* 自分から動き出せばいいのに。 *












 気持ちを、言葉にしなければ

 そのまま通り過ぎることが出来たかもしれないのに


 言葉に…形に、してしまったから、

 立ち止まることが、できて。


 立ち止まって。






クラスみんなで文化祭の打ち上げをした時のこと。
内緒話をしたかと思うと、
私の親友の3人は、いつにない笑顔で笑った。



、今日は飲むわよ!」

「え?う、うん」



わけもわからず、どんどん注がれて、
いつもなら「未成年の飲酒反対!」とか言ってる私も、
気付けば、何杯もサワーをお代わりして。



おかしかったんだと思う。






お店を出た途端に、腕を掴まれて。



「で、誰なのよ」

「………はぁ!?」



数秒経ってからすごい声で叫んだ私は、夜の街を駆け抜けた。
質問の意味を、わかってしまったから。


後ろから友達が追っかけてきてるの、知ってた。

ずーっと後ろで、あの人が歩いてるの、知ってた。


だから走って逃げた。





あの時逃げて、居れば。

立ち止まらずに、逃げ切れていたならば。


今はどうなっていただろう。





「ほら、逃げられないよ」

「ああ〜〜!!」



腕を両腕から掴まれて、完全に動けない状態。
尋問に答えるだけとなる私だった。



「え、誰なの誰なの?アングル?」

「ううん違うっ。はいこれ以上はもう答えないからね」

「えーじゃあ誰?ジャニーズ?」

「はい聞ーこーえーなーいー」



私は耳を塞いで歩き出して。

あれこれ考えながら友達みんなついてきて。

日々の噂話の中で作られた数々のあだ名で
あれでもないこれでもないと試行錯誤していた。



「ジャニーズ?もしくはパープル?」

「あーもうみんな声大きい!!」

「あ、どっちかなんだ」


……違うけど。

私は知らんぷりして歩いてて。


「分かった。パープルだね?」

「あ、そっかパープルなんだ。え〜かわいい〜」

「えー私ジャニーズだと思う」


「だからっ!声大きいってば!!しかも二人とも違うし!」




言ってから、気付いた。

私の声が一番大きいし。
鎌掛けられて答えちゃったし。

もう、わけわかんなくなってて。



「っていうかもう居なくない?」

「ねぇ。可能性があるの全部言ったよね」

「うん。運動部で委員会入ってるやつでしょー?」



一人だけ言ってないのが居るって!
とは心の中で思ってるけど言えなくて。
早く気付いてほしいけど知られたくなくて。



「あーっっ!」

「ん、どうしたの

「わかったー!!!」



一番勘のいいが、声を上げた。


ばれたな、って、その時思った。



あそこで嘘を吐くことが私に出来たなら、どうなっていただろう。

だけどそれは出来なくて。


この思いには、嘘を吐くことなんて、出来なくて。




「タマゴー!?!?」

「……はぃ」



掠れそうな声で返事をした私は、
耳を塞いでちょっとだけ首を上下させた。


そう。
タマゴがあだ名の、大石秀一郎くんです。
私が好きなのは。



「えーありえないと思って除外してた」

「っていうか存在忘れてた」

「うわー酷っ」


ケラケラと笑う友達3人。

私は一人、真っ赤で、本人の居る方をちらちら確認してた。



こっちの様子には、全然気を払うそぶりなし。
安心すると同時に、どこか寂しくて。




「やだー超かわいいっ!」

「茶化さないでよー」

「そんなことないって。絶対いけるから応援する!」

「えーでも絶対別の人のこと好きだもん…」

「だーいーじょーうーぶ!!」




私は人生このかた今までずっと、

勉強は出来たし、
運動だってある程度は出来たし、
習字は習ってたしピアノは弾けるし、
容姿だって良い方とは言い切れないけど
最悪っていうほど悪いわけでもなくて…

自分にはある程度自信があるほうだった。


だから、こんなに自信のない自分を初めて見た。
自分って、こんなに女の子だったんだ、って、びっくりした。



「協力するから。絶対ゲットしちゃいなよ」

「えーでもなぁ…」

「だ〜から大丈夫だって!!」



その時だったんだ。

この恋が、動き出したのは。



本当は、諦めようかとさえ思っていた恋だった。

他の人のことが好きに見えたから。
自分から動き出す勇気がなかったから。

人の巡りあわせって不思議なもので、
本当に必要としてたら惹きあって、
そうでないなら関わらないまま終わる、
っていうその言葉を信じていたから、
流れに任せていた。

でもそれは甘えだったことに気付いた。
自分で、変えることができるんだ、って、思った。




アドバイスされて、メールを送った。
一つのメールを送るのにこんなに緊張して、
返事がくるまでの数分間がこんなにまで
ドキドキするものなんだって、初めて知った。

学食で手招きするの隣に座ってみれば、
そのまた隣にはその人が居たとか。
緊張して、全身ばくばくいってて、
食べ物が喉を通らなくて暫く同じもの噛み続けてた。

友人の友人を挟んでの会話で一緒に盛り上がって、
感謝したり、余裕がなくてイッパイイッパイだった。



毎日が、流れていく。

その中に、一つでもアナタを感じさせるものがあれば、
私は幸せです。

そう言い切れる自分に驚いた。



でも、堪えきれるのかな。

膨らんでいく思いについていけない。


告白する勇気はまだないし。

フラれる覚悟は出来てないし。

付き合うことも想像できないし。



でも、人生で初めて、

『片想いで終わりたくない』

って、強く思った恋なんだ。



なんでなのかは分からない。

思い描いていた理想とは違う。



だけど私は……アナタが好きです。





もしも願いが叶うなら、



お話したいです。

目が合って同時に逸らしたいです。

廊下でぶつかりたいです。

一緒に笑っていたいです。

メール来てほしいです。

いい天気であってほしいです。



それだけでいいです。

それだけでいいのに




どうしてかなわないのかなぁ。






















最後の「お話したい〜いい天気であってほしいです」は
“明日あってほしいことの妄想”でしたとさ。
うーん、すっぱい片想い。

めっさ現実込み。てか実録だろが。(微笑)
どうなるんでしょうね、これ。
なんか自分の泣き顔が想像できてキモイ。(ぁ

おーおーいーしー。
…ほとんど出番ないじゃんね。笑
ま、片想いだからさ。うん。


2006/10/01