* Rival easy YO! Homo me MAN! *











「おー越前メリクリ〜!」

「………」


朝、門を開けると一番に目があったその人は、
大きな声で手を振りながら挨拶をした。桃先輩だ。

靴をこんこんと履くと、
「クリスマスは明日っスよ」
と言いながらいつも通りに自転車の後ろに乗る。


「まあ細かいことは気にすんなよ。
 どっちかってぇとイブの方がイベント性あるじゃん?」


そう言いながら桃先輩はペダルを漕ぎ始めた。


「そうっスよね。イブは恋人たちの夜だし。
 海堂先輩とヤっちゃうの?」

「なーに言ってんだよ越前、オレたちゃまだそんな」



 ・ 



「……ほら、その…あれだ」←汗だく

「まだ…なんスか?(ニヤニヤ)」

「いや、いやいや!まだとかじゃなくて!
 …コラ!何突然言い出すんだ越前のくせに!!」


話の逸らし方がわざとらしい。
あーあ、墓穴。痛。
この先輩知能指数低すぎ。(絶対かしこさ30くらいだ)



でも……へぇ。

まだヤってなかったんだ。

というよりか、“まだ”っていう言い方が、
今後が保障されてるみたいで……。


「で、どっちから告ったの?」

「そりゃもちろんオレオレ…って、
 なんでお前オレたちが付き合ってるって知ってるんだ!?」

「(やっぱかしこさ30…)」


うわ。マジで付き合ってるらしいこの二人。
確かに最近怪しいと思ってたよ。

前は“ライバル以上友達未満”なんて言われてたこの二人だけど、
最近あんまりライバルっぽい感じが見えない。

なんていうか、少女漫画?
肩がどんとぶつかってキュンvとまではいかないけど、
肩がどんとぶつかってあぁん?と睨み合って
顔が近すぎて赤面、みたいな。



「じゃあよぉ、お前もしかして…」

「ん?」


「告ったのは朝練前の部室だったとか、
 体育の授業こっそり抜け出してキスしてたとか、
 この前初めて舌まで突っ込んだとか、

 そういうのも全部知ってるのか!?!?」


「( う わ 。 )(白目)(ドン引き)え、知られてないとでも思ってた?」

「ぐあぁぁっ!!」


…マジだ。
どうやらこの先輩マジらしい。


「(かしこさ…19かな)」


うん、納得。



「あのよぅ、越前…」

「ん、知ってるのオレだけだから。誰にも言わないし」

「お前…良いヤツだなっ!!」


……そう思うなら、そう思ってればいいよね。


「そういえば、今日の部活って午前中だけだよね」

「ん?それがどうしたんだ?」


……。

いいこと思いついた、かも。




たった今、今日のオレの目標が決定した。

『桃先輩と海堂先輩を情事に至らせる』←笑。



…よし。それでいこう。

楽しい一日になりそうな気がしてきた。






  **






「越前、俺のデータによると、今日はお前の誕生日だな」


部室に入るなり、
ノートを広げ眼鏡を吊り上げていた乾先輩に言われた。

そう。本日クリスマスイブの日は、オレの誕生日だ。


「…っス」

「え、そうだったのか越前!言ってくれりゃあいいのに」


おめでとうな、とか桃先輩に適当っぽい声を掛けられた。
本当ガサツっていうかデリカシーないよね、この先輩。




着替えていたら、部室の扉が開いた。
それは、もう既に着替えている人物…
…海堂先輩だ。自主トレから帰ってきたみたいだ。


バンダナを外した海堂先輩は、
タオルでごしごしと顔を拭いて水を飲むと、
ラケットとジャージを掴むんで部室を出て行こうとした。

そこに、乾先輩が声を掛ける。
なんか乾先輩って、結構海堂先輩のこと気に入ってるっぽい。


なんだよ。
この部、ホモばっかじゃん。

いや、確定してるわけでもないけど。


「海堂、今日は越前の誕生日らしい。
 なにか祝いの言葉でもかけてやったらどうだ」


その言葉を受けて、海堂先輩はこっちを見た。

目が合う。
…気まずい。

なんでって、海堂先輩が口ベタだから。
このままで居たってまともな言葉がくるとは思えない。
でも「別にいいっスよそんなの」と言って交わしてしまえば簡単。
だけど……。

