「何しにきたの」

「…勝負の、決着つけに」


雨上がりの空。

目の前に立つ、先ほどまで張り合っていた人物。



「……入りなよ」

「どーもっ」




さあ、どちらが勝者か決める時。











  * come to the othercide *












部活後、突然やってきたリョーマを、
不二は快く家に招き入れた。
二人揃って階段を上り、不二の部屋へと入った。

一歩足を踏み入れると、部屋を一瞥する。
ドアの右に位置するベッドを確認するなり、
リョーマは唐突に不二のことを押し倒した。

「ドアぐらい閉めてくれるかな」
「…その余裕がムカツク」

リョーマは、わざとらしくバンと大きく音を立てながらドアを閉めた。
不二はベッドに寝たままクスクスと笑う。

「僕は君のそういうところが好きだな」
「どういうところ」

近付いてきたリョーマの腕を、不二は思い切り引っ張る。
構図的にはリョーマが不二に圧し掛かっているような、
しかし実際は不二がリョーマを引き付けているという、そんな体勢。

不二は、勝ち誇ったような、小悪魔的に楽しそうな笑顔を見せる。

「文句言いながら、何だかんだで言うこと聞いてくれるところ」
「…にゃろう」

噛み付くようにキスを迫るリョーマの顎を
すんでのところで押さえると、不二は
「焦らない、焦らない」と、
わざとらしささえ感じるじれったい声を出した。

何も出来ないリョーマは、
仕方無しに不二の上に寝転ぶような形で体重を預ける。

ベッドの上で重なりながら、二人は会話を続ける。

「ずるいっスよ、先輩」
「何が?」

「…そうやってしらばっくれるところ」
「なるほど」

クスクスと不二は笑う。
リョーマは不服そうに眉を顰める。
「皺寄ってるよ。手塚みたい」
とその部分に当てられた不二の指を、
リョーマは思い切り振り払った。

すると不二は形相を変え、リョーマの首に両手を回した。
手に力を加えながら引き付けると、そのまま唇同士を合わせた。
お互いの口を深く交えると、舌さえも絡める。
クチュクチュと卑猥な音が部屋、そして脳内に響き渡る。

漸く不二の手と口から解放されたリョーマは、
息を切らし肩を上下させながら口元を拭った。

「…苦しい?」
「ウルサイ」

「素直じゃないね」
「……」

不二は、勝ち誇ったような余裕の笑みを、
新しい玩具を見つけた小悪魔の微笑みに変えた。

「知ってる?首締められた状態でイクと、
 普通の時より快感が格段と増すんだって」

言い終えると、翳りの欠片もない白い笑顔になった。
リョーマは、片方の口の端を持ち上げると、言い放つ。

「なんスか先輩、試したいんスか?」

今度はリョーマが不二の首元に手を伸ばそうとした、その時。
その両腕を掴むと、不二は素早く身を翻した。
今度はリョーマが下で、不二が踏み敷いている形となる。

「まだ僕の方が力はあるみたいだね」

そう言って不二はにこりと笑った。

いくら不二が細身といえど、
身長が15cm以上も違うとなれば
まだ幼さの残る体型をしているリョーマは、
明らかに体格の点からいえば不利であった。

リョーマは不機嫌そうな面持ちで、
腹筋を使って頭を起こすと不二の首元を舐め上げた。

「っ…!」

不二の身体が、小さく震えた。
その微かな動きも、リョーマは見逃さない。
一瞬の隙で腕を振り解くと、
先ほど自分が舐めた位置に指を滑らす。

「弱いんスか、ココ」
「キミ、生意気すぎ」

不敵な笑みを浮かべるリョーマに対し、
不二はシニカルな笑みを返す。
それに対しまたリョーマは言う。

「お生憎さま、これが地なんで」

なるほど、と小さく呟くと不二は声を出して笑った。
リョーマもまた、皮肉な悔しさに苦笑を噛み殺して笑った。

笑いが治まった頃もう一度、つ…と指を伝わす。
瞬間的に、微かに不二の全身が震えた。
リョーマはニヤリと笑うと、その部分に唇を押し付ける。
更に強く吸い付くことで赤く花を咲かせた。

