オヤスミ

18歳の私。


おはようを言うときは

また別の私……?











  * The Day I Started To Walk *












 眠 れ ん 。



5月5日、こどもの日。
こちらドイツにはそんな習慣なくて
いつも通りに学校がある…はずなんだけど
今はテスト週間で学校がなかったりした。
まあつまりは休日でした。

だけど明日は学校で文化祭もどきがあるの。
その練習だけのために学校に出掛けたり。
熱いよね!
これぞ青春、なんて思っているわけです。

テスト中なのにね。
……えへ。
でもこんな時期にフェストなんてやりだす
学校が悪い!(と思いませんか!?)


しかも明日は統一試験があるのー。
こんな日にフェストやるなっつーの学校(以下ry


……うん。

でもあるもんはあるわけで。




しかも、

明日は、


私の誕生日だっていう。






寝る前にチェックしたメールの中には、
日本時間で6日になった途端にたくさん
「おめでとうメール」が届いてて、
それはそれはホクホクな気持ち。

明日の朝までにも、たくさん届いてたら、いいなぁ。

って。


そう思いながら私は布団に潜った。




 の に 。




「(眠れない…)」




私はね、11時に布団に潜ったの。
明日はハードスケジュールだからねー。

学校より30分以上早起きして統一試験、
それが終わったらパフォーマンスのリハーサル、
色んな国の食べ物を食べて、
実際にダンスのパフォーマンス、
浴衣姿でちょいなちょいなと歩き回って、
夕ご飯にはママさんとお寿司

…っていうそんな完璧な予定。

だけど、色々ありすぎるもんで、
心配事がたくさん出てきて…。
パフォーマンス失敗しないかなとか
忘れ物しないかなとか
ちゃんと時間に間に合うかなとか
なんの服着ていこうとか。

神経昂ぶっちゃって。
早く寝なきゃ明日に支障が出るって…
でも思えば思うほど焦っちゃって。


「(落ーちー着ーけー…)」


頭の中で、自分に向けて念じる。

すると。





『チャララ〜♪』


「ギャ」




反射的に小さく蠢いた私。
ケータイに、出てみると……え。
この、番号。




「……もしもし」


「お誕生日おめでとう」




ねぇアナタ。
もしもしの返事は、もしもしでしょうが。



「…?」



電話越しの、くぐもった声が。

シュウ……。



「ちょっと今涙出たよ」

「え、そうなのか」

「ホントだよー」



時計を、見た。

12時になった、直後だった。



電話の前で待ち構えて、
この時を狙って、掛けてきてくれたのかな。


ありがとう…

ありがとうありがとう。


大好きだよ、本当に。



「実はさ、早寝したのに眠れなくて困ってたの」

「あ、そうだったのか。ごめん起こして!」

「違うってだから眠れなかったんだって」



そんな気遣いをする貴方。
私は、言う必要がないのに言った。

責めてるんじゃないよ。感謝だよ。




…あのね、シュウ。
本当のことを言わせて。

今年のシュウの誕生日には、大したこと出来なかった。
テストが始まる2日前ってこともあって、余裕なくて、
折角日曜日で、色々なことが出来たはずなのに、
ちょっとしたメールを送るぐらいしかできなかった。

それなのに、シュウは、こんな。

…見返りが大きすぎて居づらいぐらいだよぉ。



「これでお互い、19歳だな」

「だね」



ちょっとずつ、
時が流れていくよ。


ああ。

ここにも居た。



「…あのね、シュウ」

「ん?」



「…ゴメンナサイ」

「え?」



今、
ここで初めて、
本当のことを言います。



「今日限りで、シュウとさよならしようと思ってた」

「…どういうことだ」



離れていた時間っていうのは、
やっぱり長くて。
それは大きくて。


少しずつとはいえ薄れていく愛を、
私に止めることは出来なかった。



「この前…シュウの誕生日さ」

「うん」


「…私、大したこと出来なかったじゃん」

「いや、そんなことないぞ。
 メール、とっても嬉しかった」

「ううん。前だったら…もっと色々やってた」


そういったら、シュウは黙った。
これは事実だと思うから。



「それはね、テスト前で時間に余裕がなかったからなの」

「あ、そうだったのかお疲れさま」

「でもね」


度々言葉に否定の意味を入れる私。

シュウは、少し戸惑っている様子。


大丈夫。
最後にはそっち側に転ばせるから待ってて。



「本当はね…きっと、時間のなさをカバーするほどの愛がなかったんだよ」



ちょっと、間、

ああ、こういうの嫌い。
すぐに戻すからね。



「だけどさ、誕生日が過ぎた頃から」



「シュウの良いところとか色々思い出してきて」





「一緒に居た頃のことも思い起こして」







「なんかさ」









「私やっぱりずっとシュウのこと好きだ」







これが、結論。
これは当分は、ひっくり返らないよ。




シュウは黙ったままだった。
まずったかな、と思って私は話を続けた。
墓穴を掘る気もしたけど、
本当のことを、伝えたくて。



「私…今、今のことで精一杯」


言葉が重なっちゃったけど、
分かってくれるよね。



「なんか、すごい…余裕ない」



見えないものほど愛しいってあるじゃん。

過ぎていく時間とか、
変わりゆく変化とか、
見えなくて、形に出来ないけど、
そんなものを愛しく感じたりする。



「分かるよ」



シュウは、久しぶりに答えた。


「誕生日とか、確かに大事だけれど」


そう言い切れるシュウは、凄いよ。


「そんなことより、繰り返している毎日が…
 実は一番の記念日だったりするんだ」


…じわっと。



は今の世界の中での、
 出会いや別れを大切にして欲しい」



もう、だめだ。



「もうすぐ、また会えるよね」

「ああ」



涙がこぼれた。




「それまでの間、大切にしろよ」

「…うん。分かってる」




なんて、幸せなんだろう。



「もう一回、お誕生日おめでとう」

「…ありがと」

「それじゃあ、ゆっくりオヤスミ」



電話が切れた後、
私はやっぱり暫く眠れなかった。

シュウの言葉が頭の中で、耳の奥で、
ずっとリピートしているのを聞きながら、
それでもいつの間にかは、眠りについていた。



おはよう。

19歳になった私。






















すみません。
実は、つい先週まで、
4周年と同時にサイト閉める気で居ました。
大石BDで熱が上がってしまったので
大事には至りませんでした。いやこれホントの話。

大稲では基本的にやりたい放題です。
思ったことそのまま書くので
記号だって意味不明な日本語だってなんだって使っちゃう。
ありのままを残すことに全てをかけます。

お誕生日ありがとう。
分かると思いますが、例の歌からフレーズ頂きました。


2006/05/06