* Following the Leader *












手塚ってかっこいいよにゃー…。
頭良いでしょ。
背高いでしょ。
ちょっと体固いけど。
でも運動神経は良いし。
顔も整ってるし。
歌はあんま上手くないけど。
でも声はカッコいいし。

だけど。


「(性格は最々々々々々々々の最悪だっっっ!!)」


あっかんべーだ!
手塚なんか道路脇の溝に落ちて泥まみれになっちゃえ!
階段3段飛ばししようとして失敗してコケちゃえ!
ざまーみろ!!(←?)

いーっ、と手塚の背中に向かって歯を剥き出しにする。

と、丁度手塚が振り返った。


「何をしているんだ、菊丸」

「え?にゃはは…」


なんとか笑って誤魔化そうとするオレ。
しかし、手塚は笑い返すどころか…。


「真面目にやれ。グラウンド走らされたいか」


言葉の鉄拳。(ぼーん)



なんでっ!
なんでなんでにゃーんで手塚はこうなの!?


もう、手塚なんて大っ嫌いだ!!!





…実は、オレたちは3日前から付き合ってる。(内緒だョ?)

きっかけは、オレからの告白。
手塚といったら堅物だし、お高い人だから
絶対ありえねー…って思ってたんだけど。
でも、自分の気持ちも伝えないまま終わっちゃうなんて嫌で、
粉砕覚悟で告白したんだ。そしたら…。

予想外なことに、手塚は
「お前はどうしていつもそう唐突なんだ…」って、
顔を手で覆ってた。
「俺の心の準備が間に合わん」とかなんか
そのようなことを言ってた。

だけどオレはおバカちんだからはっきり分からなくて
「それってOKってこと?」って聞き返したら、
「…バカなことを言わすな」って。

これまた微妙な返事だったけど、
肯定もしなかったけど、否定もしなかったとか、
「言うな」じゃなくて「言わすな」だった辺りとか、
指の隙間から見える手塚の顔が赤かったこととか!!

つまりはOKだったわけですよ。
もう、オレってば驚いちゃって!!


それで、念願のラブラブライフの始まり×2〜…
……って、少なくともオレは思ってた。オレはね。

だけど、ここに意見の食い違いがあったのか。。



登下校は別々。(方向が違う…)

休み時間も別々。(教室が遠い…)

お昼も別々。(生徒会長様々…)


一緒に帰ろって誘ったこともあるんだよ?なのに
「そもそも方向が違うんだろう」って。
じゃあどっか寄ってこうよって言っても
「寄り道は許さん」だし…。(なんであんなに堅物なんだっ!)

休み時間に1組に遊びに行ったこともあるけど、
「もう次の授業が始まる頃だろう。遅れるなよ」って。
せっかくオレが遠い道のり歩いてきたのに、
少しも喜びもしないんだ!?(人間としてどうなんだよ!)

お昼休みは、大抵教室には居ないしな…。
だからといって学食に行くわけでもなく、
大抵生徒会室に引きこもってる。ちくしょー…。


部活中も素っ気ないし。
もうオレ、本当にどうしていいんだか…。



「菊丸」

「うるさいよー、もう!!!」


……あ。

怒鳴りつけてから、気付いた。


手塚だった。



「な、なんでしょう…?」


なんとか沈黙を破ったオレの言葉。
うわーだっせーなんだこれぇ…。

手塚は眉間に皺寄せてる…ひぃ!


「ぼーっとしているので元気がないのかと思ったが…どうやら心配なさそうだな」


そういって、手塚は背中を見せる。
もう…ホントにコイツは何なんだっ!!


「…なんだよ手塚のバカちんっ!!」

「ばっ…?!」

「オレがこんなに傷ついてんのにしらんぷりかよ!バカっ!オニっ!!」


……あ。

また、怒鳴り終わってから気付いた。


やっちゃったー…。


ぷい、と今度はオレは手塚に背中を向けた。


「走ってくるよ」


顔だけ斜め後ろに向けてそう言った。
手塚は少し怖い声を出す。


「そんなことは言っていない」

「オレは走りたいの!」

「菊丸、あんまり逆らうとグラ…」


そこまで言って、手塚は固まった。

もう口癖になってる、ってやつ?
マヌケすぎる。カッコ悪ー…。


心の中で笑いつつ、オレは冷たい顔。



「はいはい、10周?20周?それとも50周???」



手塚は髪に手を入れてくしゃってすると、

「俺も走る」

と言った。


「あそ。で、何周なの?」

「…適当だ」


さては手塚め。

自分が走るのが久しぶりだから感覚が分からないんだな。ニシシ。
ざまぁみろ。

ぜーんぶお前のせいだもんね!
せいぜいたくさん走りやが…れ?ん?!

