* 無数と無数の間 *












「明日?」

「ううん」


「…じゃあ明後日?」

「ううん」


いつになっても肯定の返事が出ない。
仕方のないことなのだけれど、
私はちょっとムッとして腰に手をあてる。


「じゃあいつだっていうの」


周助は、私の表情とは裏腹に
柔らかい笑みを向けてきて、
これまた柔らかい声で
「3年後の今頃」
と悪びれもなく言った。


「無理!3日以内でプリーズ!」

「ごめんね」

「……」


分かってる。
自分の恋人が生まれた日は、
余りに特殊な日であったということが。


「一緒に…お祝いしたいじゃん、誕生日」


誕生日が新年と重なっていたという友達が居たけど、
その人は誕生日プレゼントとお年玉が一緒になると嘆いていたけど、
誕生日すらやってこないこの人は、
今までどのようにしてこの時期を越えてきたんだろう。

「うん。だけど今年は閏年じゃないから」

「分かってる。だけど、さ…」

そこより先は、声に出なかった。


周助は微笑して。


「その気持ちだけで嬉しいよ」

「……」


くすっと笑って。


「いいじゃない、当日じゃなくても」

「じゃあ、いつだっていうのよ」


にこりと微笑んで。



「じゃあこの際、一年中…ってことでどう?」


うんそうしよう、今決めた。
と、周助は勝手に納得していた。



「ほら、一緒にお祝いしてくれるんだよね?」



言われて、漸く私は笑顔を向けた。


0と∞は正反対にあるようで、
一歩外して考えれば隣り合わせ。

無理矢理くさいごまかしだなとは思ったけど、
アナタがこの世に生まれてきたことを
一年中、私は、心の中で、感謝して、そして祝っているから。


生まれてきてくれておめでとうありがとう。

今日も明日も明後日も来年も再来年もその先も。
























2005/02/27