* 聖なる夜の恋人たち *
「クリスマスは恋人たちのイベントなんだって」
誰がそんなこと決めたんだろうね。
全く、一人身の気持ちも考えてやれよ。
そういう私は、彼氏持ち、ですが。
その日に一緒に居られないという点では独り身もいいところ。
「そもそも、クリスマスってのはキリスト教の行事でしょ!
クリスマスを祝う気だったらキリシタンらしく教会にでも行って来いっての!」
がるがる。
牙剥き出しの自分。
…いいもんね。
本気でミサに行ってやるもんね。
思えば前はキリスト教徒だったんじゃない、私。
遠い記憶で、全然憶えていないけれど。
「…それは俺に対して怒ってるのか?八つ当たりか?」
「ばっちり八つ当たり!!」
シュウの呆れた顔が見えた気がした。
もう、電話の向こうの相手の顔を想像するのも得意になった。
それが当たってるか答えは見えないけど、
まあ大方当たってるんだと思う。
確かめようがないから言えること。
「あーもームカツク!そっちって今何時?11時半回った!?
あーあーヤダヤダ。絶対各地で第一ラウンド始まってるよ〜!」
何がだ…。って訊かれて
ウルサイ!とか言っちゃった。
違う、のに。
違うのに。
シュウは悪くないのに。
「…ごめんな、傍に居てやれなくて」
ドクン。
……謝らないで、よ。
突然私は弱くなっちゃう、から。
「なん謝ってるの…」
「いや、だって…その……」
答えはない。
困らせたいわけじゃない。
私も困るだけ。
そんなことじゃ、ないのに。
ちょっとだけ、沈黙。
呼吸ができるのに苦しい。
波打つ脈に肺が圧迫を受けている様。
と。
「あ、こっちは25日になった」
「わー、メリークリスマスじゃん」
トクン。
トクン。
血が巡り出す。
思いも想いも何もかも載せて。
「聴こえる?イエスさまの産声」
――――**……―――――。
「……え?」
「へ?え、あ、ごめん!なんでもない」
顔がカッとなった気がした。
突然どうしちゃったんだろ、私。
そりゃ、突飛な発言は得意分野ですけど。
考え無しに勝手に口から飛び出してたよ、今の言葉。
ドキドキする胸に手を当てた。
なんだろう。
何かが誕生するための鼓動?
新しく再生し直す過程の中で。
信じるという名の、魔法。
「それじゃあ、俺はそろそろ寝るけど…いいかな」
「うん。夜遅くまでありがとー」
いいながら窓の外を見ると、
こっちも夕日が沈み始める頃。
あれが反対側から現れる前に、
私は眠りについて、起き上がる。
「おやすみ」
「オヤスミ」
電話を切った。
不意に寂しくなった胸に、
結局は恋人同士である自分たちに気付く。
聖なる夜。
そっと、目を閉じよう。
目覚めれば、きっとそこには贈り物があるから。
クリスマスは、別に恋人たちのイベントなわけじゃ、ないんだって。
諷刺しつつも0017 10031。
中途半端に現実交じってるよ。
クリスマスって、キリスト降誕祭ですからね。
テーマに宗教なんて突っ込んだのかくれんぼ至上初ですが。(not秀狂)
つまりは一人身は哀しいって話かよ。え。
思いっきり信者だった自分とか思い出してみたわけ。
2004/12/25