ちょっち待てよ…。



「さぁ、いくぞ」

「(えぇぇぇー!!!)」



二人で走るのかー!?!?

それじゃあ何の解決にもなってないじゃん!!



「菊丸、増やされたいのか」

「今行く!今いきますぅ〜…」


そうして走り出すオレ。
手塚の斜め後ろを一定のペースで。

……何だコレ。



 おい見ろよ、手塚部長が走ってんぜ!

 いったい何しでかしたんだろな。


そんなことを後輩が噂しているのが聞こえた。
そして、一緒に走っているオレにまで注目が注がれる。



「(くっそー…)」


やい手塚、お前のせいだぞ!!

って、言ってやりたいけど話し掛けたくも無い。



…なに?
こんなに相手のことを考えてるのはオレだけなの?
手塚にとっては、オレなんてどうでもいい存在なの?

この前の告白の時みたいに、
オレは手塚のこと好きで、
手塚は、否定もしなかったけど肯定もしなくて、
それをオレが自分に都合のいいように解釈しちゃっただけ?

なんだよ、それ。


「(っと………)」


なんか、手塚の走りペース下がってない?
オレは折角数メートルの距離を保って走ってるのに。
これじゃあオレが追いついちゃう…
てなわけでオレもスピードダウン。

あれ、手塚がなんか更に遅い。
ちょっと待ってそれ困るから。
ってことでオレも更にスピードダウ…

「おい」

ン………。


「にゃ、にゃんだよぉ…」

「手を抜くな」

「は!?それは手塚のほ…」


ぐい、と手塚は腕を引いた。


「同じペースで走ればいいんだ」

「っっ!」


そうして、オレはなんだか手塚の真横を走らされてる。
少しでもペースを落とそうとしたり
不自然に距離を離そうとすると睨まれる。
一体オレが何をしたっていうんだ…。


「菊丸」

「……」

「菊丸!」

「なんだよ、聞いてるよぉ…」


手塚がコワイ。
オレは小さな声で返事。

手塚は溜息混じりに喋る。


「…何故オレを避ける」


……は?

え…ちょっと待ってよ。

今、頭の整理を。


………。



それってオレのセリフ!!



「なーに言ってんだよ手塚ぁ!」

「む、何か変なことを言ったか…」

「だって、避けてるのは手塚の方でしょ」



ピタ。

手塚の足が止まる。

オレも一歩分前に出てから、止まって振り返る。


手塚がオレのことを真っ直ぐ見てくる。
オレも真っ直ぐ見返す。



「…何のことだ」

「手塚がオレのこと避ける…」


手塚は眉を顰める。


「俺がいつお前を避けた」

「だって、普段の態度とか…」

「…?いつも通りじゃないか」

「え、えぇ〜!?」


え、え。だってだって。


…そういえば登下校はずっと別だったし。
休み時間だって一緒に居ることはなかったし。
部活中素っ気ないのなんていつものことだし…。


「もしかして…オレの勘違い!?」

「そういうことになるな」


えぇ〜!?

でもでも、なんかおかしくない?

絶対おかしいよぉ…。


……あ、分かった!



「だって手塚、オレたち…付き合ってる…よ、ね」

「……そういうことになるのか」

「しらばっくれないでよ!とにかく、
 オレは前より手塚とたくさん一緒に居たいワケ」


手塚の眉間の皺が更に深くなる。
手塚って、見るからに恋愛ベタっぽいもんなぁ…。

やっぱ、これはオレがリードするしかないっしょ!


「そういうわけだから、手塚。分かった!?」

「……」


きしし。
本当に、手塚ってこういうところ不器用だよね〜。

と、手塚はくるり背中を向ける。


「行くぞ、菊丸」

「え、どこに?」


顔だけ斜め後ろに向けた手塚は小さく言う。


「…あと15周だ」

「えっ、そんなに!?手塚のバカァ〜!!!」

「問答無用だ」


そんなこと言い合いながら、オレたちは走り出した。

ペースは落とさず、寧ろテンション高めて、
最後の方なんかほぼ全速力で飛ばしてた。


ほんのちょっとだけ、近づいた気がしたそんな日。






















自分がリードするしかない、とか思ってる菊。
だけど結局は手塚に主導権握られてるって罠。
このカップルの場合、菊がひたすら反抗してて、
だけどやっぱり大好きで…てそんな感じ。
ラブラブな相思相愛にはなりません。
こんなやつ…とか思いながら振り回されてる菊万歳。

塚菊真ん中BDおめっと〜、てことで。


2005/11/01