* 心配事は不安な元気 *












やだな…頭痛い。

寝不足だし、昨日も家であんなことがあったから。



ちゃん、おはよう」

「あ、おはよー…」

「どうしたの、元気ない?」


そう聞かれて、はっとする。


「ん、夜遅くまで起きてて寝不足なだけー!」

「なーんだ、あはは!」

「気付いたら朝日が昇りそうだった、なんちゃって〜」

「え、ホント!?」

「嘘に決まってるじゃん。ばっかだなー」

「えー、ホントかもしれないじゃん!」



そんなこと言いながら、笑う。

頭の中では違うこと考えてる。


どうしよう、宿題やってないや。

午後の授業だからお昼休みにやればいいか。

あ、だけどお昼休みはみんながバレーボールをやるって言ってた。

ここで教室に残って宿題なんてやってたら
これから仲間はずれにされるかもしれない。

でも不器用な私は他の授業中にやるなんてことできないし。


そういえば今日の放課後は委員会があったはずだ。

部活の大会も近いのに…参ったな。

どうして風紀委員なんて大変なの引き受けちゃったんだろう。

だけど、他にやってくれそうな人も居なかったし。


中間テストも近いな。そろそろ勉強始めなきゃ。

でも私にはやっている余裕なんてない。

だけど悪い成績を取るわけにはいかない。


まだ水曜日だ。

週末まであと3日ある。

今週の土曜日は振り替えピアノのレッスンがあったな。

今日の委員会がなければ土曜日はゆっくりできたのに。


家の中はあのままなのかな。

少しは掃除してくれたかな、お母さん。

あれ、そういえば今日は弟の顔を見てないけどちゃんと起きたかな。




ああもう。

頭がぐるぐるする。

たくさんのことがいっぺんに入ってきてどうすればいいのか分からなくなる。


ただ、一つだけ確実なことがある。



笑顔。

いつも笑っていよう。


周りに心配掛けることだけはしない。

そうやって育てられてきたし、それが正しいと思ってる。




頑張ってれば。

笑顔を振りまいてれば、誰も心配しない。


大丈夫。

私は強いんだから。



さん」



声を掛けられた。
振り返る。

クラスメイトの姿。
学級委員の、大石だ。


笑顔で振り返る。


「なぁに?」

「元気一杯だな。どうかしたのか?」



ドキン。



何か良いことあったのか?って。

大石はそう聞いてるんだ。



逆だよ。

本当は、悪いことがあったから、こうやって…。


・・・・・・。


だけど、そんなこと表向きには絶対に見せないし。




「ふふっ、そんなに元気一杯に見える?」


「ああ」




大石も笑ってた。

…はずだけど、ちょっとだけ表情陰らせて。







 「大丈夫なのか?」







―――え?



ダイジョウブ、って。


それ私に聞いてる、んだよね??




「え、大丈夫、って…」

「すごく元気そうに見えたから」



何。

意味ワカンナイ。


何この人。




「なに…いけない?」

「そうじゃなくて!」




珍しく声を張り上げた大石は、
「あ…」と我に返ると、
指先で触れるように額に手を持っていくと、
呟くように、斜め下に向けて。




「だから、その…元気そうに、見せてるんじゃないか、って…」





ごめん!なんでもない。



そう言うと、大石は愛想笑いをした。
もう一度「ごめんな」というとその場を去ろうとした。



「元気な顔してたら、心配するの…?」



背中に向けて、ぽつりと疑問。


大石は振り返った。


「え?」

「私がどうしたら、心配しない?」


大石は、苦笑する。




「人に心配掛けちゃいけないとか、心配しないことだな」





・・・・・・。

なに、それ。

難しくてイマイチ分からない。



私は、ずっと、人に心配掛けまいとして、そうして来て。


だけど、いいの?

心配掛けても、いいの?

みんなは迷惑がらないの?



「そんな顔、しないでくれよ」



大石はそう言った。苦い笑みで。



そんなって、どんな?

私は何度も確認したよ。

鏡の前に立つ度に、笑顔の研究をした。


こうすれば元気に見えるって。

楽しそうに見えるって。

一番かわいく見える角度を研究したんだ。


だけど、大石はそういうんだ。

もしかして、そう思ってるのは大石だけじゃないの?


どちらにしろ、気付かれてしまった。



大石は、何を意図している?



「そんな顔じゃ、誰も心配してくれないだろ」

「心配する必要ないもの。その方がいいの!」


本当にそのつもりだった。

なのに、変なこといってるのは、大石の方だ。



「心配させてくれないのか?」



…へ?

もう、わけが分かりませんが。



「私は、周りに心配掛けさせるべきなの?」

「ああ」


「どうして?」

さんには元気で居て欲しいから」


…なんだ、これは。

絶対に私たちのやり取り、噛み合ってない。

どこかで間違っている気がしますが。



「じゃあどうすればいい?」


私がそう聞くと、




「心配事があったら思いっきり悩むがいいさ」


大石は自信満々に言った。





人に心配掛けちゃいけないと、心配しちゃいけない。

そうすると不安が募るから。

でも空元気は不自然だから、たまには周りにも心配も掛けて。

それはつまり、心配そうな態度を見せろってことで。

でも私には元気で居て欲しいみたいで。



堂々巡りに填まった。




「…ばからし」



私は、笑った。

ごく自然に。



そうしたら、大石も笑った。

やわらかく。





…ああ、そっか。

そういうことだったんだ。


しばらくの間、不安な気持ちも吹き飛んでいた自分に気付いた。




この笑顔をありがとう。心から。






















元気な姿を見て大丈夫かと問う大石を書きたかった。
微妙にお節介でもいいよ。

多分血液型Aですよ。とかそんなことに最近拘ってる。
(私が無心で書くと9割方B型っぽくなるから/笑)
思い悩み率高し。普段は皆無に近いからな。爆。

眠くて意識が飛びそうになりながら書いたので
微妙に意味不明な部分があるけど流そうと思う。


2005/04/29