* いつでも今が一番 *












ドイツに来てから、2年と半年が経っていたことに気付いた。
だからといって、特に何をするわけでもない、普通の日。
一周年単位ならともかく、半周年ともなると、
メールも電話も何もなく、ただ、普通の日。

別に不平があるわけじゃないけど。
だけど、何かが起こってもいいのになとか思ってる。

自分勝手な思い。
だけど向こうは向こうの生活があるの分かってるから文句は言わない。
ここら辺が自分中心だけど自己中心じゃない私の発言。自称ですが。


ふぅ、と溜息を吐いた。


初めて半年が過ぎたときと比べたら、
随分変わった気持ちでここに立つ自分が居る。
そのまた半年後と比べたら?そのまた次は?

考えながら、布団に潜る。

半年後は、何をしてるんだろな。
ドイツに、居るのかな。
窓の外を見ながら西の空へ太陽を見送って。

半年前の今日は、何をしてたっけ。
思い出してふふっと笑った。
申し訳ないような、嬉しいような、
それでいてちょっと切ないような。
くすぐったい感情。

大人に向かってるんだな、って思った。


そしてふと、思い出す。
「まだ大人になんてなりたくない」
そう呟いた友人の姿を。

早く大人になりたい、そんな歌もあった。
ずっと子供でいたい、そんな歌もあった。


私に当てはまるのは、どっちだろう。
考えると、辿り着くのは、「今が一番いい」という答え。

変わりたくないという、甘え?
変わっても幸せという、証し?


変わりゆく季節が、ふと怖くなった。







   * * *








  …あれ?


  シュウだ。


  …何してるの?


  怒ってる?


  泣いてる?


  笑って、ない。



  どうしたの?








   * * *









『ピピピピピピ』

「………」


おっさん、ケータイ鳴ってるぞ、早く出ろよ。
夢で、私は心の中でそう呟いていた。
早く止めるのはお前だ。起きろ。

のそっと体を起こす。
寝ぼけ眼で目覚し時計を探る。
発見。押す。
寒いので布団に潜った。

二度寝しないようになんとか意識を保ちつつ。
あれ?なんか夢を見た気がするなと思いつく。


思い起こそうとする。
こういうのは目を閉じて頑張ると大抵思い出せる。

……いかん眠るな。
さあなんだっけ、なんだっけ。


…シュウ?


あれ、居た、っけ。
居たような。
きっと居た。
絶対居た。
勘違いかもしれないけど絶対居た。
勘違いでも知るか。
居たに違いない。
居た。


だけど、内容が思い出せない。
思い起こそうとして色々な事態を想定するけど分からない。

諦めた。
このままでは再度眠りに落ちてしまう。
起きることに決めた。




…シュウ。

居た。確かに居た。
夢の中では、すぐそこに。


遠くじゃなかった。
だけど手の届かない距離。

少し離れて、
そこで、
斜めの体で
顔だけを
こちらに向けて

にこりと

微笑まずに

悲しそうな

怒っているような

切なそうな


やるせない顔。




成長していない君の姿に涙が零れそうになった。

私の心の中の君はまだ一緒に過ごしていた時の姿で。
別々に過ごすようになってからの姿はしていなくて。
私たちの時間は2年と半年前に
止まってしまったのではないかって
錯覚しそうになったけど、
それだったら今までにやりとりしたメールの数々とか
交し合った言葉とか乗り越えてきた苦難とか
色々思い出されて、やっぱり時は流れていることに気付いた。


いくら願ったって、時は流れる。
それはどう足掻いたって変わらない。

なら、それだったら。

今すべきなのは、流れに逆らうことじゃない。
その流れの中で、どれだけのものを見て、どれだけのものを感じて。
どれだけの思い出を残せるか。


「今が一番の幸せ人間ですから」


さぁ、今日も楽しんでいこう。
笑顔を交わすのは、あと半年を3回繰り返した後で良い。

そうしたら、一緒の時を過ごせるから。
過ぎ行く時の流れに乗ることが出来るから。


それまでは、今の一番を過ごしていこう。限りある時間の中で。






















半年ってセンチメンタリズムになりがちなんですかね。
なんだかんだいって2年前に書いた小説にそっくりで
自分でうっかり鬱に入りかけましたよ…。
(その小説って『春ヨ来イ』ね)(暗いってばよ)

正確に言うと1月25日らしいけど、
まあ、見た目的に26日ってことで。(いい加減)
…ていうか今日27日だけどね。(爆)

今が一番なんですよ。それは後になっても同じかな。


2005/01/27