* おひさま笑顔-sunbeam- *












……あれ?


オカシイ。

…保健室だね、ここは。



あー、そっか。昼休みに引っ繰り返ったのか。
久しぶりにやってしまいました。


元々貧血気味なんだよね。
朝礼で倒れたこと何回かあるって。

しかも陽光に弱いし。
ポカポカで気持ち良い陽気なのを良い事に
直射日光に当たりすぎたかな…。

更に3時間目は体育だったし。
てか授業中の睡眠を取り損ねたし。

コンディションが悪すぎた。


しかも、あんな、血圧と脈拍の上がるような…。



「(…うわあ〜!!)」



自分で自分の頭を抱え込む。

おーおー!
思い出すが昼休み!
そうだよ…あれは人生初の告白ってやつじゃなくて!?

しかも…好きな人から。
好きな人と認識したのは数時間前だけど。


…うわぁ。


また胸がドキドキしてきた。
顔が火照ってくる。
いけないいけない。
平常心を装わなくては…。


……。


ところで今何時だろ?

2時15分、あー微妙。
あと15分で5時間目が終わるんじゃなかった?
今日は5時間授業だから学校もそれで終わりだしさ。

んー…。
今戻るのも何かと面倒だし、もう少し寝てよう。
チャイムが鳴って、みんなが下校する頃に
あたかも「今起きました」風を装って
教室に戻って荷物を持って帰ってしまえばいい。
それでいい。そうしよう。

てなわけで、寝る。
うっかり6時ぐらいまで寝過ごしちゃったりして。笑。


・・・。

眠れないな。


いやいや。



・・・。

・・・。



うとうと。


……。



『キーンコーンカーンコーン』



…あれー…。


なんだ。授業終わっちゃったよ。
あ、そっか。授業終わるのって20分だったかも?

だって知らないもーん。
授業=寝る時間、
授業の終わり=大石が起立って言った瞬間、
って認識しかないもーん。

…えばるなって?その通り。


まあいいや。
作戦どおり、もう少しここにいよう。
あーあ。また安眠妨害されたよ。
今日の私は眠りを妨げられっぱなし。


『ガラッ』


おや?
誰だろ。保健の先生かな。
それとも生徒の誰かかな。

まあいいや。たぬき寝入りしとこ。


「……?」


ふむ。
呼ばれている。
この声は…………?!


思わずむくっと。

無言で体を起こしてしまった。
だからといって凄い勢いででもなく。
普通に。むくっと。


大石はカーテンの隙間から顔を覗かせてた。

目が合った。



「…大丈夫か?」

「うん」


「「……」」



何が言いたいか分かってる。
言いたいことは分かってる。


なのに何だこの無言。

ていうか何だこの雰囲気!



打破。



「さっきの話だけど」

「ああ」


「…付き合おっか」

「え?」



ドキンドキン。




「私も好きかもしんないから」




下を向いてそう言った私。

ちらっと、大石を見た。

ぽかんと口を空けてた大石だけど、
目が合うと、顔を赤くしてばっと逸らした。


こっちまでドキドキ。


顔を逸らしたまま、大石は私の手を握った。

それをそっと引くと、「帰ろうか」と言った。


引かれるがままにベッドからゆっくりと降りる。
上履きを履くために手は離して、それ以来だったけど。



廊下に出ると、下校の時間の学校は賑わっていた。
クラスメイトに会うととやかく聞かれると思ったので、
私はできるだけ目立たないようになりたかった。
だから、大石の後ろを肩をすぼめて歩いた。

だけど理由はそれだけじゃないと思った。


今までだったら絶対横を歩いていた。
どうでもいいような会話をしていた。
だけど今の私にそれは出来なかった。
無言のまま、顎を引いて上目遣いで斜め前の頭を見て歩いた。

いつもは同等で言い合ってる大石の背の高さに、改めて気付いた。



そんな大石が突然止まるから何事かと思ったら、
階段に差し掛かるところだった。
ちらっと振り返るとちょっとぶっきらぼうに
「大丈夫か」って言うから、「大丈夫」って答えた。

それで手摺に掴まって上り始める私を見て、
大石は何も言わず、後ろ側に回り込んで歩いてた。


そんな、ちっちゃい子じゃないんだから。

ムカツクなぁ。悔しいほどに…好きだよ。



ゆっくり、ゆっくり階段を上って、
そうして3年の階へ差し掛かったとき…。



「あ、大石とだ」

「ヒューヒュー!」


「?!」




 ち ょ っ と 待 て 。




1.授業終わったのになんでこんなに人が居る?
2.屋上には誰も居なかったはずなのに知られてる?


