* 君と、夏と、夢と *
〜あの頃思い描いた未来〜
「久しぶり」
カッと革靴の音をさせて後ろから現れた人物を見、
私は咄嗟に感嘆の声をあげた。
「秀一郎…!」
相変わらず背は高くて、肩幅は広いけど少し細身。
表情は、前より大人びたかな。
「お勤めの帰り?噂で聞いたよお医者さんになったって」
「ああ。土日が休みにできないのが辛いかな。寧ろ今日来られたのは偶然だよ」
「そっか」
あの日から10年後の8月、第3土曜日。
青春学園中等部3年2組のメンバーは、数年ぶりに集まっている。
「前回の同窓会、いたっけ?5周年のとき」
「いや、いないよ」
「そっか。随分久しぶりだと思ったから」
秀一郎に会うのは、いつぶりだろう。
そう、それこそ、きっと…。
「9年ぶり、かな」
「…そうだね」
9年。
その、数字。
私と秀一郎が別れてからの年月を示していた。
私はそのまま青学の高等部に進学したけれど、
秀一郎は医大附属の高校を受験した。
1年ほどは続いた交際だったけれど、
次第に距離ができ、溝ができ、
最終的には別れるに至った。
なんて、学校が違うせいじゃないかな。
あの頃の一年は、今感じるものに比べて、遥かに、長かった。
「は最近どうしてる?」
「ああ、私は…」
答え始めてから、はっとした。
秀一郎が私を名字で呼んだこと。
付き合い始めて、私が「名前で呼んで」って言って以来、
その呼び方をされたことはなかった。
でも今そうしたのは、わざとだったのかな。
無意識だったのかな。
だとしたら、すごいや。
「今はOLだけど…実はね、私、来月寿退社するんだ」
「え、本当か?おめでとう」
にこりと微笑んだ。
その笑顔には、なんのくすみもなく見えた。
少なくとも、私には。
――そっちは、どうなの?
喉まで出かかった言葉を飲み込む。
別に、どっちであっても構わないんだけど。
聞いても聞かなくてもいい、
むしろどっちにしろ不自然な気もして、
迷っていたら向こうから口を開いた。
「俺は今誰かと付き合う余裕とかないかな」
「そっか。忙しいね」
今のは…。
言いたくて言ったのか、
私の思考を読んだのか。
……ああ。
この人は、私にとって…
特別な人、と言ったら言い過ぎかもしれない。
けど、どこかでやっぱり、他とは違う、人。
「結婚式、いちおう呼ぶね。住所、変わってないよね」
「ありがとう。たぶん、行けないと思うけど」
そのとき、きっと来ないな、とわかった。
時間があれば来てくれるんだろう、とも思ったけど。
何を喋ろうか、迷っていたら。
「あっ、じゃん!」
「大石くんも〜!」
懐かしい、元クラスメイトたちが現れて、二人の時間は終わった。
なんだか、10年越しに気持ちを確認したような気になった。
あの頃の、何も知らなかった私たちの。
ZONE『secret base〜君がくれたもの〜』の
“10年後の8月”が今年のことだと知って。
最近こういう元カレ元カノネタ好き笑
私が年を取りすぎたかなw中学同級生ネタが苦しいっていうかwww
そして私は大石好き歴9年突破したわけだがwwwww
なんて呼べばいいかわからなかったり。
やきもちってわけじゃないけど相手の身の上が気になったり。
もう、その頃のような感情はないけど、どこかでご贔屓にしたい人。
…みたいなね。納得のいく別れ方をしたか、
時間をおかないと難しいのかもしれないけど。
大石は将来お医者さん説を貫いたぜっ!
2011/04/26