* 背伸びする橙の光の先 *
日が伸びた。
いつの間にかこんな時間になっちゃった。
お母さんに怒られる。
塾の帰りに寄り道しててもうすぐ8時。
小走りになった私の目の前には…
「……あ」
「あれ、辰徳じゃん」
幼馴染の姿。
「何してるんだ、こんなところで」
「塾の帰りに寄り道しちゃって。そっちは?」
「オレは、ミツマルスポーツ行ってた」
あれ。
自分のことオレって呼んでたっけ。
いつの間にか変わってたのかな。
「……アレ?」
「ん?」
「あああああっ!お誕生日おめでとう!!」
「え、あ、ありがと」
「ごめんすっかり忘れてた!」
あたふたとする私。
辰徳は、目をきょとんとさせてたけど、
直後に、笑った。
「ありがとう」
ゆっくり言い直されて、なんか照れた。
「…プレゼント、ないけど」
「いいよそんなの」
…あげたかったんだケド。
幼馴染のよしみじゃんね、
とか言ってるけどこれは言い訳かな。
ちらりと腕時計を見た。
8時6分。
「あーあ、門限突破」
「ごめん話し込んじゃって!謝りに行った方がいい?」
「んー大丈夫大丈夫。辰徳は心配しないで」
そっか。
って、視線逸らされた。
……。
「やっぱウソ」
「え?」
「一緒についてきて」
私は、くるりと背を向けて勝手に歩き出した。
ついてきてくれてるかの確認は簡単。
ちょっとずつ沈んできた夕日が私たちの背中を照らして
影がずーっと遠くまで長く伸びていた。
少し痩せて見えて少し背が高く見えて
私は夕方のこの色が好きだ。
本当は何も変わってないのになぁ。
ちょっと背伸びできちゃう、この時間が大好きだ。
横に並んで歩く私たちは
自分たちの影が伸びる遠く先まで見つめていた。
黄色の光をまんべんに浴びながら。
随分と遅くなっちゃった。
怒られるかな。
笑われるかもな。
幼馴染歴14年目にして仄かな恋心に気付いたってそんな仕組み。
遅いですかね。笑っちゃうよね。
好きな子の前では頑張って「オレ」って言っちゃう君が好き。
咄嗟に癖で「僕」って言っちゃう君が好き。
9割方捏造で出来てるけどそんな森くん君が好き!
HAPPY BIRTHDAY TATSUNORI MORI!!!
2006/04/18