はるか遠く、

少しずつおぼろげになる昔のことを思い出して、


ちょっぴり悲しくなったりする。











  * 懐かしさ今、愛。 *












あの頃、私たちは中学生だったっけ?

恋を覚えた頃だった。

愛なんて分かっちゃいない頃だった。


今は?







!」


「―――」







呼ばれて振り返る。

赤毛の短髪が目に入る。


菊丸英二。私の彼氏。



「遅い」

「ごめん」

「じゃ、いこっか」




どこに行くわけでもない。

私の方から手を取って、歩き出す。


街並みが流れる。




「なんかさ、すっかり秋だよな」

「もう冬じゃない?」

「オレの気分的には夏」



マフラー巻いてるくせに?

私はくすくすと笑った。



「夏かぁー」

「……」



英二は空を見上げた。

今日は生憎の曇り空。



「懐かしいな」

「シャレ?」

「は?……違う。ってか気付かなかったし」

「あっそ」




私のくだらない冗談で流れてしまった。

でも、その言葉にはもう少しだけ深い意味があった気がした。



懐かしいのは、

懐かしい夏は、


いつのこと?





「私さぁ」





公園の中に足を踏み入れたことをきっかけに私は口を開く。

英二は何を言うでもなくこっちを見る。



「中学校のとき、好きな人が居たんだけど」

「……うん」


英二は、あからさま嫌そうな返事をした。


「その人のこと見てると、毎日楽しくってさぁ」


返事が来ない。


「ドキドキした時間で一杯だったの」


握った手のひらが居心地悪い。

悪くさせてるのは、私かな。



「あれって、恋だったのかなぁ」


「オレに聞くなよ」



不機嫌な声。

あらら。


相変わらず、子どもだね。変わらないね。




「ちなみにその恋の結末、聞きたい?」

「あ?」




くすっ。

低いくぐもった声には、屈しないで。




「もうその頃のキラキラした気持ちには、出会えない」




だけど

ホントは今でも、今も、ドキドキしたりする。






「代わりに……“愛しい”って気持ちに変わった」






私は英二を見る。


英二はを見る。

私を見る。




「これって、愛っていうのかなぁ」


「かもな」




嬉しそうな声。

やっぱり、変わらないね。




「もう5年も前なんだ」

「まだ5年だっけ」




意見がすれ違って、顔を見合わせて、笑って。


そうか。

そんなに遠い昔のことでもないのかな、と思った。






今、あの頃のことを思い出すと、悲しくなったりする。


だけど、あの頃は今のことを想像して、
涙を流すことなんてなかったんだろな。





「誕生日おめでとう」





笑顔を交わしての深い口付け。


あの頃のような輝きはなくったって、

ドキドキした気持ちは相変わらず持ってるんだけどなぁ。




これが、思い出を抱えていくってことかな。


勝手に納得して、ひと時の余韻に酔いしれた。






















歳を取ればしっとりになる英二希望。

愛って恋の延長線上なんですかね。
繋がってるんですかね。
愛って難しいですよ。想像以上に。

あんま関係ないっぽいけど一応英二のBD作らしぃ。
誕生日だからって一生懸命気持ちを伝えようとする
一生懸命な主人公の気持ちを汲み取ってくれよ。


2006/11/28