* 待ち合わせ *












思えば、果たしてアイツが待ち合わせ通りの時刻に
やってきたことなど、今まであっただろうか。

…記憶にない。


「だーかーら!悪かったって言ってんだろ。それに、次は遅れねぇし」
「そのセリフ、耳にタコだ」
「ぐっ…」



事実だ。
この言葉、コイツと待ち合わせをする度に聞いている気さえする。

…どうにかならないのか。


時間を守れない奴は最悪だ。
これだけはどうにかしてほしい。

そう思い出すと余計にムシャクシャしてきた。
俺はあからさまに不機嫌そうな態度をして見せた。
すると、向こうは様子を窺いながら訊いてくる。


「…どうすれば許してくれる?」
「時間通りにくれば」
「…って、次に待ち合わせするときまで無理じゃねぇか!」


桃城は、困ったような、怒ったような…?
そんな顔をした。


しかし、今。
一瞬“そんな”笑みをしたような。

勝ち誇った笑みをしたような。



…気のせい、か?
まさか…わざとってことはねぇよな。まさか。


「貴様…」
「ん?」
「まさか…わざと遅れてるってことは」
「なーに言ってんだよ!」


凄い勢いで否定された。
桃城は続けて叫ぶ。


「冷静に考えてみろ!オレだって部活の大会になんて遅れたことねぇし、
 学校だって大抵ギリギリで遅刻を免れてるだろ!」


オレだっていつでも遅れてるわけじゃねぇんだ、と。
そう言って胸を踏ん反り返らせていた。

しかし…。


「それはつまり、お前…」
「ん?」







  ―――俺との待ち合わせにだけ遅れてるっていうのか ?







「…あ」

「どうだっていうんだ…!」

「もしかしてボケツ?」



俺は思わず拳を振り上げた。
しかし向こうが全く何の抵抗も見せないので、
結局はそれを下ろしてしまった。


「…なんだよ。一思いにスパッとやってくれ」
「知るか」


背を向けた。


「…薫さーん」と呟かれたので
「あぁ?」と返した。

桃城はいつもより小さくなった様子で話す。


「オレだってよぅ…わざと遅れてるわけじゃないんだぜ?」
「じゃあどうして俺との待ち合わせだけ遅れんだ」
「それは…」


暫く間があった。
理由を考えているらしい。

そうしたら、こう言った。




「親しみが深い奴ほど、安心しちまうんだよな」




ソレハ即チ、信頼ノ現レ?




「…うまいこと言ったって騙されねぇぞ」
「何言ってんだ顔赤いくせに。うりうり〜」


頬に指を差し込まれた。

やめろと思いっきり払った。

桃城は笑っていた。



「次こそ、ずぇーったい遅れないから!」

「…耳にタコだ」



とりあえず今日は許してやらねぇ。そう誓った。






















素直になれない薫ちゃん。ははん。
可愛いなぁ。参っちゃうYONEX☆(提供/何)

半分実話。わたくし→桃ち、アネーゴ→薫たん、なイメージで。
どうしてあんなに遅刻だらけなんだ。笑ってしまうね!
(反省しろよ)(しまくってますって…)

次こそは遅れないぞと思いつつ。
何回目だろうなと指折りしつつ。


2004/07/21