* 待ち合わせ時の過ごし方 *












今日は晴れた土曜日。
お昼前。
シフォンスカートを穿いた私は…全力疾走。


「ごめん、おまたせ!」

「いいのに、走らなくて」


だってー!

時計を見ると、待ち合わせ時刻の1分過ぎ。
ハァ……息切れ。


「ごめんねいつも…」

「それより、お腹減っただろ?何食べよう」


そう言って、えーっとなんて進む方向に迷ってる。

…優しい。
秀は優しすぎる。
もちろんそれは私にとっては嬉しいことなのだけれど、
それ以上に申し訳ない。

それに…こんな甘やかされ続けたら
私はダメ女になってしまうー!!(喝ッ)


、何食べたい?」

「……スパゲティ」

「スパゲティな」


目的地を決めたのかサッと秀は歩き出して、
でもふと足を止めると、振り返って、
私の手を取ってまた歩き出す。


……。

ダメなんだってこれじゃー!!!(叫)


いやいいんだけど!
寧ろ最高なんだけど!!
でもこれじゃあダメ女真っ盛りだよ!!!


「…秀ってさ」

「うん」

「……優しいよね」

「どうしたんだ突然」


ははは、なんて柔らかく笑う。
その表情が既に優しくて、
どうしたらこんな素敵な子に育つのさ…。


「秀ってさ」

「うん」

「いつも何時くらいに来てるの?」


ちょっと睨み気味に見上げながら聞く。
秀は、ちょっとだけ、参ったなぁみたいな顔をしながら
「30分前くらいかな…」と言った。


「いつもそれくらい?」

「ん?いや…たまにもうちょっと早いときも、あるかな…」


……ふむ。
この言い方は…。

遅くても30分前にはついてる、
基本的にはそれ以上早くから来てる、てとこか…。

なるべく私が気にしないように短く見積もってるっぽいけど。
(それでも早い!早いんだよ秀一郎さん!!)



「どうして?心配性?」


と聞くと、
んー?と目線を上に持ち上げて。



「確かに心配性なのはあるけど」



秀は、やわらかく笑った。



「人を待つっていう時間が好きだから、苦ではないんだよ」



…だってさ。




「道行く人を見て、あの人たちはどこへ行くのかなとか」



「どんな服着てくるのかなとか」



「今日はどんな一日になるのか想像してみたりさ」




……ああ。

この人は本当に…

本心で人を待つのが好きなんだな。



きっと秀にとって、早く行くことは苦じゃないんだ。
相手のためとか自分のためとか差し置いて、
ゆっくりとした時間を過ごすのが、好きなんだ。



「あとは…」

「え?」



秀はちょっと口ごもって、視線を逸らした。


「…なんでもない」

「えー!そういうのなし!そこまで言ったら言おう!」


私が煽ると、だよな、と秀は苦笑いして。




が走ってやってくるときの顔、好きなんだよな、俺」



そう言って、照れ笑いを、した。



逆に俺が遅れてくる立場だったら、どんな顔していいのかわからないよ
なんて言って秀は声を出して笑った。


…あれ。
私、今のままでもいいのかな?



「…ってそれじゃあダメー!!」

「え?どうしてだ?」

「甘やかされすぎて私ダメ女になっちゃうよー!!」



空いてる方の手で、秀の肩をぽかぽか叩いた。
だけど秀は、ハハハ、なーんて笑ってて、
このままじゃあダメだ、自分でなんとかしないと!と思った。


たまには、私が1時間前から待ってみようか。
焦りながら走り寄る君に会えるかな?

まあせめて、待ち合わせ時刻には間に合うようにならないと。
たまには歩いて到着して、したり顔で「お待たせ」なーんてね!


なんだか今から、次の待ち合わせが楽しみ。

だけどそれよりも、会ってる今の時間を大切に!






















仮ファイル名『遅れてこない秀。』(笑)
なんなんですかね、暇なんですかね。(暴言)

甘やかされてるという自覚があるうちは大丈夫よね。
それに甘えるようになっちゃダメよね。てこと。

割とこの大石理想だな…。
優しくて柔らかくてプチ心配性で照れ屋で、
…Sが垣間見える(←最重要)(笑)

書き上がってたのに変なとこに保存してたせいでアップ遅れた。


2012/04/28