「大石、これって…」
「あー…きっとさっき…」


大石が言い終える前に、
その囃し立ててきてた男子が言う。


「今時姫様抱っこはねぇだろ大石!」

「どうだ、姫にされた気分は」


……は。


「どういうこと?」

「だからな、さっきが倒れた後…」

「抱きかかえて保健室まで連れて行った、と」

「そういうこと」



……おぉ。

しゅげぇ。付き合い始め初日にしてお姫様抱っこ達成。
ていうかまだ付き合い始めてもなかったでしょ。
つーか憶えてないんですけど。



「てか、お前平気なのか?頭から引っ繰り返ったってマジかよ」

「そう言われてみれば心なしか後頭部が痛むような…」

「お前これ以上頭悪くなってみ?俺らの仲間入りだぜ」


そんなこと言ってケラケラ笑ってた。


私はそれをつーんと無視して、教室へ。



ってちょっと待て。
何でみんな教室に居るの!?


「大石、そろそろ学活始めてくれ」
「はい」


はっ。


そうか。

授業が終わってもまだそれがあった!(迂闊)


教室に入る手前で一瞬躊躇う私。
うぉぉみんなに注目されるに違いない!

そりゃそうよね。
頭から豪快にぶっ倒れたら話題にもなるわよね…。



と、後ろから肩を叩かれた。
だ。


、アンタ大丈夫なの!?」

「あー、多分平気」

「これ以上バカになったら進級できないじゃないの!!」


オイオイ。笑。
そんなに私はバカですか。


そうだよなぁ。
授業中寝てばっかだもんな。
これからはもう少し真面目にいこうかな。

だけど睡眠不足で引っ繰り返っちゃ適わないし。

関係は変わったけどさ、まだ言い合いとか、したっていいよね?



「ねぇ

「ん?」

「今度面白い話がある」

「え、何々?」


ちらっと教室の中を見た。


「時間がないからまた今度ね」

「えーなにそれ!?」


そんなことを話して盛り上がると、

さん、早く席に着いてください」

と、聞きなれた声がした。


微笑まれた。


だから私は舌を突き出して

「言われなくたって分かってますぅ!」

と、語尾を強めて言い返した。


ちょっとだけドキドキした。



周りの席から「大丈夫なの?」とか
果てには「大石に押し倒されたって本当かよ」なんて
ありもしないような噂の拡大にアタフタして。

さっき、廊下に居た男子ですが
「お前らいつの間にそんな関係に」とか茶化すから、
わざと言ってるって分かったけど「ついさっきから」って言ってやった。

こんなこと言ったら怒られるかな?とか思いつつ、
ちょっと勝ち誇った気分にもなったりして。


えぇっ!?と声が上がる教室の隅。第6班。
大石は何も知らずに「静かにしてください」とか言ってる。

みんなが噂話に華を咲かせるのを横目に、
明日の時間割なんて解説してる大石はバカすぎて最高だ。


窓際の自分の席はポカポカ陽気。
ごろんと頭を机に倒す。

空を見上げた。太陽が大きかった。







さん、起きてくれるかなー?」


ちゃん、起立だよ!」

「ほぇ、う、うわわっ!?」




周りの笑い声と、重なった視線と、

太陽の光に。



くらりとする感覚には、まだ慣れられそうにない。






















『ssu』設定が好きすぎるんです。
これぞ青春ラブの代表作。

いかにも中学生してる大石が好き。
原作と違う気満々だけどこんな大石もいいじょん。
好きな子にはいじわるしたいお年頃だろ!

後頭部打ち付けて普通に生きていられるのかね。
じゃあ、遠退く意識の中咄嗟に自分の身を守って、
尻餅ついてから後ろに引っ繰り返った、
ていう形だったことにしよう。(強引!)


2005/07/21