「印、残しといたから。忘れないように」
「っ…!」

痕を付けられた、左肩の鎖骨の少し上を不二は押さえる。
鋭い視線をぶつける不二に対し、リョーマは飄々と。

「大丈夫。ポロシャツでもギリギリ隠れるから」

その余裕さに、不二は目線は鋭いながらも口元を緩めた。
微かな震えは恐怖によるものか、怒りによるものか、それとも。

「こんなこと、先輩にして…」
「勝負に上下間は関係無しっスよね?」

生意気な表徴を見せたままのリョーマ。
不二は気の喰わなさそうな様子であったが、
すぐにふっと表情を和らげた。
しかし緩まったのは、顔の力だけであった。

両手首を背中の後ろで片手で掴み、
両足の上には膝を乗せ、
不二はリョーマを完全に制すると、
余った右手でくいと顎を持ち上げた。

「キミ、ちょっと生意気すぎるんじゃない?」
「さっきも言いましたんけど、これが地なんで」

この状況でもまだそんなことを言えるんだ。
そういってクスッと笑った不二の笑みは、
先ほどまでのそれとは完全に違っていた。





 「オシオキしてあげる。」





リョーマが凍りつくのにそう時間は掛からなかった。
が、それ以上に不二の動きの方が速かった。

リョーマの体を反転させてうつ伏せにさすと、
相変わらず両手首は左手で掴んだまま、
右手はリョーマの腹部へ潜り込ませた。
そして、それを少しずつ下へ滑らせていく。
リョーマのギョッとした表情は、
その体制からでは見識は出来なかったが。

手に触れる確かな感触に、不二は嬉しそうに、
また意地悪そうに口の端を上げた。

「どう?この体制。クルシイ?」
「うる…さい!」
「ウルサイかじゃなくて、クルシイか訊いてるの」

不二の手はリョーマの衣服をもまさぐり、
ベルトも外すとその内側へと忍び込んでいた。

「…ァ…っ」
「ん?なんか言った?よく聞こえないなぁ」

不二のわざとらしい口調は随分と癪に障ったが、
反論できずにリョーマはただ
熱くなる身体を押し留めるのに必死であった。
とはいえ、そんな思いも虚しく、
燃え滾る全身は冷めることを知らず、
形を変えつつ精力を増していく。

「センパ……んっ!」
「なにかな?まったく、後輩の一年生はカワイイね」

チッ、と舌打ちをするリョーマであったが、
不二の耳にそれは届いていないのか、
もしくは聞こえていないふりをしているのか、
どちらにしろ、この状況が変わらないことは同じだった。

「さあ、そのカワイイ顔を見せてごらん…」

リョーマは不二によって仰向けにされた。
ベッドのマットレスを押していたソレは、
今や宙でその姿を恥ずかしいがばかりに主張している。
リョーマは片腕で顔を覆ったが、
紅潮した頬の上の涙で潤んだ瞳は既に不二に捕らえられていた。

「いいカオするんだ。いつもそうならカワイイのに、ホント」

もっとカワイイ声聞かせて。
僕をカンジサセテ。

甘い吐息に込められた声で、耳元でそう囁いた。

「…そっちこそ」
「ん?」

リョーマの呟きは不二の耳には届いていなかった。
不二がその言葉を認識する前に、
リョーマは既に形成を逆転させていた。
先ほど体制を変えられたことにより、
両手足が自由になっていたのだ。
素早い動きで不二を下に組み敷いた。

