* ツークリックダイヤル *
ショートカットでダイヤルできる機能からは、外した。
だけどリダイアルの履歴にずっと残ってるもんだから、
私にとっては君はまだまだ電話が掛けやすい相手。
「聞いてよ秀一郎!」
「……」
電話越しでは見えないけれど、
秀一郎の呆れた顔が見える気がする。
「、あのさ…」
「いいから黙って聞いて!ていうか何!?
英二っていつもああなの?女々しすぎない!?!?」
私がまくし立てると、間を空けて、
ふうとため息をついたのが聞こえた。
だけどなんだかんだ「何があったんだ」って聞いてくれる。
いいやつなんだー秀一郎は。
「うちらさ、もうなんもないじゃん」
「…うん」
「それはうちらお互いでそう認識してるし、
英二だってわかって付き合い始めたはずじゃん!」
「…って言ってたよな」
「なのにさ、『未だに本当になんもないのー!?』とか
『さっき大石と喋ってたの何ー?』とかイチイチ聞いてくるし!!」
あーもう。イラっとくるなぁ!
英二のことは、好き。
一緒にいて楽しいし、笑った顔も真面目な顔も好き。
テニスしてる姿はカッコイイし、
ふざけ合って笑ってるときは可愛いなって思うし。
だけど…
ありえないほどやきもいやきなところだけはついていけない!!
「それだけのことが好きなんだろ」
「何それやきもちやかない私は愛が足りてないみたいな言い方」
そんなこと言ってないだろう、と秀一郎は少し怒った。
滅多に怒らない、っていうか、
数少ない怒る対象なんだろな、私が。
「…なあ、」
「何さ」
「もう、電話してくるのやめろ」
「!」
いつかは、そう言われるような気もしていた。
だけどいざ言われると結構イヤなもんだ。
「…どうして」
「わかってるだろう、こんなことしても英二のやきもち煽るだけだ」
「……」
わかっ、てた。
どこかでは。
気付かないふりして、心のどっかで感じてた。
「…友達としてでも、ダメ?」
「ダメだ」
…そっか。
まあ、そうだよね。
元カレが今カレの親友って状況に甘えてたかも。
甘えてたけど、普通に考えたらこれほど気まずい状態もないのかな。
それでなんとかなってる気がしてたから甘えたんだけど、
英二は、やきもちやいて、
秀一郎も、もう電話してくるなと言って。
…実際はなんとかなってなかったのか。
「でもさー、電話しなくなったからって、英二のやきもちやき直るかなー」
なんとなく渋る私に気付いたのか、
秀一郎はだいぶ間を空けて。
「じゃあ、俺はまだお前のこと忘れてないって言ったら?」
……え。
正気?
いやいや。
「…たとえ話でしょ」
「さあな」
……なるほど、うまいな。
これじゃあ私は、もう君に電話なんて出来ない。
「わかったよ。もう掛けない」
「ああ、そうした方がいい」
「廊下ですれ違ったら挨拶くらいしてね」
「わかったよ」
秀一郎は軽く笑って、
その瞬間ふと、どうして別れちゃったんだろうなーって考えた。
だけど悩んで決めたことだから、
悩んだそのときの気持ちを大切にしよう、と思って、
電話を切ったら、次はショートカットからダイヤルをしようって決めた。
昔付き合ってた二人って設定で。
なんで別れちゃったんでしょうねー。
きっとマンネリ化してたところで
英二と仲良くなっちゃって、
もううちら恋人同士って感じじゃないよねー
ああそれに英二はいいやつだ俺からも勧めるよ
みたいな感じで別れたんだろねー。と予想。
だから、大石が暫く引きずってたのは間違いないんだ
今はもう見限ったみたいなところがありつつもw
2012/04/29