* 最後のシンジツ *












待ち合わせの時間から8分過ぎ。
私は焦ってその場へ駆け込む。
スカートとミュールは少し走りにくい。


「ごめん、遅くなっちゃった」

「大丈夫。そんなに待ってないから」


息も絶え絶え話す私に、
秀は気を使ってそう言ってくれたんだと思う。


「本当に?」

「うん」


本人がそう言ってるんだから、信じることにする。
だけど、本当は秀はずっと前から待ってたと思うんだ。

気を使ってくれるのは嬉しいけど、秀はすぐに嘘をつくんだ。
といっても悪い嘘じゃない。
嘘も方便ってやつだ。
自分を犠牲にしても、相手を守ろうっていう。
そういう嘘をつくんだ。

嘘でみんなを守れるとも、思ってはないけど。
だけど一番丸く収まる方法を考える。秀は。


少しぐらい周りを傷付けても、
真実を話してくれたらな、って思うけど。
周りがちょっと傷付けば済むところを、
自分がたくさんの傷を被ることでカバーしてるから。

秀のいいところでもあるけど、
一点では、イヤ、っていうか、心配だ。



そんなわだかまりも忘れて、その日のデートは楽しんだ。
喋って、笑って、手を繋いで、温かい気持ちで。

最後、家まで私を送ってくれた秀は、
玄関の前で、ぎゅっと抱き締めてくれた。


幸せ。




翌日。
私は朝早くに学校に来た。

偶然だった。
理由なんてなんにもない。
敢えていうなら、本能が、直感が、訴えていたとでもいうのだろうか。


いつもより何故か早く目が覚めた。
いつものペースで準備したらその分早く家を出た。
いつもと比べて30分ぐらい学校に着いた。

普段から、私は学校に着くのは早い方だ。
それで更に30分も早ければ、多分一番だと思う。
部活の朝練がある人は来ているかもしれないけれど。
例えば秀とか。いつもすごく早いから一緒に登校できないし。
でも、教室は多分一人だと思うんだ。


カンカンと階段を上がる。
人が居ない廊下には足音が嫌に響く。

教室に着く。



あれ、なんだ。人が居るぞ。

…秀と、




恋人と親友を同時に教室内で発見する。
何をしてるんだ、やつら。

…え?



なにを してるの  。





は、軽く、目を閉じて。

秀は、の右肩を掴んで。

右手はそっと頬へ添えられて。

そのまま、顔が近付けられて―――。



・・・は?






「なにしてるの…?」






ばっと二つの顔がこっちを向く。

秀は両手をから離した。


なに、この焦った態度。
緊迫してる癖に緩んだ空気。



なんだ、これ。






「…っ!!」

!!!」






後ろから秀に何度も何度も呼ばれる。
しつこいくらいに私の名前を繰り返す。


呼ぶな。呼ぶな呼ぶな。



私は全速力で走ったけど、追いつかれてしまった。
右肩を掴まれた。
止まることを余儀なくされる。
体を反転させられた。


…」

「っ!」



パァン。



秀は私のことを抱き締めようとしてきた。

それを思い切り頬を叩いてやった。


一瞬の間があった。



「…同情でそんなことされても嬉しくない」



秀の頬が赤い。

だけどそれ以上に、きっと私の目は赤い。

血が流れている証拠を示しながら。


「違うんだ、…」

「何が違うの!」


思い切り叫ぶと、秀は後ろに退く。

私は睨みつけるように相手を見据えながら、強く。



「私と付き合ってたこと?と…キスしてたこと?それとも両方!?」



…返事が返ってこない。






なにこれ。

ナニコレ。


……最悪。






「偽善者は嫌い」



嫌いだよ。






「嘘吐く人も大嫌い」




大っ嫌い。







「だけど…」




偽善も嘘も嫌い、だけど。








「こんな真実なら、聞きたくなかった……っ!」







余りに自分勝手な、私のシンジツ。










私は後ろを振り返らなかった。

アナタが追ってくることはなかった。


それが、アナタが私に見せた、最後のシンジツ。






















大石に限ってそれはないだろうよ。
勘違いだよ勘違い!!(熱くなる)
ただ、大石を悪者に仕立てるのが楽しくって。(←S!?)

じゃあ何を勘違いしたのか、
ってのは各自考えてくるのが宿題ね。
ごめん。思いつかないから解決しないまま微悲恋。(最悪!)
(マイ候補:1.脅された 2.見間違え 3.人工呼吸/無理が…)

良さげな言い訳が思いついたら続編書きます。笑。


2005/04/30