いいなー台湾ー…」
「まだ言うのか?」
私の知らない場所に、シュウが行くのが悔しいんだな。笑
なんだよなー、お互い初めてで一緒に行ってみたかったなー。なんてー。
でも、良い子に待ってることにしよう。
事故とスリと詐欺には気をつけなね!
「いってらっしゃい」
心の中にもこもこしたものを残しながら、
なるたけの笑顔で「お土産期待してるね」って笑った。
淋しい以上に悔しいんじゃないかななんてねw
私がアナタの初めてになりたかったのに、的独占欲の話。
最近の私の作品は現実込みというか比喩が多いなぁと。
大石は頭をぽんぽんしたりなでなでするという技を体得したようですww
これいつ頃だろー。
主人公が大学2年生のGWくらいかなぁ?適当。
2012/05/08