ニヤリ。
面白いことが浮かんだ。


「えっと……」

「いいっスよ、言葉なんて」

「ん?」


口ごもっている海堂先輩を、下から見上げる。

見てろ、先輩ども。



「言葉は要らないから…海堂先輩が欲しい」

「!?」


「「!?!?!?」」



目の前の人も。
横の人も。
多分後ろの人も。

え、にゃににゃににゃに!?って辺りを見回してる菊丸先輩とか、
へぇ…とか言ってる不二先輩を除いて、

みんな固まってる。


まーだまだだね。



「だから部活終わったら、オレんち来てくださいよ」

「待て、何故オレが…!」

「誕生日プレゼント」

「〜〜〜!!」


さてと、着替え終わったし。


「じゃ、お先っス」

「待て越前!!」


部室を出て行こうとすると、
後ろからすごい声で叫ばれた。

桃先輩だ。


「オレ、さっき“誰にも言わない”って言いましたよね?」



 1.邪魔はしないとは言ってない
 2.下手なことするとバラすよ


さあ、どっちでも良いから、読み取れかしこさ19。



「おいてめぇ海堂に変なことしたら承知しねーぞ!?」

「(バカ……)」


これじゃあ、オレが黙ってなくてもバレるよ。

っていうかオレでさえ元々気付いてたくらいだから…
不二先輩とか、乾先輩とかはきっと気付いてる。
天然な部長や菊丸先輩はいいとして、
大石先輩なんかも気付くのは時間の問題だろう。

海堂先輩かわいそっ。
ちょっと、いい気味だけど。


「どうして海堂が変なことされたら桃が困るの〜?」

「え?いや、その…アイツを倒すのはオレが一番ってことっス!!」

「ふーん、押し倒すんだ」

「あーもう不二先輩茶化さないで下さいよ!!」

「え、押し倒す!?にゃににゃににゃに!?」

「(データ…!)」





 「何をしている、準備が遅い!!!!」





……“空気読めない部長”(※一単語)のお陰で場は収まった。






  **





「越前、さっきのどういうつもりだよ」

「―――」


桃先輩だ。


「そのまんまの意味っス」

「だから、それはどういう…」


無視。


「今は練習に集中した方がいいんじゃないっスか」

「あっおい逃げんのか!?」

「桃城、サボるな!グラウンド20周!」

「いぃ〜っ!?」



「だーから言ったのに…」

「越前」

「ん?」


入れ替わりで、海堂先輩が来た。


「その、お前…」

「ああ、安心してください。手は出しませんから」

「ぬっ?」


相変わらずの反応。
ああ面白い。


面白いよねこの人たち。
桃先輩って純も純で単純、
海堂先輩は純も純の純粋。


…ピーン。

閃いた。


ヤバイ。
楽しくなってきた。
オレは地味に心拍数が上がった。


「桃先輩が、たまには海堂先輩の方から迫ってほしいって言ってましたよ」

「……本当にアイツがそう言ってたのか?」


おっ。
さすが海堂先輩。
桃先輩とは違う。

そうだ。海堂先輩は純は純でも単純じゃなくて純粋の方だった。


「どうだろね」

「……。そもそも、お前勘違いしてるみたいだが俺たちは…」

「うん、知ってる。ただの“ライバル”だもんね。…だから」


ずいと顔を近づける。
届かないけど、それでも。


「オレにもチャンスはあるってことっスよね」

「!?」

「オレ誕生日だし、言うこと聞いてもらいますよ」


硬直してる。
最高。



「ほら海堂先輩、ぼーっとしてると走らされますよ」

「……(顔面蒼白)」



これだから、純は面白いや。





  **





なんだかんだで部活も終了。
さーて、これからどうしよっかなー…。

まあ結構楽しんだし、
最後は桃先輩の単純さと海堂先輩の純粋さを利用して
上手く挑発しながら誘導すれば、
今夜二人はクリスマスイブにめでたしめでたし…ってことだ。


オレの作戦はこんな感じ。

オレが海堂先輩に迫る。
キスの一つでもすれば、純粋な海堂先輩は
自分が穢れたとでも思うはず。

明らかに態度がおかしい海堂先輩、
桃先輩でもさすがに変に思うはず。
「穢された」とでも言ってしまえばいい。

単純王桃先輩は、「じゃあオレが癒してやる!」
とかわけわかんないこと言い出して、
そんで押し倒しちゃうんだよ。作戦成功じゃん。


え?オレ妄想癖ある?

