* 100分の1秒の奇跡 *












カシャリ。


機械音に顔を上げる。



「うーん、やっぱりイマイチ」。

そういって微笑する周助が居た。



「何、写メ撮ったの?」

「うん、でも保存しなかった」

「あっそ」


私は携帯を覗き込もうとしていたのを、
また元の体制に戻った。


「やっぱり普段専門的なカメラ使ってる周助にとっては、
 携帯の写メなんかダメダメって感じ?」

「それほど専門的ってわけじゃないけどね」


私から見れば、充分専門的ですー。
そう言うと、周助は笑った。


「でもそういうわけじゃないんだよ、

「へ?何が?」


私はマヌケな顔を出す。
周助は携帯を下ろすとカメラを手に取り、語り始める。


「写真を撮るたびに思うよ」


かちかちと、なにやら弄りながら。



「いくらキレイに写し取ったところで、
 目の前に存在している現物には勝てない」



カメラから目を離して、

私に向けて。



「なんだかんだいって、いま目に見えているものが一番美しいんだ…って」




―――――――……。



深い目に

見透かされそうになる。




でも直後に目を細めて、
いつものようににこりと笑う。


「それをどれだけ表現できるかっていうのが
 楽しみの一つでもあるんだけどね」


そう言ったときの周助の表情は、やわらかかった。



少しだけ、100分の1秒の奇跡、を、信じてみたくなった。



「ほら、



そう言って周助は、私に向けてカメラを構える。


それを受けて私は咄嗟に作り笑顔をした。

でも周助はシャッターを切ることはなく、
カメラを下ろすと、
親指と人差し指で長方形を作った。



カシャリ。

周助が、口でそう言った。


一瞬あっけにとられたけれど、

少し遅れて、私は満面の笑みになった。



「いい表情」



そう言って、周助はまた、やわらかく笑った。



そのとき、思った。

写真って、そのものを残すためのものじゃない。
いくら近づけても、写真は、そのもの自体にはなれないから。


残すのは、思い出。

その時の状況、感情、空気。


想い。



あとから思い出として、笑顔で振り返れるように。



それはきっと、100分の1秒の、奇跡。






















シャッタースピードとかよくわかんないけど
まあそんぐらいかなーと思って。(適当)

初め考えてたのと違う作品になった。
書き始めたの記憶にないくらい昔。(笑)
日記作品の『春風と笑顔』と丸被りしてて。
(「笑って」っていうセリフとか。)
だから頑張って弄りましたとさ。イェイ。

『その一瞬にKiss』と同じ設定ってことでいいかなー。


2007/03/01