* have been fightin' for a decade *












「おー」

「ん?」

「大学ん時のダチが結婚すって」


桃城は2つ折りのハガキをピラピラと振った。


「アレ?でもアイツ在学中付き合ってるやついたか?いなかったぞ?
 てことは卒業してから、ひぃふぅ…」


指折り数える桃城。
海堂はフシュウと息を吐いた。



「…普通だろ2、3年の交際で入籍なんて」

「まさかデキ婚じゃねーよな…」


桃城はハガキを隅々まで見渡して何かわかることはないかと眉間に皺を寄せる。
また、海堂は深い息を吐いた。

言わせておこう、とその場を離れようとすると

「なぁ」

と後ろから声がかかった。
あぁ?と振り返ると。



「じゃあよ、10年連れ添ってて結婚してないのどう思う」


「……何が言いてぇ」



わかってるクセに、と海堂の腰に腕を回す桃城。
振りほどこうとしたが、それ以上に桃城の力が強かったので抗うのをやめた。



「懐かしいなぁ、10年か」

「……」



背中に体温を感じながら、海堂は振り返る。
この10年間に起こった出来事の数々を。
それは、桃城も同じだった。




「お前、全然素直じゃなくてさぁ」

「ケッ!」




「ケンカばっかだったしさ」

「今もだろ」




「そういえば、越前と仲良かったの妬いてたっけな」

「アレは!………てめぇだって、俺と乾センパイが親しかったの勝手に誤解してただろ」

「そーだっけ?」




ニヤニヤと笑う桃城。
その表情は、海堂からは見えていなかったが、
自分の赤い顔が見られなくて、海堂にとっても好都合であったかもしれない。

すると腕に力を強めた桃城は、少し声色を変えた。



「でもさ、チャンスだと思ったんだよ」

「なんで」

「俺にも可能性あると思ったから」



だって、まさか同性相手に。


そんな気持ちを抱くことも、
相手が同様な気持ちであったことも。

未だに、こうしている事実も。

そんな頃は、想像しようとすらしなかった。



「だって薫ちゃん可愛いんだもん」

「ウゼェ。薫ちゃんって呼ぶな可愛いって言うな離れろ」



肘鉄を食らわされ、いててと頭を撫でながら桃城はようやく腕を解放した。



「俺は元々さ、おっぱいボイーンなネエチャンとかが好きでさ、
 ……なのになんでこうなったんだろな」

「……知るか」



そんなこと、こっちが聞きたい。
そんな気持ちで海堂は視線を逸らした。


必然?

運命だなんて言葉で片付くのだろうか。


きっと、お互い惹かれあっていたのだろう。



10年間。

ケンカもしたし、ケンカもしたし、あとケンカもしたし。
振り返って見てもそれしか思い当たらない。


だがそれは、それだけそばに居たということなのだろう。

それでもそばに居続けた結果なのだろう。




「なー…かいどぉー」

「あ?」

「…結婚しようぜ」

「バカか!!」




また、ケンカ。

思えば、昔も今も、それだけは変わらない。


初めて会った時。
ライバルとして張り合った頃。
距離を置いていた間も。
そして、付き合い出して今までも、ずっと。



「結婚すんのはさ、難しいかもしんないけど」

「………」

「これからも、一緒にいようぜ」



屈託のない笑顔。

どうして、10年間も一緒にいられたか、
それはコイツのお陰なのだろう、と海堂は不本意ながら気付いた。



「…好きにしろ」

「了解」




自分は、素直になれないけど。
そんな自分を好きでいてくれるというなら、
このままでいてもいいのだろうか、と。





いつまで続くのだろう、という疑問がないわけではない。

でも、少なくともこの想いがある限りそばに居てもいいのだろう。


これからもよろしく。

言葉には出さないけれど、お互い心の中でそう呟いていた。






















付き合ってる桃海をまともに書いたの初だぜ!
しかも24歳くらい。影響受けすぎやで。
あ、かまいたちさんサイト10周年記念作なんですがね。

前はリョ桃だったり乾海だったり、
桃海はライバル以上恋人未満だから付き合うとか想像つかなかったり、
色々経て最近は「桃海結婚しろよ」ということで(笑)
思わず「させろよ」と返したけど私にはできませんでした(^p^)

何はともあれ10周年OME!うちももうすぐかー。


2012/03/24