大丈夫。乾先輩には負ける。(きっぱり)


向こうから勝手な動きを取らない限り、
作戦は上手く行くと思う。
だって、純と純だし。先は読める。

そう、オレが動く前に向こうが動き出さない限り…。


「越前!」


ドン。

桃城武が現れた▽


ちょっと。
今勝手な行動を取るのはやめてよ。
アンタのためにやってんだから。
(…いや、自分の楽しみのためだけど)


「どうしたんスか、桃先輩」

「オレ…気付かなかったんだ。ごめんな」

「……は?」


拳を握りながら、桃先輩は熱く語る。


「お前…海堂のこと好きだったんだな。
 オレ、あんなに近くに居たのに…気付かなくて」

「ちょっと待ってよ(オレ、ホモじゃないし)」


止めようとしても、桃先輩は止まらない。
っていうかこの人、声デカ……!!


「でも、こればっかりはオレも譲れねんだ!!
 オレは海堂のことが誰よりも大切で、
 告ってOKもらえたときはそれはもう天に昇るぐらい嬉しかったし!
 そりゃあ男同士だし世間的に見たらどうかわからねぇよ!
 でもオレたちはそんなのどうってことないぐらい
 お互いのこと信頼してるっつうか、その…愛し合ってるっつうか、
 つまりオレには海堂しか居ねえんだ!一番大切なんだ!
 いくらお前にでもこれだけは譲れねえ!!!」


爆弾投下。
大爆音が部全体に響き渡った。



「え、うそうそ桃と海堂ってそんな関係!?」

「マジかよ桃」

「えー桃ちゃん先輩が海堂先輩とっ!?」

「ライバルじゃなかったんだあの二人…」

「え、マジ?ホモ??」


あーあ。
気付いてない人たちも、さすがに気付いちゃった。



「ちょ、ちょっと待て!
 オレと海堂は確かに…その、アレだけど、
 まだヤっちゃったこととかはないし…!!」

「も〜も〜し〜ろ〜…」

「…あ、あれ?(滝汗)」



あーあ、桃先輩、アウトだな。
海堂先輩の逆鱗に触れちゃった。

これじゃあクリスマスイブは性なる夜にはなれないな。残念。



と、思いきや。





「そんなに…思っててくれてたんだな」

「お前…怒ってねえのか?」

「……(フシュウ))」

「海堂……!」

「桃城……」



「………」



オレは白目を向きそうになった。


何、この先輩たち。
マジヤバイ。マジおかしい。

ぜってー関わりたくない。











  **





『ピチチチチ』

「………」



という、最悪なプレゼントに気付いたのは、クリスマスの朝。



さぁ、これから部活だ。
今日も二人の罵りあいが見られると思うと、
いつもと違って、いやに清々しかった。


なんであんな夢みたんだろう。
二人が、……ホモとか。
ありえないじゃん。

そう。
だって二人は、ライバル以上友達未満。

だよね?





  **





部室。
早速着替え始めるオレたち。

と。



桃先輩の背中に、爪あと。



ん?



海堂先輩が部室に入ってきた。
ランニングの段階で既にジャージを着て、
おまけに首元までチャックが閉められてる。


んん?




振り返り際、どんとぶつかった二人。
いつもみたいに、あぁん?と睨み合…うかと思ったら、
近すぎる顔に赤面しだす始末。





Jesus, Christ.

Holy moly.


Thank god, for a super duper Christmas present, just for YOU and ME.



オレは、白目を向いてひっくりかえった。



何、この先輩たち。

もう、ぜってー関わらない。




『そうっスよね。イブは恋人たちの夜だし』




自分が夢の中で吐いたセリフが、いつまでも頭の中をリピートしてた。






















身内リクエスト攻撃による桃海。
そんなこんなでリョーマ視点。
題名は、普通にいこうと思ってたのにタイプミスにより
悪ノリが始まり…こんなことに。
実は、表の意味が隠されてます。(日記参照)

リョーマ視点だとギャグは難しいです。
なんかまとまりのない文になってしまった。
夢オチ(オチじゃないけど)という最終手段まで使用。あああ。。

まあいちおうリョーマBDとクリスマス祝いってことで。


2006/12/24