リョーマの冷たい手が、不二の秘部に触れた。
手とは対照的に、ソコは燃え上がる熱さを秘めていた。

「ア……ッ!」
「へぇ、いい声してんじゃん。けっこーカンジル」

クスクスとリョーマは笑う。
先ほどとは全く別の立場に不二は顔を紅く染める。

「リョーマくん」
「―――」

不意に普段とは違う呼ばれ方をして戸惑うリョーマに、
不二は更に追い討ちをかけるかのように。



「イカセテ」



その艶っぽい口振りに、リョーマは一瞬怯む。
その隙に不二はリョーマの首に手を掛ける。

「センッ……パ……!?」
「さっき言ったこと、憶えてるでしょ」

ハァ…ハァ…と、一定のリズムで
不二の荒い吐息が部屋中に響き渡っている。
対して、呼吸すらままないリョーマは
不二の手を引き剥がそうとする。



「一緒に、逝こうよ…」



刹那。

リョーマは不二の眼を、見た。

覗いてしまった。
理性を失った、深くて青い、その眼を。


「……つっ!!」
「あ!ふ……、ぅん…っ!」

思い切り、そそり立つ自身の根元を握られ、
不二の手の力は緩まった。

「いかせない…」

ゼィゼィと肩を上下させつつ、
まだ少し乱れた呼吸でリョーマは問う。

「どう、クルシイ?」
「や、やめ…!」
「そうじゃなくて、クルシイか訊いてるんだけど?」


問われた不二は、ただ一言、

「キモチイイ」

と言った。

逆上したリョーマは、不二の首元へ手を伸ばす。
いくら華奢とはいえ自分よりは全然太く筋張った首に一寸戸惑いつつ、
そこにぐっと力を篭めると、妙な感情が生まれた。
その感情が何か認識できぬ間に、
不二の手がリョーマの首に伸びていた。



イッショニ、イコウ。



瞬間に不二の手の力が強まり、
条件反射で体が強張ったリョーマも不二のそれを強く締める。
腰を振り互いの性器を感じ合い、そのまま二人は果てた。


リョーマは手を解放すると、
力なく萎えばたんと不二の横に倒れる。
おや、という感じで不二は横からリョーマを見据える。

「どうしたの。もう終わり?」
「………」

はいとティッシュ箱を手渡す。
不二の反応を見、リョーマはぷいと背く。

「…余裕だしね」
「そういう君だって、そこまで必死には見えなかったけど?」

人の首締めておいてよく言うっスよ。
リョーマがそう言うと、
こっちもイケナイモノ締められたけどね、と。

…そうやって冗談言ってるあたりがムカツク。

心の中で、そう愚痴を洩らしていた。
リョーマは全身を綺麗にし服を調えると立ち上がった。
寝転んだまま、不二は乱れた髪を掻き上げ言う。

「本当の決着は、またテニスでつけようね」
「…ずるいっス」
「なに、それともまだヤりたりない?」

リョーマは不二を睨む。
不二はリョーマに微笑み返す。

くるりと背を向けると、リョーマは小さく呟いた。

「…憶えてろよ」
「あはは。うちの後輩は生意気だなぁ」


失礼します!

珍しく声を張り上げたリョーマは、
上半身を起こして見送る不二の部屋を後にした。
再度わざとらしく音を立てながら閉められたドアを見つめ、
不二はくすぐったそうに笑った。
そして大きく息を吸って吐き切ると、
ぼすっとベッドに仰向けに倒れ込んだ。

額の上に手を翳すと、一言呟く。


「参ったな。あんな顔するんだもんな…」


薄く閉じていた目をそっと開くと、不二はもう一度、独り言を放つ。
「絶対に、君には負けないからね」と。

その頃リョーマは「絶対、アンタには負けない」と、
決心を固くしていたことも、確かである。



 余裕なんて、お互いどこにもないのに。



生意気盛りの後輩と、ポーカーフェイスな先輩と。

最終的に勝利を手にするのは果たしてどちらなのか。






















リョ不二です。なんと言おうとリョ不二。
リバしまくっててワケわかんなくてもリョ不二。
…どう考えても不二リョっぽいよ。まあいいか。(ぇ
リョ不二で不二が煽り受なんだ。それだ。満足。
もし挿れるところまでいったら不二が下だ。(やめぃ!)

この後不二は裕太に電話をしたと思われる。
「今日越前くんとし合いしたよ」という
不二の台詞が意味深に聞こえてきます。(※誤変換)

全体的に黒い印象を心がけた。
というか、そうなっちゃった。ぶっちゃけたところ。えへ。

リクしてくださった彩亜さんへ捧げます。
キリリクなのに意味不明ですみません…。
そしてかなりかなりお待たせしてスミマセンでした><!


2004/12/23