* つれないね *











「周助、ごめんっ!埋め合わせさせて」

「どうしたの、突然」


いつも通りやわらかく笑う周助。
それが、なんだか余計に切ない。


「明後日、周助の誕生日でしょ」

「うん、そうだね。何か予定でも入った?」

「う、その通りデス…」


お察しの通りで…。
周助はこういうところで勘が良いのが、
ありがたいときも多いけれど、申し訳ないときもあり。


せっかく、4年ぶりの本当の誕生日なのにな…。

前回の閏年、私たちはまだ付き合いたてで、
二人で過ごすのもなんだか気恥ずかしくって、
他の友達も交えてみんなでわいわいお祝いしたんだったな。

あれから、4年。
私たちももう、すっかり大人になった。
精神的にはどうとか、分からないけど。
少なくとも世間の扱いからは、もう、大人。

明後日で周助も、成人だ。


そんな大事な日なのに、仕事が入っちゃうなんて!
でもお得意様との相手とのお食事なんて、断れないよね…トホ。

今更ながら、高卒で就職したことを後悔する。
私も周助と一緒に大学に進めば良かったかな…
なんてこんな理由で言い出すのも理不尽だけれど。


まあ…4年に一回とか言うけれど、実際は毎年年はとってるんだよね。
ただカレンダー上には現れないだけで。

たぶん、周助は閏年とかそこまで気にしてなくて…
日付とかに拘ってるのは自分だけなんだろうな。
2月28日も、29日も、3月1日も、
扱いとしてはそんなに変わんないんだろうな。


私の中では大きなことなのだけれど、
周助がそれほど気にしないようだったら、
今年もいつもの誕生日。
…されど誕生日。一年に一回だけれど。

まあそれでも仕方がないものは仕方がない!


「だから、ごめんね?あ、3月1日は土曜日だしさ、
 いつもみたいにその日に二人でお祝いしよっか」

「それも、いいかもね」


言葉に、陰が見えた。
…ような気がした。

でも周助のことだしいつも通りだと思った。


私は「じゃね」とその場を去ろうとして背を向けた。
一歩目を踏み出したそのとき、周助は


「つれないね」


と言った。


私は立ち止まって振り返る。



「僕は結構、楽しみにしてんたんだけどな」



…え?



「自分の誕生日」



そこには、ほんの少し憂いの表情を浮かべた、
だけどやっぱり笑顔の、周助が居て。

ふっと、気付いた。


そうか。私だけじゃなかった。



少し涙が浮かんだ。



「メールするから」

「それだけ?」


「電話もする」

「それから?」


「……もぉーあんま無茶言わないで」

「冗談」


くすくす、と周助は笑った。
まったく…。




4年前から、心配してたんだ。
「次の誕生日は、一緒に居られるかな」って。

周助が「何言ってるの」ってあまりに軽く言うもんで、
そっか、来年の今頃のことを言ってるんだなと思って、
「そうだよね、これからも一緒だよね」って返してた。

今気付いた。
軽視していたのは、私の方だったんだ。



「次の誕生日は、一緒にお祝いしようね」



私がそういったら、周助は


「もちろんだよ」


と言った。



次の誕生日って、何歳?


周助、分かってて言ってんのかな。




周助のことだから、分かってるんだろうな。


もう。





「それじゃあ、行ってきます」


「行ってらっしゃい」




大好きだよ、は、そうだな、


誕生日当日まで残しておこっかな。






















お絵日にお絵描きして、コメントつけてたら
小説形式になっちゃったのでそのまま作品にしちゃったもの。
ようするに不二に「つれないね」って言わせたかっただけの作品w

書き始めたの今年の閏日の2日前だったんだが
書きあがるのこんなに遅くなっちゃったw
言いたいことは『first but not least』とか『あた会おうね』の
あとがきを見ていただければと。(笑)

まあこの主人公根性ありそうだしな。
29日の23時58分くらいに汗だくで家に飛び込んできて
周助くんをびっくりさせてやればいいだろう。


2008/07/26