* ズルくてゴメンね。 *












はじまりはちょっとした擦れ違いから。

いつも仲の良いオレたちは、
ケンカをしても1分以内に仲直りだったから、
こんなに長引いたのは初めてだ。


そのケンカの相手…不二と、
同じクラスにいながら3日間会話がなかった。

視線は合わない。
お互い合わさないようにしてるのか、
それとも偶然?ていうか、
会話もないのに目が合う回数ってどれくらい?


……。


「英二、最近不二と何かあったか?」

「え、どうして?」

「いや、なんか…不自然に避け合ってるように見えるけど…。
 ゴメン、俺の勘違いならいいんだ!」


そう言って大石は居なくなった。

……。
さすが黄金ペアというか、人生相談員というか…。

それにしても…。



ちら、と視線を向ける。

不二は手塚と話してた。
あ、笑った。

………。


あ。

目が合った。

……そらされた。


あれ、また合った。

…またそらされた。


……どういうこと、これ。



なんかバカらしくなってきた。
このままじゃ何も変わらないし、
ちゃんと仲直りした方がいいってことかな。

…しょーがない。

オレから先に謝るか。


不二は手塚から離れて一人になった。
そこへオレが後ろから近づく。


小さく息を吸って。

声を、掛けた。



「不二…」


「ん、なあに英二」



そう言って振り返った不二は、
にこっと笑っていて。


……。



「不二、ズルイ」

「えーなんのこと?」


まだしらばっくれるつもりっぽいから、
「そういうところ!」って言ってやって、そこで会話は終了!

オレはそっぽを向いてやる。
不二は「ゴメンゴメン」なんて、
全く反省の色が見られない表情で言ってくる。



「ホント、不二ってズルイよ」

「だからなんのこと?」

「もういいってば!」



怒っちゃった、とか不二が呟いてる。
べつに怒ってるわけじゃないけど、
怒ってると思われた方が都合がいいからいいや。


なんでずっと無視してたのー、とか言っても
「それは英二の方でしょ」か「そんなことないよ?」っていうに決まってる

あーあ。ホント不二ってズルイやつ!!



だけど…アレ?
もしかして、不二はホントに分かってなかったら?
そうしたら…オレってヤなヤツ!?
えぇぇちょっと待ってよ!


ていうか。
なんで張本人はヒョウヒョウとしてて、
オレばっかりがこんなに悩んでるわけ!?
不二のフジは理不尽のフジだっ!!


「英二、機嫌直してよ」

「…あームカツクー!!!」


思いっきり叫ぶオレ。

ああもう、ホント最悪だ!
なんだよこれ、もう。



不二ってばこんなにヤなヤツなのに。

それなのに…好きなんだもん。



ほーんと、不二ってズルイや。




「……仲直りね」

「うん、分かった」




こういうときだけ、知らないフリしないんだね。

ホント、ズルイんだもんな。






















不二はズルイやつだけど、
素でやってるのか分からないので
やっぱ結局どっちにしろズルイ。笑。

手塚編と対になってるというか、
まあパラレルと考えてくださいな。

タイトルは、微笑交じりの苦笑ながら悪びれず
正面から罪悪感篭めて言えばいいさ。


2005/11/18