* ホールケーキ *












「量と質とどっちが大事だと思う?」




突然の質問に秀は眉を顰めた。


「どうしたんだ、突然」

「たとえばさーぁ」


秀の言葉を無視して私は例え話をする。

だって、
その中に答えは入っているから。



「スーパーで売ってるようなケーキ10個と
 不二家のケーキ1個とどっちがいい?」

「いや、10個も貰っても…」


ほら、やっぱり量より質だよね〜。


私がそう呟くと、
秀は 何かが違うような… という顔をした。



だから、私は、にっと笑って聞いてやる。



「じゃあ、質より愛だったら?」

「え、愛?」



突然の言葉に目をぱちぱちとさせる秀。

私は、笑顔でコクンと頷いてみせる。



「不二家のおいし〜いケーキと、
 私が手作りして失敗しちゃったケーキ」



気付いたかな。


気付いてくれるかな。




「どっちがいい?」





返事はもちろん、分かってる。


向こうも、私が返事を分かってるの、知ってるはず。




秀は、にこっと笑ってこたえた。




の手作りがいいな」


「正解!」




ちょっと言わせた感あるけどネ。



でも、いいでしょ、それで?




スポンジは焦げちゃったし。

クリーム材料配分間違えちゃったし。

真ん中に大きく描いたハートも
持ってくる途中に潰れちゃったし。




でもね、

これこそ


“愛”


じゃないですか?




 「お誕生日おめでとう!」





手抜きじゃないよ。

伝えきれない愛には、
量も質も関係無いんだって。



…だよね?






















相対性でいえば下がってるかもしれないよ。
だって量や質を気にする余裕がなくなったから。
でもね、絶対性の愛は変わってないよ。

それでい〜じゃないか。

丸いケーキを大切な日の誕生日に食べるのは
幸せを分かち合って食べることなんだって。

でも、カタカナ語ってあれですよね。


2006/04/30