* いつもよりドキドキ *












月曜日に登校するときって、
いつもよりちょっとだけドキドキしてる。

たった2日だけなのに、
少し久しぶりに見る顔に緊張する。

それは同じなんだ。
仲の良い友達でも、クラスメイトでも。
少なからずとも、いつもよりはドキドキしてる。


だけどこの人は、特別。

それにこの日は、格別。



普段より2時間ぐらい早起きした。
私より1時間半ぐらい前に学校に着く、あの人を待つために。

きっと、一番に現れるはずだから。
ここに居れば、会えるはず。

あの人に。




月曜日の朝。

普段よりもドキドキしながら。


テニスコートの前。

誰よりもドキドキする人を待って。


バレンタインデー。

一年中で一番ドキドキする、この日に。



来た。




「あの、大石くんっ!」

「ん?」



普段なら人の居るはずのない朝のテニスコート。
私の声を聞きつけると、大石くんは不思議そうに振り返った。


目が合ってしまった。

もう逃げようはない。




さあ。

頑張るのよちひろ。





「ハッピーバレンタインデー…アナタのことが、好きデス」





言って、渡して、走って逃げた。

顔はまともに見てない。
そんな余裕ないし、自分が赤かったから。
それはもう、街を包むハート色より真っ赤。


言っちゃった言っちゃった渡しちゃった!!
興奮しながら校舎へ向けて駆ける。
焦って上履き履き替えたら逆に時間が掛かって、
踵を踏み潰したまま階段駆け上がったらやっぱり余計に遅くって、
結局踊り場で立ち止まって冷静に履き直した。


息継ぎ。


大きく深呼吸して、ゆっくりと階段を上った。
教室についたら自分の机に座って、
だけど落ち着かなくてそわそわと歩き回ってみたり。


そして微笑。


上手く行ったかは分からないけど、渡すことは出来た。
それだけでも今日は大成功。



ドキドキ。

ドキドキ。

心臓の音がまだ聞こえる。




やっぱり月曜日は緊張する。
やっぱりあの人は緊張する。
やっぱりこの日は緊張する。


沢山のドキドキを乗せたバレンタインデー。

さあ、結果はいかがでしょう?




クラスメイトたちが登校してくるまで、約1時間。
あの人が教室に入ってくるまで、約1時間半。

それまでに心臓を落ち着かせておかなきゃ。
心臓がドキドキで破裂しちゃわないように。






















他にも待ち伏せしてる人居そう、という突っ込み禁止。
そんなに朝早くから張ってるような根性あるのは
この子だけだった、ってことにしてよ。うん。

緊張してる時のドキドキって、
好きな人を見た時のドキドキと同じ仕組みらしいよ。
…ってことを昨日友人に教わったなぁ。

ハッピーバレンタイン。大石ラブー。


2005/02/13